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日本の大学 今 未来

日大の出来事を感じながら私立大学の有り様を考えてみる 9 ハネムーン期間始まる

7月1日、日大新体制が正式に発足、動き出しました。筆者自身も含め世間の人たちは、林さんが女性だからという一点で支持している側面もあるので、早く真に組織を束ねる理事長として成果を出し評価を確立していただきたいところです。脱線が多くなりますが是非終わりまでお読みください。※てにおは間違いは徐々になおしていきますのでご笑納ください。

新体制を考えてみる

①やればできるじゃん ー女性が(とりあえず)増えたー

理事会(理事長を含めて22人構成)のうち9人が女性となりました。その下部組織となる評議員会の女性構成員の数も結構増えています。じゃあこれまでのずっと続いていた男性ばっかりの理事会ってなんでそうなっていたのか?が、謎。田中前理事長さんの件があって日大さんばかり脚光を浴びていますが、他の私大も(実は)似たり寄ったりで男性中心の大学運営を行なっているところが絶対多数。筆者としてはこの地殻変動が他の私大に拡大していけば良いなあと感じます。方向性はこれで良いと思いますが、基本的に理事としての資質も大切、性にのみ依存するやり方ではなく、次の世代の女性人材の育成も同時に必要になってくると思います。

②どこまで女性は増える?

基本的に、大学統治・ガバナンスに関わる女性は増えます。これは筆者の頼りない予言のレベルではなく、既に世界の趨勢→国の方向性→文科省の方向性→国立大学の機構改革の順で数値で見える形で女性人材登用とガバナンスの改革の動きは確実に拡がっています。これに立ち後れているのが一部(というかかなりの)私立大学。何の問題意識や罪悪感もなく女性抜きでの理事会・評議会で平成というか昭和レベルでの大学運営を行っています。そんな今のところ認識の低い私立大学も遅かれ早かれこの波に飲み込まれて改革が求められることになるところ。そのように考えると、日大さんは、田中前理事長のおかげで、大学のガバナンス改革が一歩早く(今だ入口ですが)進みました。いくつかのコメントを見ていると、田中前理事長的な人たちの負の影響力が今後もあるんじゃないかと言うものがあります。このことについて、筆者は楽観的に見ています。一過性の事象は起こるかもしれませんが、この流れはとまりません。万一とまったら日大さんは終わりです。

気になったところ

その1 まずは学長さんになった元総長の酒井健夫さん(78歳)。10年前に当時の身分でいう総長をされていた方のようですが、久々の復活。基本的に年齢を拝見している限りワンポイントリリーフのようにみえます。その酒井さんも学長就任の抱負をお話されています。基本的に頑張ります、なのですが、その言葉の中心にあるが『教学優先』。学長なので、学生へのしっかりした教育を行いたいお気持ちが表れていることはよくわかるのですが、巨大総合大学の中で、研究に関する記載が乏しい気がします。一般的に大学の使命というものは、日本国内おける(高等)教育の実施、(最先端の)研究、(大学教員のような)研究者養成(これは旧帝大中心のお仕事)があげられます。規模としては私大最大の大学なのですから、もう少し研究力のアップについても、コメントがあっても良いのかなと感じます。

その2 確かに女性は増えたのですが、理事・評議員を経歴をみて驚かされるのが日大出身者の多さ。特に私大の場合は、大学へ様々な支援を行ってくれる同窓会組織、日大さんでは校友会とも呼ばれる人たちですが、 なんだか陸士(帝国陸軍士官学校)並みの卒業生の堅い上下関係に依存する同族組織に見えます。もちろん会議自体が学内組織なので、日大さん出身者が多いことは当たり前といえば当たり前、とはいえ、かなり多様性に欠けます。その他のキャリアを持つ人も、ほぼJR山手線内にある大学の出身者ばかり。関西人目線で茶化して言わせてもらえば、会議の席で『そんなんあきまへんわ』『そやそや』とか関西弁で喋る人なんて絶対いない雰囲気なんだろうなあ、と感じてしまいます。今後のステップとして、日大のどこかの学部の学部長を人選する際、日大出身者にこだわる必要性はないという文化を女性登用と同様に進めることが大切だと感じます。

