FOU’s blog

日本の大学 今 未来

神戸市さんが王子公園駅界隈に大学誘致したのが今後どうなるのか考えてみる5

王子公園再整備基本計画の進捗で、神戸市さんから新たに【王子公園再整備基本計画(素案)【全体編】令和5年9月】の発表がありました。大学以外の部分が中心ですが、それでも筆者は関学さんへの心配の度合いが増していきます。

基本計画(素案)での大学のかたち

そもそもですが、神戸市さんのプランは、今の王子公園をどうするかというと、公園機能の向上、動物園の近代化(SDGsを考え動物福祉に留意して動物収集をおこなう)を目指しているように感じます。そして大学の招致。

また、神戸市側からの目線による大学イメージも記されています。基本的には、とても総花的。書かれている言葉でいうと、地域、社会、世界について配慮したキャンパスをつくること。そして、神戸市民・近隣住民への貢献も重要項目。大学が何をやるかのコンセプトはイノベーションアントレプレナー(シップ)が中心のよう。そして建物の色はアースカラー(ミント色?)にすること。

この文書を作った人は、多分、大学・教育・研究関係のHPをググりまくり、それらしい言葉を見つけたんだなあ、と、ある意味感動する立派な書きぶり。

そんな出来上がる大学像は、大学でない神戸市側からはある程度踏み込んで書くことはできますが、今の段階で大学側が『○○学部を収容定員四千人で作ります!』なんてことは口が裂けても言えません。その理由は、MEXTの承認を全く得ていないから。(どこかの大学が次年度開講の新学部をつくるPRをする際は必ず『設置許可申請中』の言葉を必ず入るあるアレ)。その中で、神戸市からは、あ~しろこ~しろの要請がどんどん出てきて、関学さんとしては大変です。

前回も書いたとおり、アントレプレナー(シップ)に関する教育研究は、経営学部・研究科であったり、社会人大学院、特にMBAコースとあたりでは、必須科目として行われていますが、アントレプレナー(シップ)主体の教育というものはあまり見えてきません、イノベーションについても同様。こんな感じの漠然としたイメージの中、市と大学とがキャンパス作りを進めることになるので実務段階に入るともっと考え方の相違が露呈してきそうです。

で、今さらとそもそも ー筆者の雑感ー

どうもこのお話、勢いでいろいろが決まってしまったようで。漠然と景観優先で高さ制限等の条件がたくさんある公園内に、何を教えるかすらもわからい収容定員四千人想定の新キャンパスをここ数年で作れるのか?、世界にどう広がる・つながるとかのとりくみも見えてきません。

で、そもそもですが、それなら最初に筆者が書いたように新設する動物園と接点をもつ獣医学部を単体で設置する方が意図が分かりやすくて良かったかもしれません。もしくは、神戸大学医学部の附属病院や研究センターの新設であるなら反対する人も少なかっただろうにと未練がましく感じてしいまいます。今さらこのタイミングでは、覆水なんちゃらで仕方ありません。

今後は、関学さんの発表待ち。良いアイデアを期待して待つようにします。

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【答えあわせと今後】令和5年度「人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」の募集情報をもとにいろいろ考えてみる3

遂に9月19日付けで、選定結果が公表されました。当初より公表が遅れた理由は、選定に関する委員会が、諸般の事情でずれ込み9月11日になったからのようです。で、筆者のがんばった予想は散々。このことで反対に選考する側の意図が見えてきたように感じます。

採択された大学の傾向

筆者の予想の基本は、申請大学も連携大学もそれぞれで大学院教育がある程度充実していることを重視し、事業が円滑に進むことを考えました。その考え方がそもそもの間違い。どちらかというと、この事業を行うことにより課題解決を行う取り組みに期待をかけているのだと感じます。ですので、ここでは、大学院が充実している東大と京大あたりが連携して何か行うことより、うまくいっていない大学院を連携させ活性化する取り組みの方に期待しているのだということ。そのため、申請大学の中に旧帝大の名前はありません。

一番典型的な例として、龍谷大学さんの申請。琉球大学さんはともかくとして、龍谷大学さん京都文教大学の大学院教育って(正直言って)かなり未知数。これまでの常識?ではとてもとてもと思っていました。そんな三大学が連携して、新たな知を提供することにより大学院の機能を活性化させることに主眼をおいたものだと筆者は勝手に得心しています。また、申請本体の企画も良い書きぶりだったのかもしれません。

他に筆者が低評価して採択された、茨城大学さん、大阪公立大学さんにも一定の傾向があります。龍谷大学さんの時と同様、連携大学の中に大学院としては未知数の大学が必ず参加していること。このことからみてもこの事業を実施する上での意図が見えます。

反対に不採用になった金沢大学さん、大阪教育大学さんの取り組み。特に金沢大学さんの申請は、タイトルを読む限り、魅力的で良い成果が出るように感じていたので残念。申請書の中身の問題でしょうか…。

今後どうなる

どこかで習いましたが、この手の選考では、応募者する側の意識として、倍率三倍を超えると応募意欲が低下する傾向があります。反対に倍率が低いと成果を見込めない申請まで採択する可能性が高まります。今回の選考委員会のコメントの中にも記されているとおり、募集期間が短かく、そのため応募件数も少なく、応募8件の中から5件を採用するというかなり甘めの選考となりました。採用された5大学は、新規事業で先例がない中、成果を出せれるよう頑張らないといけません。

