FOU’s blog

日本の大学 今 未来

最近鳥取県の高校生たちが気になる

親族関係で中国地方の鳥取県を中心に書いてはいますが、全国規模で考えてみたいお話

山陰はたいへん

筆者の亡母の田舎は鳥取県倉吉市というところ。大阪からだとスーパーはくとというディーゼル特急に乗っていきます。所要時間約3時間くらい。鳥取県は東から砂丘のある鳥取市エリア、真ん中あたりに玉造温泉とかがある倉吉市エリア、一番西に境港市米子市があります。これで人口は60万人足らず、過疎化も進んでいます。JR山陰本線のダイヤを見てもらえればわかりますが、走る列車は一時間数本、その中に指定座席のある特急列車が混じりますので、実際住んでいる人の足と使える列車はさらに減少。そのため、駅を拠点に何かがあるわけでもなく、倉吉駅駅ナカにおいしいトレンディーなスイーツを売っているお店もわけでもなく、駅前タクシー乗り場にはいつもタクシーさんが満ちているわけでもなく(電話してきてもらうのが賢明)、夜景がきれいな高層ビルもありません。

そんなところにある倉吉市は、特産品として二十世紀梨とスイカのような農業生産品が有名、最近ではお茶の間の通販番組で有名になった皮革会社の本社があったりします。

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で、そんな鳥取県にある大学は、鳥取大学鳥取環境大学(公立)、私立大学としては小規模な鳥取看護大学鳥取短期大学というのが倉吉市にあるくらい。倉吉に住んでいる高校生は、4年制大学へ行くとすれば、県内なら鳥取市を中心にある鳥取大学など非常に限られた選択肢しかありません。ちなみに倉吉から関西へ行くためにはディーゼル特急で3時間、鳥取空港から飛行機で羽田まで1時間少々、そのため首都圏の大学での学びも選択肢に入るかもしれません。

そんな鳥取県で東の端(鳥取市)から西の端(米子市)まで列車に乗ってみる

鳥取米子駅間:営業キロ92.7km 普通で2時間少々で1690円 

鳥取の山陰線は単線で電化されていませんので電車じゃなくて(ディーゼル)列車。その地域の足となる列車はワンマン化され無人駅が多数。こんな状況を危惧する人もいますがコスト面を考えるとなんともこれが限界…。

これを似たような路線で比べてみると

東京~小田原間 営業キロ83.9km 1時間15分くらいで1500円くらい 

大阪~姫路間 営業キロ:87.9km 1時間くらいで1520円(新快速は早い)

※JR各社は日本各地どこでも営業キロだけなら(あたりまえですが)お値段はだいたい同じ。それ以外の部分で大きな差がでちゃうということです。

そんな距離の中、鳥取県にある主たる大学のある場所は、鳥取市域の鳥取大学鳥取環境大学米子市市域の鳥取大学医学部のみ。この90キロの区間列車に乗っていて他の大学に出会うことはありません。首都圏でも関西圏でもそうですが1時間電車に乗っていればいくつの大学と出会うことができるのか…。

山陽道も明るい話は…

私立大学を中心に考えれば山陽道も良い話は聞きません。3つの県とも、それなりの規模の国立大学と公立大学がありますが、それ以外の大学、特に私大の元気は感じられません。知られた大学なら、岡山県の岡山理科大さん、広島県なら広島修道大さん、山口県は?。それ以外は厳しい状況。そんな有様ですので、恒常的な入学者不足による短期大の募集停止などが今後も増えていくことが予想されます。

その他の地方もいっしょ

この話題は亡母の故郷を思い出しつつ書いていますが、その他の場所も同じ。四国もそうだし、九州も同様。もちろん東北、北海道も。特に地方の大学に関しては、少子高齢化による人口減少の影響が目に見えて顕著。関西以西で県内の高校生の受験対象にはなっても首都圏・関西圏からの学生を集客できるレベルの高い私立大学を見つけることは困難になってきました。

教育格差が気になる ー東京では募集定員や入学定員厳格化の緩和ー

そんな地方の状況の中、ぱっとみ首都圏・東京の状況はずいぶん違います。もちろんたくさんの人が住んでいますので、初等中等教育の場なら、学びの要請があればそれに見合った学校施設を作る必要はありますが、東京都が言う23区の大学縛りをやめろという主張は筆者の心には響きません。

そんな環境に影響されてか首都圏に住んでいる受験者を持つ人たちもなんだか甘い贅沢志向になってしまい、偏差値が高くて、誰もが名前を知っていて、企業受けがよくて、入学後はそんなに勉強しなくても大丈夫で、キャンパスライフが楽しい大学が家の近所にあったらいいなあ、いやあるべきだ! と、考えるようになってしまいました。

そんな独特な受給バランスも影響し、一部の私大は、一度は首都圏外に新キャンパス作ってみたけど学生から通学に不便というカスタマーサービスレベルの理由で舞い戻ってきたり、立地の良いところに背の高い校舎を建ててみたりで、筆者には、あまりに自己中心的にしか映りません。

ただ、こうみていると全ての東京にある大学が恵まれているように感じますが、そんなこともなく、今東京都内にある私大のかなりの数が定員割れしている現実もあります。結局儲かる一部の私大と乗り遅れた私大の格差は放置されたまま。そういう面でも東京都の論法には?がつきます。結論としては、もう、大学を右肩上りに定員増やして新増設する時代は終わりました。

まとめ

言いたいことは、全国規模でみれば大学のユニバーサルアクセス化が進んだ一方、例えば、鳥取県を中心にで考えれば、地元にある有力大学は実質鳥取大学だけ、鳥取県倉吉市に住んでいる高校生は、数時間列車に乗るか飛行機に乗らないと学びたい大学へたどり着けません。これは大きな教育格差。それに加え、だからといってその高等教育の供給元として首都圏の大学が担う必要もありません。

それを思うと、昔の人は偉くて、県に一つは国立大学、主要地域ごとに拠点大学として帝国大学を置いたことはとても賢明な高等教育施策だったと感じます。

関西圏で主要私大といわれる関関同立は、関大は大阪、関学は兵庫、同立は京都と距離的にはそれほど密集しているわけでもありません。それなりに地域性を備えつつ大学がありますが東京の場合、ひしめき合いがひどすぎます。日本人の目には日常と映ってしまいますが、海外の視線なら奇異に同じような大学が乱立しているようにしか見えません。

で、結びにもなりませんが、そんな状況について解決策があろうはずもなく…ですが、今後も都市部と地方の大学格差も拡がるばかりとなるのは避けがたい事実ですので、大学に関係する方は問題意識をもちつつウオッチしていく必要があると感じます。

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