その3 田中前理事長さんは、権力の専横と様々な不正に手を染めた結果、犯罪(所得税法違反)として認定され、ご自身もそれを認め、その職を辞めることになりました。ただ、田中さんの行なってきた前近代的な禁じ手的な手法というものは、日大さんという巨大組織を統治するという一点でのみで考えれば好都合で良かったんだとも感じます。だから田中さん一派による統治方法によって波風が立たず一定のコントロールが効いた大学経営ができていました。

ところが、過去の過ちを払拭するため登場した林さんは、この手を使えません。会議の前後にちゃんこ鍋をつつきながら人間関係で物事をきめるような手法は卒業したはず。なので、全て決めごとを会議の場において決めるという至極当然の仕組みをハネムーン期間のうちに林さんと現執行部ががんばって作り上げていく必要があると感じます。

金目(かねめ)のお話も是非

ここからは、筆者個人的な提言。もともと田中前理事長が退任することになった原因は日大板橋病院の建替えに関する諸々の不明なお金の使われた方の話が原因。日大さんに限らずどうも私大のお金の使い方(と貰い方)は不明朗なところがとくさんと感じます。巨大私大での大学予算の取りまとめとその執行状況についての見える化と様々な疑念の払拭も新執行部の大きな仕事になります。少なくとも国公立大学であれば、会計検査院だのの定期的な会計監査とみなし公務員としての服務規律がありますが、私立大学の場合は(ゆるめの)監査法人のチェックに依存している状態。困難がつきまとうしんどいことと思いますが、がんばっていただきたいところです。

(たぶん)医学部が変わればきっとほかも変わる

日大医学部の常勤教授の数は50名。そのうち49名が男性。准教授クラスを入れると女性の比率は少し増えますが、それでも完全な男性社会であることに変わりはありません。

※この数値の出典というか情報元は、日大HP。このような数値は、日大のみならず、それぞれの大学のHPから確認できます。日大医学部▷ホーム▷医学部医学科▷教員組織・教員数並びに各教員等に関する情報 

2018年に判明した私大医学部を中心とした不適切な入試方法は多くの人たちを呆れさせました。以下、日大さんのため、話を少し脱線させますが、今もなお、尾を引く医学部の不正入試のお話をまず始めていきます。

東京医大さんはやってはいけないことをしたモデルケース ー反対をすればOKー

一番先に明るみになった東京医大さんなんて、文科省キャリアさんまで参加した非常にわかりやすい裏口入学(理事長・学長はその謝礼を受け取り税務申告漏れ・東京地検特捜部のお世話にもなりました)、さらに女性・多重浪人受験生への差別、入試問題漏洩疑惑等々を引き起こして社会的非難をうけました。これだけボコボコになった東京医大さんなので、今では、その反動?で、女性学長さんががんばっていらっしゃいます。

この医学部の不祥事体質は、私大医学部のほぼ全てにおこっていることですが、その中でも特に、日大医学部を含む首都圏の旧設八医科(私立)大学のガバナンス全体のダメさ加減も露呈しています。

医学部不正入試時の分かりやすい言い訳例(かえって分かりにくいかもしれません)

町奉行所のお白洲の上に引っ立たてられた悪人たちが、遠山様から『左様相違ないな?』と聞かれて『そんなこったぁ~知らんなぁ~、証拠があるんだったら出して見やがれっ!』と居直るので、遠山様が『おいっ悪党!この桜吹雪、見忘れたとは言うせねーぞっ!』の名ぜりふで普通一件落着するものなのですが、一部の大学(聖マリさんとか)は、それでも『そんなこったぁ~いいがかりだぁ~!絶対認めんからなぁ~!』と今でも悪魔の証明理論で否定しているところもあります。

この当時はどこの大学の言い訳のレベルも悲しすぎて、公正に試験をしていますし、改めて何度も調査もしましたが、その結果、受験生した中で(女子受験生の方がいつもバカだったので)たまたま男性の合格者が多くなりましたよ、と説明し(マジメな顔で)逃げ切ろうとしてるんだから情けないの一言。もちろん彼らの行なう試験実施の中では、女性受験者の合格者が多くなるミラクルはなぜか絶対ありません。常に男性受験生はアタマがいいと言い続けられる彼らの自信のすごさ。