事業が動き出すと、当然、大学院の事業ですので、Mは標準修業年限2年なので学生はすぐに入れ替わる、Dは博士論文の作成を複数大学院でどのようにケアするかがポイントになると思います。どちらもスピード感が大切。そのため開始年度よりしっかり出さないと、次年度交付金の減額もありますのでかなり大変。(余計なお世話ですが)特に龍谷大学さんあたりは、外部資金の執行とかの経験が乏しいと思いますので、注意が必要だと感じます。

最後にいくつか

この事業の取り組みは、①学部学生に大学院というところに興味をもってもらい、②自らの大学院では足りない部分があれば他の大学院と補完・連携をし、③大学院での情報発信を活発化させて学生の就職機会の提供を増やしていく考え方だったと思いますが、筆者的にはどうなるかよく見えてきません。ですので、『やってみなはれ』で頑張っていただき、どんな成果が出るのか楽しみに待ってみるしかありません。また、このテーマの最初にも記しましたが、このような学部持ち上がりの学生への事業とともに、学びなおし・リスキリングのための社会人向け大学院の充実、特に博士学位の3年取得の促進等々も同時に行う必要を感じます。

(月並みな表現ですが)大学院改革は待ったなし、何でもかんでもできることは挑戦していかないと世界からどんどん取り残されていきます。

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【発表間近!採択大学を占ってみる!】令和5年度「人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」の募集情報をもとにいろいろ考えてみる2

MEXTのHPでは、選定結果公表は、令和5年8月下旬頃(予定)となっていたのですが、今のところ(9月15日お昼ごろ現在)公開されていません。思ったよりも時間がありそうなので、今回は、採択されそうな大学を予想・占ってみます。このようなものはある意味当てものですからみんなで、ワイワイ考えてみましょう。

応募した大学は8件

MEXTのHPでは、事業の応募受付は、6月12日(月)~ 6月20日(火)の期間、結果発表は八月下旬となっていたので、いくらなんでももうそろそろ結果発表となると思います。なお、別途、JSPSのHPでは申請状況の発表(令和5年6月23日付け公開)が行われています。このことで、興味深かったのは、JSPSのサイト内にこの事業にかかるサイト立ち上げも同時に行われていますので、今後もこのことに力を入れて進めていくように感じました。

※この事業については、令和6年度の高等教育局概算要求(主要事項)のポンチ絵にも、大学院における教育改革の推進として事業予算として令和5年度2億円(令和6年度は7億円要求)が計上されていますので、予算がつけば次年度以降も継続・拡充していくようです。

話を戻して、令和5年度のこの事業は、事業予算2億円・一件ごとの補助金上限額4000万円(初年度・年間)で公募し、(単純な数値計算で)選定件数を5件程度としています。ですので、それに沿った採択があるのだと思いますが、事業初年度でもあり、応募件数が8件のみなので、このまま採択件数を緩めにして良いのかがポイントになると感じます。

採択大学の検討

筆者は、今、一般の人が収集できる資料のみて、採択できる大学を考えてみました。その資料と言っても、申請した大学名と連携する大学名、事業名(どんなプログラムかを示すタイトル)のみ。もちろんMEXTで審査する人たちは詳細を書かれた申請書類を眺めながらとなりますので、筆者には大きな(意味不明な)ハンデ?となりますが、そこはテキトーにがんばって考えます。

その少ない情報の中、筆者が一生懸命考えた結果が以下。マル数字で一番良かったものから順に並べました。

記載順序:申請大学名()内は連携する大学 『』内は事業名 ➡部分は筆者の短評

①◎東京外国語大学筑波大学上智大学

『英語教育学イニシアティヴ・プログラム 』

➡どの大学も外国語教育・大学院教育ともに評価・実績あり。それらの大学院が連携することによる成果への期待は大きい

②◎金沢大学(富山大学公立小松大学福井県立大学

『北陸の地域社会の価値再生と創生を担う“地域総合知人材”養成ネットワーク型大学院 プログラム 』

福井県・石川県の主要大学を網羅し、北陸という地域社会を主題とした研究に連携を図るという意図は明確でわかりやすい

③◎大阪教育大学北海道教育大学福岡教育大学

『教員養成大学ネットワークによる学校現場を研究フィールドとした臨床型博士課程教育プログラムの構築 』

➡それぞれに地域ごとに老舗の教育大学によるネットワーク構築をすることによる研究成果は期待できそう

④○横浜市立大学静岡県立大学名古屋市立大学)

東海道SI-PHERプログラム(略称:サイファープログラム) 』

➡企画の意図はみえずらいが、東海道というエリアの中で大学院の連携を図ることによる成果はそれなりにありそう

⑤○神戸大学小樽商科大学和歌山大学

『地域/社会課題を解決する対話型ビジネス価値共創人材養成のための価値創発から社会実装までの一貫教育プログラム 』

➡それぞれの大学のある地域における課題解決ができる人材養成を意図していることはわかる。ただ、それぞれの地域における役割分担や成果の取りまとめ方法等について課題を感じる

⑥ △大公立大学和歌山大学関西大学流通科学大学

CSV(Creating Shared Value)経営研究プログラム 』

CSV経営研究プログラムとやらを、今回連携する3大学とともに実施する必要性とその成果が見えずらい

⑦△茨城大学宇都宮大学常磐大学

『多様性と脆弱性の尊重から始まるインクルーシブ社会の構築により、≪機会創出≫と≪課題解決≫を実現するダイバーシティ・マネジメント地域共創リーダー学位プログラムの構築』

