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【吉例】2023年度第14回育志賞受賞者がきまりました

筆者による育志賞の評価コメントも今回で3回目(賞が始まって14回目)になります。それなりに気づいたことをまとめてみます

はじめに ー日本で数少ない博士大学院生の顕彰事業ー

育志賞は、JSPSのやっている博士大学院生の顕彰事業。令和6年1月18日、2023年度の受賞者の発表があり18名(推薦候補者170名)が選ばれています。なお、去年も受賞者は18名でしたので何かこの数字に意味合い(予算?20名にはしたくない?)があるのかもしれません。

候補者の推薦依頼は、我が国の大学及び学術団体2491件に対して推薦依頼したところ、170名の候補者が出てきたようです。筆者的には、1機関1名の推薦ならこんなものなのかなあとも思えます。そして送られてきた推薦は、学術システム研究センターにおいてピアレヴューし、最終的には令和6年1月5日に開催された本賞選考委員会の選考結果により受賞者18名を決定しています。念のためですが、一大学一名の推薦なのですが、学術団体からの推薦という手法もありますので、結果的に東大を中心とする旧帝大が増える傾向になります。

今年度受賞者の気づき

で、今年の傾向は(ってなかなか説明はむずかしいのですが…)やはり旧帝大の受賞者が11名と多いこと。なお、昨年はゼロだった京大が2名受賞者をだし挽回しています。JSPSとしては、日本の考えうる推薦機関すべてに依頼をかけてこの結果ですから、良くも悪くも日本の大学院の教育研究は旧七帝で回っていることを改めて実感させられます。そんな状況を見つめつつ印象的に残った受賞者。

①吉治さん 京都大学(大学院医学研究科・マギル大学ゲノム医学国際連携専攻) 

筆者も行うべきだと考える(しっかりした)海外機関との連携。マギル大とも連携がうまくいっているようで継続的に成果がでているようです。この連携専攻からは2年前、第12回の時も中西さんが受賞しています。衰退気味の日本の大学たちですので、今後も医学の領域だけでなく海外の大学との連携が必要です。

www.med.kyoto-u.ac.jp

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②板尾さんと山岸さん 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻

一回の受賞で候補者が170人いた中、同じ大学で同じ大学院で同じ専攻において2名の受賞者が出るというのはすごいこと。それも板尾さんは人文社会学系で、山岸さんは自然科学系という異なる研究分野で。筆者的には総合文化研究科ってほわっとしてリベラルアーツのにおいがする大学院だと勝手に思っていますが、そんな文化の中でのびのび自由に研究ができるところがこの研究科の良いところかもしれません。

③桐野さん 明治大学大学院農学研究科農学専攻

どちらかと言えば言いたいのは明治大学さん。桐野さんのように女性で私大の大学院の博士後期課程までいき、フィールドワークでがんばって線虫やカミキリムシの研究を一生懸命して成果を出している学生たちがいるんだから、もっと大学院教育を充実してあげれば、私大でも旧帝大と並ぶような評価をしてもらえる大学院になれるという証左。無駄に駅伝やラグビーに大学の限られた資金を投下するより学部を含めた教育・研究環境をもっと充実してあげてください。

④小林さん 琉球大学大学院理工学研究科海洋環境学専攻

③の桐野さんと同じ傾向。大学院生がフィールドワークして洞窟に入ってハゼを探したりすることへの理解や評価をするうえでも貴重な受賞だと思います。琉球大学さんにとっても近年OIST(沖縄科学技術大学院大学)さんの方が脚光を浴びている部分もありますので琉大もがんばっていることを知ってもらえる良い機会に。特に沖縄では自然科学の分野でその地域性を活かした独特の研究ができる分野がたくさんあります。高校生・受験生のみなさんも都会志向と偏差値の呪縛にとらわれず、自分の学びたいこと学びたいところで探してみることをお勧めします。

まとめ

育志賞の選考に関しては、JSPSもMEXTもたくさんの機関に推薦依頼をしてピアレビューをして公平性平等性には留意をしているのですが、結果的には旧帝大が占めてしまいます。その旧帝大大学院においても出願者は減少傾向。もっと悲惨なことをいえば私大の社会科学系大学院には閑古鳥しかいません。この育志賞のように大学院生の活動やその成果を知らせてあげる場をたくさん提供する必要があると感じます。MEXTもいろいろ策は講じているのですが…

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