この不祥事は、ほんとうに困ったもので、(よく世間で使う言葉的には)最も強い言葉で非難されるべき問題。関係する大学と医学部のネッコの部分の遵法意識が欠如していて悪質性が非常に高いもの。学校教育法・大学設置基準に基づいた大学運営を放棄しているんだから募集停止・大学清算にしてやってもよかった事案。附属病院が地域医療で貢献しているだのコロナ対応で貢献しているだのの言い訳をしても、肝心の医師の養成機関としてはダメダメ。結局、彼らは今になってもあんまり反省していません。そんなにごちゃごちゃ言うんなら紙に起せばいいんだろ、ということで、出願時に縁故・同窓生枠を作っていることもトホホに感じます。(この推薦自体アタマの良い同窓生のご子息なら普通の試験で合格するわけなのでアタマの悪いご子息を別枠で受入れます、いう証左)2018年時の日大さんの場合、校友会(卒業生)からの口利きでの入試で怒られましたが、この手法は結局入学者のレベルを下げることになりお勧めできません。

隠れたポイント ー知っていて沈黙していた受験産業さんたちー

2018年の不祥事がクローズアップされた理由は、文科省キャリアと東京医大幹部との非常に分かりやすい様々な癒着から始まっています。反対に言えば、東京医大さんが大々的に不祥事を起さなければ、今現在も、医学部入試に関する悪行三昧は継続されたいたのかもしれません。

この一連の不祥事って、数値化されていて、調べれば案外バレやすいことだったような気もします。特に受験産業のみなさんは入試傾向の分析をすることは得意ですから、過去からの入試・合格者傾向を追っていけば、特定の大学で、どうも男性より女性の合格率が低いこと、特定の大学では、多重浪人している受験生の合格率が低くなることくらい容易に見いだせていたはず。さらに言えば大学の認証評価機関も同様にチェックする機会はあったはずです。この業界、どうやらお人の悪い方々が多いよう。なんとなくでも気づいているのなら、現実対応として、せめてがんばってる受験生たちに『この医学部誠実そうですが、実は、女性お断りなんですよ』とか『成績良くてもあなたみたいな歳とった浪人生は落されすよ』とかくらい教えてあげても良かったように感じます。

結局、予備校さんや入試評論家さんは、体質的に(保身に走る我が身可愛さもあって)どんな腐った大学でもお客様なので、何か気になることがあっても、その正義感から告発・問題提起のような気の利いたことをすることはしないタイプ人たちであることが認識できました。なお、この人たちは、同時期に阪大であった化学の入試問題の間違いチェックには情熱を燃やしたようにダブルスタンダードがあるのも不思議に感じます。今後大学受験をする人やご家族はこの状況をアタマの中に入れておくほうが良いように感じます。

MEXTの医学部不正入試のポータル 読むと血圧があがりますので閲覧ご注意

www.mext.go.jp

日大医学部で見直すべきところ

(書いてるうちにだんだん腹が立ってきて)私大医学部のお話が長くなってしまいましたが、このような状況を踏まえ、林さんにがんばっていただきたいのは(くどいですが)女性が(せめて)普通に存在できる大学作りとしっかりしたお金の管理が出来る大学をまず進めることが大切だと思います。

その他にも、林さんには、ご近所に私大医学部で参考になる事例がたくさん。例えば、女性は男性よりコミュ力が高いことを理由として入試の得点操作の必要性を普通に説明できる学長さんのいる大学とか、世界ギネス級の100件を超える論文撤回数を誇る研究者のいた大学などなど。要はこんなことをやっている反対をやれば万事必ずうまく行くと思います。