群馬県茨城県というエリアで地域共創のプログラムを実施する意味合い・必要性がわかりにくい

⑧✕龍谷大学琉球大学京都文教大学

『大学連携型ソーシャル・イノベーション人材養成プログラム 』

➡大学院の教育・研究実績という意味で、申請大学の力量に疑問がつく。琉球大学を申請大学としたら雰囲気は違ったかもしれない。

※申請状況のソースは、日本学術振興会トップページ→ 人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業 申請状況より引用

選定件数は4もしくは5件程度

MEXTの案内では、選定件数を5件程度としていますが、筆者としてもだいたい同じで4件ないし5件だと思います。選ぶ側も申請自体が8件なので半分以上の選定となる5件を取るのはちょっと気が引けるかもしれません。

筆者の印象では、①~③までは、申請内容的に当確を感じますが、4番目を選ぶのにはちょっと躊躇。その理由は、④と⑤はあまり大差のない印象、また、⑥以下は上位と比べ差があるように感じます。ですので、①~⑤まで5件とも選定すれば簡単だと思いますが、予算上や4件にしたい何かのベクトルが働いた場合は、以下のような空気で④横浜市立大学さんになると予想します。で、その会議の時の雰囲気が以下。

4件にする時の会議の雰囲気(多分)

司会の委員長『まず上位の3大学は満場一致で決まりました。ご検討いただきありがとうございます。このあとは、予算の制約でもう一大学を選ぶことになります。委員の皆様の講評では横浜市立大学さんと神戸大学さんは甲乙つけがたいとのことでした。そこで委員長からのご提案ですが、上位の大学すべてが国立大学から申請ですので、4件目は公立大学からの申請となる横浜市立大学さんではどうかとご提案させていただきます。委員の皆様如何でしょうか?』➡で、一同賛成、会議終了。

まとめ

もともとまとまるべき話でもありませんが、夢を膨らまして考えてみました。実際に判定する会議は、(通例)外部有識者10人程度で議論して選考・決定したあと、委員長・委員のお名前が公開されるはずです。こんな感じで、応募結果を待っているいるとそれなりにわくわく感も生じるかもしれません。すぐに本当の結果発表でると思いますので改めて今後の動向等考えてみたいと思います。

★★読者の皆様には、たくさん選考結果が当たっていたら、はてなスターの連打を期待しています!★★

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海外でお世話になった先生を思い出して日本の大学の現状を悲しんでみる1ーMtl編ー

ここでは、筆者がカナダにいたとき良くお話をした先生のことを取り上げます。マギル大では名誉教授のポジションになっていましたが、最近シカゴ大にお引越しをされたようです。この件、お話が長くなりそうですので、その1では思い出話中心、その2で日本の大学・先生たちとの対比でお話を作っていきたいと思います。

トマス・ラマール Thomas LaMarre 先生との出会い

まず、お名前の日本語読みですが、ここではトマス・ラマールで統一させていただきます。筆者が最初にお会いしたのが1998年の秋、当時は、 Associate Professor のご身分だったと思います。お名前で推測できるとおり、アメリカ国籍ですが、フランスにも縁のある方、そして日本語もペラペラ、N1レベルとかではなく、ほぼネイティブ、混みいった話でも全然大丈夫。そのあたり毎日日本のアニメばっかり見ているからかもしれません(筆者の推測)。

大学でのご所属は、Department of East Asian Studies, Faculty of literature。East Asian Studies とは書いているとおりで、日本・韓国・中国に関する学問領域全般をさします、北米ではこの名称を用いた大学での研究分野が多くあります。マギル大の場合は、それぞれの国の社会・文化に関する教育・研究と言語として授業を学生に提供していました。で、ラマール先生は日本の分野のご担当。筆者がいたころは、日本・韓国・中国の3つフィールドはそれなりにバランスの取れた数の教員構成をしていましたが、今のHPを見ると中国の先生たちが突出。こういうことの積み重ねで日本の認知度に差が出てしまいますので、海外における日本研究の拠点づくりにも力を入れる必要があります。まずは、日本の在外公館の広報文化担当や国際交流基金(JF)さんが人的交流のサポートに力を入れてもらいたいものです。また、日本の大学の積極的な国際交流も重要な下支えとなります。

www.mcgill.ca

ラマール先生の毎日

『ラマール先生はだいたい毎日大学にきます。』と書いたら、おまえアホか!大学の先生やったら来るんあたりまえちゃうんか!と(大学をよくしらない人から)お叱りをうけるかもしれません。でも、日本の(特に人社系)の先生たちはそうでもないんです。例えば東京に勤務先の大学があったとしても、ご自宅は京都にあるなんてホントよくある話(憲法上居住の自由は認められてはいます…)。こんな先生たちは授業や会議のあるときだけ(わざわざ)大学にお越しいただいています。そして用が済んだらとっとと帰ります。ですので、授業を聞いている学生さんはこんな先生のご高説を聞き逃さないようしないといけません。

ラマール先生の授業はだいたい日本と同じ感じ。所属している全学・文学部の学生対象、学科の学生対象、大学院(M・D)の学生対象に授業を行います。もちろん授業は、基本的に、Japanese studies が中心。ですので、授業を行っている時期は結構お忙しそうでした。そんなラマール先生の思い出話をいくつか。

