FOU’s blog

日本の大学 今 未来

【短編】今でも大変 中国の留学生事情

このようなご時世、特定の国の名前で表現するのはアレなのですが、でも、実際多いんです。念のためですが、今回のことは大阪公立大学さんのような日本の大学と中国で応募しようとした方はあくまで被害者です。

今回の案件:中国国内での詐欺的手法

今回の問題は、中国・上海で、日本の実際の大学名を用い「中国現地受講MBAプログラム」・「経営学MBAプロジェクト」ができました。私たちが代理店(業務代行・仲買業者的なもの)ですので諸手続きをやりますよ!的な手口のだまし。近年は鳴りを潜めていると思っていたら今でもやっているようです。このあたり、コロナ禍明けの人流が活発になる国際状況を狙ったものかもしれません。日本の大学関係者からみるとすぐバレそうな内容なのですが、中国国内で日本の大学事情に疎い留学希望者が悪質(というか詐欺)なブローカーに留学を依存してしまったのが理由のようです。被害者はまだはっきりしませんが、現地在上海日本総領事館も注意喚起しているようですので範囲に広範になるかもしれません。

海外留学に関してのニセ情報、ちょっと調べればすぐにわかりそうな話だと思うんですが、今でも時々ひっかかる人たちがいます。その際は中国関連でのトラブルが顕著。日本においても振り込め詐欺のような特殊詐欺の撲滅ができていないので、人の心のスキに漬け込む人たちは世界のどこにでもいるということかもしれません。

中国の大学事情はいまだにブラックボックス

話しは少し変わりますが、やはり中国。筆者が某大学某部局の留学生担当で働いていたころ、怒りの電話が事務室に。曰く『ちゃんとお金(100万円位らしい)払ったのになんで不合格なんだ!』。事情を説明すると、その人物は、中国からやってきて、大学院に外国人研究生身分で入り(非正規学生向けの留学生ビザ(期間1年)・結構入りやすい)、一年間がんばって勉強し、正規の大学院で国費・私費研究留学生の選抜試験を受験し、博士前期(修士)の身分の取得を目指したのですが、あっさり不合格に。ちゃんとブローカーさんにお金を払ったのに、なんでこんなことになるのっ!わざわざ日本にきて一年(自分なりに)頑張ったのにっ!というお気持ちはとりあえずわかります。

約3000ある(らしい)中国の四年制大学

中国教育部の統計情報(2017)に依った数字。調子に乗っていろいろ調べてみたら、アメリカはさらに多くて4000大学、なぜかイギリスは140大学しかありません。1990年台から中国も大学のマス化(ユニバーサルの一歩手前・マーティン・トロウ)の方向へ進み、大学がたくさんに。筆者は中国にいくつくらい大学があるのが適正なのかという相場観を持ち合わせていませんが、とりあえず急激に増えてきています。

中国の場合、基本的には中国教育部が大学を所管していますが、他部門(科学技術部、中国科学院、同社会科学院、人民解放軍etc)が設立している大学もあります。また、日本と違って、大学で防衛・軍事研究をしたらダメという縛りがありませんので、大っぴらに党・政府と連携して研究開発を進めています。今話題の国防七校は一応教育部所管の大学ですが、その研究分野の中で軍事研究を一生懸命やっている感じ。研究を進展させるためには一か所で集中するより、複数機関で競わせる方が良いという考えかもしれません。

分かりやすい事例は、空軍軍医大学(第四軍医大学)さん。名前であきらかなように人民解放軍所管の軍医養成系大学の名門校。日本のイメージでは防衛医大に相当します。この大学、1980年台から国際交流に熱心で、日本でも学術交流協定を締結している大学がたくさんあります。どこかの大学さんの国際交流記事を読んでると『第四軍医大学ご一行が本学を来訪、中国から来る方はとても礼儀正しくて~』なんて書いてあって、そらお相手は軍人なんやからテキパキして礼儀正しいのはあったり前やろっ!と突っ込みをいれたくなったのを覚えています。ただ、軍医大学ではありますが、日本の大学と現地の大学病院施設への相互訪問もやっていて(軍機関ということを除けば)ほど良い大学間の国際交流をやっているようです。どちらかといえば筆者が心配するのは経済安全保障に関わる中国の大学との関係で、通常の大学の中に軍事研究が盛り込まれている機関(国防七校etc)の方が、日本の先端技術研究移転へのリスク判断が難しそうに感じます。

蛇足

日本における国際的な先端技術研究に関する縛りは、世界情勢においても大きく左右されます。今は中国が主たる対象となっているようにみえますが、過去、インド、パキスタン、イランあたりで核開発の進展や核実験がお行われたりすると、途端にその国で物理学系の研究者へのビザが発給されなくなったりていました。基本的にはこの仕事、経産省が取りまとめている外国ユーザーリストによるものですが、核や化学兵器開発関連で中国の企業・大学でも名前があがっているところがたくさんあります。特に自然科学系の留学生・研究者を招聘する際は注意が必要です。同様に、最近では関連して安全保障貿易管理なんかも大学でしっかりやらないといけなくなりました。

空軍・軍医大学(第四軍医大学)さん

www.fmmu.edu.cn

経産省さん 安全保障貿易管理関係

www.meti.go.jp

経産省さん 外国ユーザーリスト(定期的に更新されていきます。)

www.meti.go.jp

中国の証明書 ほんまもん問題

これもバカバカしい話ですが深刻です。今でも中国の大学の知名度、難易度はホントよくわかりません。もちろん、北京大、精華大、上海交通大、復旦大等々や国家重点大あたりの情報ならば、それなりに知ってはいるのですが、ここ二十年くらいに設置された新設大学の情報については大部分が未知。特に地方の小規模大学については日本人大学関係者の往来も少なくHPみても何がなんだかわからない…。そんな大学からも日本に留学したいとか、大学院へ入りたいとか人たちがやってきます。その際は、大学発行の中国語の卒業・修了関係・成績関係の証明書を信頼できる(らしい)翻訳・公証機関・会社で日本語なり英語なりにしてもらっているのですが、その全てが謎。大学自体がよくわからない、学部も専攻等も成績・単位の取得状況も良くわからない状態。それに簡体字で書かれていると微妙に書いてることもわかりません。最近、中国の大学のHPもゴージャスになってきましたが、それでも英語での情報、各教員の研究内容とかは今でも情報量は不足しています。qaupdates.niad.ac.jp

まとめ

まとめにもなりませんが、ほかの国と比較して、中国からの留学生の受け入れは今でも注意が必要。反対に中国国内での日本の大学の評判、筆者の理解では、海外留学する際の選択肢は、アメリカを中心とした英語圏が第一目標で、次いで欧州の大学、その次あたりあるのが、日本。それなりに需要がある理由は、中国本土から近い、同じ漢字圏であり欧米と比べると普段の生活が楽等々あまり積極的なものはありません。なお、中国は、日本以上に大学序列を気にする国。ですのでホントに行きたい大学は東大、京大、私大なら早稲田、慶應義塾等のような中国でも知名度・ブランド力のある大学へ行くことがキャリアパスとして大切。それ以外を目指す留学生は学びのモチベーションはあまり高くない人が一定数生じてくると考えて良いと思います。今後も大学で留学生を受け入れるとなると中国人が主体になりますので、(どこの国もそうですが)いわゆる心は許しても気を許さない気持ちでおもてなしするのが良いと思います。

以下リンクが切れていたらごめんなさい(多分しばらくしたら切れます)

6月5日の第二報

www.omu.ac.jp

5月17日の第一報

www.omu.ac.jp

fou.hatenadiary.jp

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