①Office Hour には必ず部屋にいる

筆者がいた1999年頃って、日本では、Office Hour? 何それ?的な時代。シラバス上に(例えば)『授業のことで知りたいことがあるので先生と何時お話ができるか?』のような学生の要望のため、(例えば)『火曜日の午前中研究室に来てください』のように記載しておくもの。些細なことのようですが授業実施に関する重要な学生との約束です。制度上、学生の授業評価の対象にもなり得ます(行ったらいなかったとかは減点対象)。日本の先生の場合はどうかというと、まず、学生が来るか来ないかもわからないこんなことで大学に来たくない見知らぬ学生としゃべるのはだるいというお気持ちがありますので、授業の前後とか e-mail にて随時とかご自分優先の時間設定をされる方が多数と見受けられます。確かに一定の時間、指定されたところにいないといけないことの意味合い・合理性については考える必要があるかもしれませんが、カナダの場合、それは定着した行事になっていて教員側にそれほどの負担にはなっていません。学生が来ればお話を聞き、来ないようなら事前に準備した仕事をやっている感じ。筆者が行っても学生と話している姿はあまりに記憶にありません。当時の建物は Rue McTavish のブックストアのとなりにある古い4階建てで、扉をあけても階段上っても廊下歩いてもミシミシ音がし、冬はかなり冷え込む構造でしたが、それでもちゃんといらしてました。

②とある授業でのビデオ上映の思い出

マギル大の授業設定は日本では想像できない実施方法。普通(というか絶対)日本の大学では、(例えば)1限目と2限目の授業の間には10分くらいの休憩時間を挟みますがマギル大では無し。一つの授業が終わったら間髪入れずすぐさま次の授業が始まります。ですので、どうなるかというと、次の時限にも授業のある学生は、今の授業が終わる前に片付けだして次の授業に向かいます。教えている先生も、片付けしている学生と一緒に急いで教室を出て次の授業の先生にバトンタッチしないといけません。日本の大学的に言えば詰め込められる時間数を増やし一日に多くの授業が実施できれば、それだけ教室の稼働率を上げられ全体の授業時間割を作る際に余裕が生まれることになりますが、この発想は日本国内では思いつきません。(多分、設置基準では授業の時間数・回数のことは書いてあっても休憩時間の設定はなかったと思います。)

長めのマクラになりました。ある時、ラマール先生から『今日の授業は面白いから見に来ませんか?』と授業へのお誘いが。当時筆者は、勉強がてら East Asian Studies の先生たちがやっている授業に参加させていただいていました。例えば他にも、マギル大学の学生が初級の日本語を学んでいる姿を見るのは結構興味深いものでした。で、今回のラマール先生の授業は、(多分)文学部で開講の講義科目で、受講者数は、小さめの階段教室に50人以上。で、ラマール先生の今回の授業はビデオ鑑賞(日本のテレビをそのまま録画したもので教材の著作権が多少気になりましたが、気にしないでおきます。)

ビデオのお題は、兵庫県にある女性だけが入学できる音楽学校の一日的なもの。2年制のこの学校は、本来の音楽関係の教育に加え、女性としての礼儀作法やマナーの学習も大変重視をしていて、初年度入学者は、構内の廊下や練習場のような施設を朝から一生懸命きれいにして、先輩(2年生)がやってくると道をあけて大きな声でご挨拶をすることを叩き込まれます。その様子を映像化したもの。それをカナダの大学の学生に見てもらったあと『どのように感じましたか?』について意見と議論をする感じ。で、ここはカナダ、例外なく多くの学生は、理解不能で、なぜ無意味に新入生は、(海外でも大学の学生文化はありますが、かなり異質なので)必要以上に先輩に奉仕する伝統や文化を作る必要があるのか等々お話をして授業は終了。

折角ですので、筆者の考え方も。この項を書くにあたり、この音楽学校のHPを見直しました。筆者の一番の印象は、この学校のHPにはハラスメントに関する項目が一切書かれていないこと。この学校には寮が設置され、多くの20歳前後の女子学生が集団生活を送るのですが、みんな清く正しく美しいから大丈夫という性善説に基づいた管理が行われているようです。多分、この学校の卒業生は熱狂的なファンの多い歌劇団に所属するので音楽学校で出来事は不問とされ、それまでの苦労話として美化される傾向にあります。特にこの学校では教える側が絶対の立場で、学ぶ学生も個としてスターになるための競争原理が働きますから連帯責任という言葉は生まれても for the team 的な精神は培われそうにありません。全体的に今どきのSDGS的な考え方とは大きく乖離していると思えます。

大学でもアメフト部やボクシング部、野球部、駅伝部に所属する学生を専用の寮に住まわせ鍛える方法が広く用いられています。高校でも、例えば野球部の場合も専用寮があって監督と何時も一緒に生活し食事洗濯は監督の奥さんがやってくれるとかが美談になります。昨今の芸能事務所で大きな影響力をもつ人物の未成年者への性加害事件についてもその多くの現場となったのは合宿所・寮といわれるところ、違法薬物の蔓延も大学寮内、それぞれ施設により何が起こるかは異なりますが、少なくとも、肉体的にも精神的にも暴力を受けない、自分の意思で寮生活の判断を行うことができる、ハラスメントのような事象について、第三者的な立場で、秘密が守られ、公平で迅速にチェックできるシステムを構築しておくことが寮の設置者の責務と言えます。大学として設置する必要があるのかないのかもわからない場所で薬物が見つかっただの暴行があっただのレベルで世間を賑わすのはやめてもらいたいもんです。

やはり冗長になりました。すいません、で、こんな調子でラマール先生とは1年間ご一緒させていただきました。それからあとも数回、カナダに里帰り?した際お話をさせていただきました。学生でも教員でもない立場でお付き合いさせていただき様々なお話ができたことは非常に有意義であったと今でも思っています。

その1の過去のいろいろはこれで終わりにさせていただき、その2は(今から書きますが)、ラマール先生の経歴を参考として日本の大学・教員との対比をしてみます。

ー以下に『ラマール先生ってどんな人?』の情報をまとめていますので関心のある方はご高覧くださいー

Thomas LaMarre 先生のこれまで。シカゴ大学の公式ページより直接引用しています、筆者でもわかる平易な英語ですが、急いでつまみ食いしたい方は、コピペでGoogle Translation 日本語訳に。最初の段落はわかりにくいですが、それ以降はだいたい内容をつかむことができます(ご経験のあまりない方は勉強がてらトライしてみてください。)。書いているとおりで、主要な研究テーマは日本のメディアスタディとなります。多方面からアプローチしていらっしゃいますが、実際あって話すとアニメ系の話題で盛り上がります。

【web 引用: The Department of East Asian Languages and Civilizations (EALC) at The University of Chicago の People より(彼のBiography at Sept. 6, 2023)】

Thomas Lamarre | Department of East Asian Languages and Civilizations

Thomas Lamarre is a scholar of media, cinema and animation, intellectual history and material culture, with projects ranging from the communication networks of 9th century Japan (Uncovering Heian Japan: An Archaeology of Sensation and Inscription, 2000), to silent cinema and the global imaginary (Shadows on the Screen: Tanizaki Jun’ichirō on Cinema and Oriental Aesthetics, 2005), animation technologies (The Anime Machine: A Media Theory of Animation, 2009) and on television infrastructures and media ecology (The Anime Ecology: A Genealogy of Television, Animation, and Game Media, 2018). Current projects include research on animation that addresses the use of animals in the formation of media networks associated with colonialism and extraterritorial empire, and the consequent politics of animism and speciesism.

His work as a translator includes major works from Japanese and French: Kawamata Chiaki’s novel Death Sentences(University of Minnesota, 2012); Muriel Combes’s Gilbert Simondon and the Philosophy of the Transindividual (MIT, 2012); and David Lapoujade’s William James: Pragmatism and Empiricsm (Duke University Press, 2019).  

He has also edited volumes on cinema and animation, on the impact of modernity in East Asia, on pre-emptive war, and formerly, as Associate Editor of Mechademia: An Annual Forum for Anime, Manga, and the Fan Arts, a number of volumes on manga, anime, and fan cultures. He is co-editor with Takayuki Tatsumi of a book series with the University of Minnesota Press entitled “Parallel Futures,” which centers on Japanese speculative fiction. Current editorial work includes a co-edited volume on Chinese animation with Daisy Yan Du and a co-edited volume on Digital Animalities with Jody Berland. 

He previously taught in East Asian Studies and Communications Studies at McGill University. As James McGill Professor Emeritus of Japanese Media Studies at McGill University, he continues to work with the Moving Image Research Laboratory, funded by the Canadian Foundation for Innovation, and partnered by local research initiatives such as Immediations, Hexagram, and Artemis.

ealc.uchicago.eduここから、ラマール先生の著作物。単著・共著いろいろありますが、北米目線で日本のアニメの評価を行っているものが多くあります。

 

 

 

 

【ちょこっと追記・補足】大学職員として働くなら結局どこが一番よいのか考えてみる2

最近Web Portalで大学職員ネタが掲載されたようで、古めのこの記事をのぞいていただいている方が結構いらっしゃいます。とても有難いことです。書いている内容に変更等はありませんが、このことへのふり返りと視点を変えた新たな補足を追記します。筆者のスタンスは『金目当てで働く場所じゃありませんよ』です。

はじめに

ここでは、大学で働く、働いている人を中心に書いてみます。あまりまとまっていませんでつまみ食いでお読みください。基本、国立大学中心です。

大学ってどんな人が事務で働いてるの?

今の、国立大学の場合、40代以降は国家公務員Ⅱ種試験の合格者、それより若い人は、国立大学の法人等統一試験などでの合格者が中心。最近では各大学独自での採用者も増えているようです。これでも多分ピンとこないと思いますので、もう少し詳細に。

あくまで筆者の印象によるものですが、関西では、関大卒ぐらいの学歴の人が中心、年配の人の中にはⅢ種(高卒)採用者の人もいますが、減少傾向。これは多分京都や大阪とかの地域でも若干変動があるかもしれません。基本的に関西圏では、公務員試験に強いといわれる関大・立命館大あたりの卒業した人が中心で組織が出来上がっています。ただ、定期的に異動がある組織なので、あまり大学ブランドを気にする必要はなく、『関大だから』というような学閥形成は(筆者の感じる限り)気にしなくていいと思います。どちらかというと、ここ最近は(これまで国Ⅱはレベルが低くて受験してこなかったような)国立大出身者の職員が増加傾向。※詳しくは③受験者のレベルアップ

筆者が働いていたころの首都圏の場合、明治大、法政大、立教大、中には上智大、早稲田大、津田塾大出身の人も。また、千葉大、茨城大、埼玉大あたりの国立大出身の方もいました。この数値は文科省関係機関ですが、他省庁も(同じ試験合格者ですから)同レベルの人が国家公務員として国を支えていることがわかります。

国家公務員時代のお話、国立大学は、他省庁と比べてかなりお給料がお安めでした。筆者は採用された時、どこの官庁も同じ試験で採用されているんだからそこまで大きく変わらないものだと思っていましたが結構大きく違います。その理由の一つは大学という事務組織のあり方。学科事務室にず~っと貼りついて全然異動のない事務主任さんの処遇や、(その当時の時代背景もあって)国鉄(現JR)職員の再雇用先として(国の命で)受入れていたり、臨時の印刷工で働いた人が(気がついたら)庶務掛(かかり)長になっていたりと、今働いている人には信じ難い光景があったものです。

もともと国家公務員の俸給表は、異動や出向に基づき昇進・昇給が進むシステムなので、ずっと同じ場所で同じことをやっている人は制度上給料は最低限しか上がらなくなっています。その状況が他の省庁と比べあまりにひどいので、人事院から是正指導がありました。(筆者の不正確な古い記憶、何かの公開文書で読んだような…)

こちらも面白情報。(20世紀末期の頃)筆者がまだピヨピヨな頃、人事院近畿事務局主催の近畿地区内全省庁参加初任者研修に出たことがありますが、その際も国立大学に関する面白いお話を聞く機会がありました。結構辛辣です。

職責の重さ・許認可権限の相違:(例えば)近畿経産局や近畿財務局の課長級が異動したら日経新聞とかに載るでしょ。でも(例えば)京大の留学生課長が国際交流課長に異動したって世間の関心事になりませんよ。

人事院へのクレーム:新採のご家族からの電話。大学で働きだした息子の帰りがいつも遅い。なんでそんなに遅いのか聞いてみたら理由が判明、毎晩上司たちのやっている飲み会(経費節減のため職場内)のおつまみ製造を給湯室でやっていた。人事院の対応まで聞いていませんでしたが、確かに当時の事務室の冷蔵庫には常にビールが満ちていました。当時は、こんな調子でしたが、それを知る人も少なくなってきました。

※この研修面白くて、公安調査庁や麻取から来た人たちは、自己紹介する時『現在の職務内容は守秘義務があって~』で何も話せなかったりと、他はほかでいろいろあるもんだといろいろ感じ、いまでも記憶に残っています。

お給料のお話。MEXTの本省課長級・審議官級の人でも(名目上は)年収1300万円あたりですから、私大で普通に働いていて楽に1000万円越えの年収をもらえる職員続出であれば、(給与が高いというのは悪い話でもなくそれぞれの大学のご事情なので足の引っ張りはしませんが)その理由を知りたくなります。

※MEXT・国立大学の日々を知るには(オタッキーで普通の人には入手困難ですが)文教速報・ニュースを眺めてみるとこんな人がこんなことやっている!あの人が異動した!を知ることができます。大したことは書いていませんが結構おすすめの資料です。関心のある人はなんとかがんばって入手してみてください。

最後に私大の状況も少し。やはりOB・OG採用は比率は高くなります。他大学出身者の採用はあっても採用後の処遇は事前に調べておく方が良いかもしれません。

この項の結びとしては、国立大学で働いていて、野心ギラギラでオレは1000万円以上の年収目指す!みたいな人、そもそもみたことありません。そのような考えの人は最初から国公立大というか大学職員は働く選択肢から外す方が無難です。

最近の傾向

①退職する人は結構いる

どこの組織でもそうかもしれませんが、新採の人がすぐに辞めちゃうケースは結構あります。入った瞬間(4月1日採用され4月2日に辞めると連絡してくる人)や上司の係長や職場の雰囲気をみてがっかりして出勤してこなく人などが典型。特に新採の場合、慰留するにも手立てもないのでそれでお別れ。折角健康保険証や職員証とかの準備をしていた人たちはちょっと可哀そうです。

そんな若手の退職者が多いことを気にして、周りの職員もナーバスに。新採の上司などが仕事のやり方について説明する際も、ハラスメントと言われたりしないよう言葉遣いも超慎重。それでも何人かは辞めてしまいます。筆者個人的にはそんな甘々だとしっかりした職員の養成にも影をおとすのではと危惧してしまいます。

働く働かないは、それこそマッチングの問題でもあるし、筆者も途中で何度か退職しているので、早めに判断して辞めること自体は悪いことだとは思いません、が、特に若いうちの退職は、今の自分の判断が人生の中・長期的なプランに合致しているものかどうかは考える方が良いかもしれません。

ついでに蛇足で多少違う話、今の大学としての参考情報。国公私立を問わず大学病院の医療職の退職者数は半端ありません。もちろん病院規模・病床数が多いこともありますが、1年で200人レベルの看護師が退職し新たに採用されています。同様に薬剤師や臨床検査技師等もたくさん。そのあたりの医療職の人にとって大学病院のスキルとキャリアはステイタスとなり転職にも有利になるのが理由と言えます。

当然、診療を行う医師も同様。医学部・附属病院って、『この病気の最後の砦』的なスター医師がいて他院では断られた患者さんでも引き受けてゴッドハンドで治す云々のようなお話に引きずられがちですが、現場は若手研修医が中心で人の出入りの激しい環境。実際見てくれるのはそんな若手の医者。何か普通の治療を受ける場合は、病院の大きさや雰囲気だけに惑わされず普通の病院を選ぶ方が良いと感じます。

②大学院修了者の採用増加

大学院が充実し研究が盛んな研究型大学院大学を中心に、大学院修了者の求人需要は伸びています。これは良いことだと思います。大学によっては、業務が大学院や研究分野への対応するためには、今後、URAだけでなく、事務部門に所属する大学院修了者の職種や目線は(筆者は学部卒ですが)増加する必要があります。筆者の考える期待できそうな機関をいくつか挙げておきます。

大学では旧七帝や、東工大・医科歯科大あたりと、地方の旧官立大あたりでは大学院レベルのスタッフを順次増やしていきそう。また、目線を変えて、大学と接点もつ仕事を行っている理研JST、JSPS、産総研(経産系)のような機関も今後は大学院修了者の職員を増やすことになると思います。※JSTやJSPSの職員採用欄をみていると大学院修了者ががんばっている姿が載っています。とても良い書きぶり。大学で働きたいと考えている人は筆者個人的には、理研等々も面白いやりがいのある機関だと思うので、(学部卒の方も含め)検討する選択肢の中に入れておくことをお勧めします。

③受験者のレベルアップ

国家Ⅱ種等の合格者層(出身大学)は、ほぼほぼ一定だったのですが、価値観の多様化?で、最近、これまで受験してこなかったような大学(いわゆるアタマの良い大学)の人たちが受験・合格そして実際働きます。筆者もそのタイプの人物を知っていて『なんで来たん?』と聞いたら『確かに偏差値高い大学やけどそれだけで一生しんどい仕事したないねん』とこの人はお話してくれました。また、他省庁も同じ傾向、某省(地方)で働く筆者と同じ私学文系アンポンタン大卒の知人が、某有名国立大学法卒でⅡ種採用された人物の初任者研修の指導担当をやらされ『やりにくいわ…こんな大学やったら司法試験か国家Ⅰ種で来たらええのに…』とぼやいていました。

大学では、自大学の卒業生を職員をとして採用し働いてもらうことは総じて歓迎する傾向にあります(特に教員たち)。大都市圏ではそれほど目立たないかもしれませんが地方国立大ではその傾向が高まる可能性を感じます。

地方国立大学はある意味おすすめ

なかなか話題になりにくい地方国立大学。給与面では、都市圏の大学の比べると待遇面では劣る面は確かにあります。ただ、その地で生まれ育った人、その地に関心のある人など、安定した生活が送れそうな地方の国立大学は魅力のある働き口になるかもしれません。筆者の勝手なおススメですが、西日本なら、鳥取大学や四国の国立大学、そして琉球大学あたりはそれぞれ魅力があって楽しそうです。

公立大の独自採用の一考察

公立大学でもそれなりに独自採用がおこなれるようになりました。HPをパラパラと眺めてみても、例えば、

大阪公立大、神戸市外大、和歌山県立医科大学(事務・技術職員)、奈良県立医科大学附属病院職員(※病院職員募集)、福知山公立大、沖縄県立芸術大学etc

では、募集がおこなれています。関心のある方はトライしても良いかもしれません。

ただ、筆者の考え変わらず。働くには公立大学は、あまりお勧めはできません。その理由は公立大学の立ち位置。公立大学は、設置母体である市や県があっての大学、そのため県立病院や県警、福祉事務所、市民センター、県立高校等々と同じ出先機関の取り扱い。国立大学なら文科省設置という強みでどこでも独立した存在感を示すことが(まあ)できますが、(特に小規模)公立大学は、単なる地方公共団体の一部局で影の薄い存在、同時にその一部局での採用者という立場も将来的に明るく感じられません。

まとめ

すいません。本当にまとまりませんが、今の日本の多くの大学職員ってこんな感じで仕事をしています。大学職員を目指す人が憧れている(カネになる)大学って、多分、首都圏で20くらい関西圏なら10くらいの私立大学のイメージで考えているんだと思います。このような大学は今後も中長期的には生き残るでしょうから自己責任で働いてみるのも悪くはないと思います。それ以外の私大はどうなるかわかりません。現に私大の半分が定員割れの時代になり、授業料も受験料の収入も多く望めない現実がある中、高給取りを目指すのはチャレンジャーです。

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【短編】歯学教育コアカリキュラムを読んで歯医者に行くのが心配になってみる

歯学教育のコアカリを読んでみてがっかりした理由はそのレベルに?がつくから。コアカリですから、基本的な教育・実習内容のポイント列記と理解してますが、それにしても医学教育のコアカリと比べて大きく品質の劣化を感じます。このコアカリ策定には厚労省さんも加わっているはずですのでみんな歯科医療ってこんなもんで構わないと思っているようです。

歯科でも医療行為します それが一番

筆者の一番の心配ごとは、世間の人たちって、歯科医師のやる歯科診療(医療)を軽視しているように感じるから。歯科医師の仕事はチマチマ虫歯の治療で歯を削って何かを充填するだけではではありません。抜歯の際には顎骨にくっついている歯を引き抜く観血的措置をし、特に奥歯・埋伏歯を抜くときは顔面神経に触れることもあり適切な判断・措置が必要です。また、交通事故などでの眼窩底や顎骨骨折手術は歯科口腔外科の歯科医師が行うし、下顎前突症、口唇口蓋裂、各種口腔内の腫瘍なんかも歯科医の担当。最近は高齢者の治療も多いですから、障がい者、認知能力の低い人、高血圧でなんらかの全身症状がでる可能性があるリスクを抱えた患者さんへの治療等々、通常の内科医と同等以上に全身症状のケアが必要な場合も生じます。※筆者は歯科医師ではありませんが、歯学部附属病院医事課で4年勤務した経験があり、口腔領域内での深刻な病気をもった患者さんをたくさん見てきました。

筆者の体験談を言えば、昔々、家族(父・故人)が、近所の歯医者で(多分)う蝕治療を行う際、(多分)古いクラウン(歯冠)を外した時、誤って気管支内に誤嚥したよう。で、その歯科医院内では摘出困難で、結局、大学病院にまで救急搬送されたことがありました。患者全てがそうですが、特に老人相手の歯科治療の時、口腔内のものをヘンなところへ誤嚥させないなんてイロハのイです。

他にも、筆者が現在通う歯医者さんの待合での光景、一人では次回予約日の確定がままならない認知レベルの高齢者さんがいて、隣で眺めているだけで大丈夫かいなと不安になったこと。そんなで歯科診療には様々なリスクは高まっているように感じます。そんなお年寄りだからこそ、認知症の影響で自身でハミガキもできない人には週1回程度でもしっかりした歯石除去などをしてあげないと口腔内環境の悪化がそれ以外の場所への病気に波及していく心配もあります。

歯医者さんも患者も、なにもない平穏な日が続けば Happy ですが、残念ながら、急性期の出来事は起こるし、そのための日ごろからの用意はとても大切です。

歯科治療を甘く緩めるのはとても危険

医学部のイメージから、歯学部も難関・高倍率と思われがちですが、2022年度入学試験で、全体の入学者数は2,174人と入学定員2,468人に満たない状態。入学者数を定員数で割った充足率は全体で88.1%(MEXT医学教育課資料)。国立の有力どころはまだ大丈夫ですが、ローカルなところにある私大歯学部の質が気になります。そんな状態ですから、一部の歯学部は、事実上『歯科医師になれる』⇒『歯科医師国試の受験資格が取得可能』にキャッチフレーズが変わってしまってきています。(このあたり一部の薬学部も同じ)

その一方で、都市部では、歯科医師が余剰で、そのせいか、歯科点数表による保険診療に準拠した治療だけでは収入がしんどいので、『歯を白くしましょう』とか、『保険の歯よりつけ心地の良い歯にしませんか』とか、『インプラントだとしっかり嚙めますよ』とかの自由診療のお誘いをする歯医者さんも結構います。

ですので、歯科医師国家試験については、歯科医師の質的保証を行う必要が増しますし、歯科医師国師合格後の研修制度も医師の臨床研修並みに、充実させる必要があると感じます。時代が変わったから、みたいな理由で日本の歯科医療の質が落とさないようにしてもらいたいものです。

むすび

日本人は手先が器用?とかいう納得しそうで実は意味不明な優越性。そんなの歯科医師さんには通用しません。ちゃんとしっかりしたコアカリやエビデンスに基づくトレーニングを行い使命感をもって歯科医療に励んでいただきたいものです。

www.mext.go.jp

www.mhlw.go.jp

 

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兵庫県立大学・芸術文化観光専門職大学の授業料等が無償化されることを考えてみる

公立大学の授業料等無償化が進みます

兵庫県兵庫県立大学のHPで、2024年度から県内在住者を対象に、県立大(本部・神戸市西区)と県立芸術文化観光専門職大学豊岡市)の入学金と授業料を無償化する施策(案)が発表されました(ほぼきまり)。同様に、大阪公立大学でも同様の授業料無償化を2024年度より、段階的に導入を検討、東京都立大でも同様に実施予定。

お金の出どころは、各地方公共団体の財政調整基金から(非常時用の貯金の有効活用みたい)。兵庫県知事の説明的にはZ世代向けの支援となります。※県の作ったポンチ絵はとても分かりやすく説明しているので是非ご覧ください。

無償化される影響

分かりやすい事例が、大阪府で取り組んでいる府立高校の授業料無償化。反対勢力は私立高校の人たちでした。構図は、大学でも基本的に同じですが、そもそも公立大学の日本の大学全体に占める割合が小さいので直接的な影響は大きくないのかもしれません。

まず、メリットととして、兵庫県立大学・県立芸術文化観光専門職大学両方とも、良い宣伝効果となり、優れた学生が受験してくることへの期待が高まります。特に豊岡にある専門職大学さんの方は、開設されて間もないので、良いPR効果に。ですので、県立の2つの大学にとっては強い追い風になります。で、あとは筆者がいつも書いているとおり、設置する団体は、授業料をタダにするだけでなく、公立大へのハード・ソフト両面からのサポートも充実させ『安かろう悪かろうの大学』にならないようしていただきたいものです。

少し気になる関学さん

関学さんは、今、がんばって王子公園に新しいキャンパスを作ろうとしています。多分関学さんにとって、学部レベルでは、兵庫県立大学さんの無償化政策の影響はそれほどでもないと感じます。その理由は、関学を受験しようとする学生・家族の志向は金目の話ではなく、関学ブランドに惹かれてのもの。そもそも授業料等を気にして大学を選ぶ層ではないと思えます。

どちらかというと気になるのは大学院。人文社会科学系の大学院は両者がかぶる部分が多く、社会的評価としても同じような感じ。また大学院は、学部受験と比較すると、ブランドイメージで狙うものでもありません。それが、(兵庫県民なら)入学料・授業料ともタダになると、受験する側は、兵庫県立大学大学院を選んでみたくなります。これは関学さんにとっては大きな痛手。

まとめ

そうなんです。数十年前って国立大学の授業料は、めちゃめちゃ安かったのですが、私学の授業料との格差が気まずい状況になってきたので、徐々に値上げして、20年くらい前から今ぐらいの金額で維持されています。そして公立大学も右へならえの状況。昨今の日本の状況で、少子化対策と経済支援、さらに諸外国で行っている高等教育に対する就学支援の状況が後押しになり、全ての学びたい若者に高等教育が手に届く方向に進められています。それが、ユニバーサルアクセス時代の大学のあり方なのかもしれません。取り残されているのは未だにキリギリスさん経営を行っている私立大学をどうするか、が、中期的な課題になりそうです。

www.u-hyogo.ac.jp

 

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