そのためには、まず先述のオトコばかりの教授組織。(ないと思いますが)アメリカやヨーロッパの一流どころの医学部の先生たちが日大医学部を訪問したりなんかされたらびっくりしてしまいます。ここのオトコたちが医学部教授だと言って偉そうに振る舞えるのは日本国内のみであることを早く認識すべき。今後、医学部入学者については多少女性の数は増加するでしょうが、教員組織の改革も喫緊の課題として進める方が良いと思います。生首を切るわけにはいきませんので、急な改革は難しいですが、中長期的な人事計画は早急に実施しないと結果が出ません。

教育・研究・医療にも影響

こんな話、大昔から言われていますが、もう一度復習。特に私大の医学部教員組織は旧陸軍のような状態ですので、講座・医局と呼ばれるところにいる教授先生の存在は絶対。そんな教授をピラミッドの頂点とした組織ですから、正しいか間違っているかという価値観より先に忠誠心により条件反射的になんでもやっちゃう風土が出来上がってしまいます。この風通しの悪さが、医療過誤、研究不正、様々なハラスメントが生じる温床となります。

お仕事にからんでお金をもらわないようにする

心を改めた東京医大さんは、とても参考になる情報を提供してくれます。引用の形はとりませんが、HP上に公開された第三者委員会の報告書にはいろいろあった諸問題のへの提言。これは林さんも必読だと思います。たくさんいろいろ書かれています(ここで書きませんが肝移植問題のお話も興味深いです)が筆者の関心事をとりあえず一つだけ。それは学位審査時の謝礼・謝金のお話。

博士学位取得が一番分かりやすいですいのでそれで説明してみます。博士課程にいる学生は、勉強をして研究をして課程博士の学位の取得ためにがんばります。大学院ですので、授業で単位を取ることよりも、(大学によって多少差違はありますが)入学時から研究指導教員が決まり、その先生のもと一生懸命何でもがんばります。そして最終学年になる頃に博士論文の構想発表があり、次いでかなり完成目前まで進んだ論文(博士予備論文)をを大学(院)に提出。論文審査時には論文審査委員会というものが立ち上がって主査や副査と呼ばれる先生たちが論文をチェック。最終的には博士学位論文というものを提出し、もう一度最終審査をして、教授会の議を経て博士学位論文として認められます(これでもかなり端折(はしょ)って書いたつもり)。

つまり、何が言いたいかと言うと、学位審査を行なう学生は多くの先生たちに論文の内容をみてもらったり、出来上がった論文を審査してもらうことになります。もちろんこのプロセスのお金は全て授業料の中に含まれているのですが、医学部ではそうでもありません。特に主として論文をお忙しいなか指導してくれる先生、論文をお忙しいなか審査してくれる先生には大変ありがたくお世話になるので、気持ちを表わさないといけないという美しい日本文化が生じてきます。つまり、世話に(論文をみてもらう)なる学生は、世話をしてもらう教員へ対価を支払うは当然という文化が蔓延しているということ。それにこんな私立医大へ入っている学生さんですから、大学を卒業するまで数千万払うことを普通に考えているので、論文審査で少なからずお金が動いても気になる出来事ではないのかもしれません。東京医大では過去ずっと行なっていたようですが、今回の不祥事より、HP上に学位審査の時にはお金を渡したりもらったりしちゃダメですよ、の項目が増えることになりました。仮にこれを他のG7諸国の大学でやれば学生も先生も大学業界から即時追放になる重大事件、ですが、筆者個人的には、今でも同じ事をやっている大学は非常に高い確率で多く残っていると思います。

この日本の私大医学部独特の文化は、金目の問題だけでなく、硬直化した教授を頂点とした講座組織、研究不正、医療過誤の発生と多くの病巣を含みます。かなりしんどい取組みにになると思いますが、日大医学部を良くするためにも林さんのがんばりが期待されます。

ついでに、もう一つお金のお話。特に大学病院では患者さんのご家族が主治医に(保険医療機関なのに)山吹色を渡したがるのも日本文化。どんなにご家族がお金をポッケに入れようとされてもまずは毅然と断り、それでもご家族が気が済まないというのなら、大学へ正式な形で寄附をするようにお願いしましょう。

まとめ

多少と言うか、いつも以上に冗長となってしまいましたが、ポイントは、林さんは早くいろいろがんばって結論を出すこと。その結論を出すためには、良き(内外の)ブレインが必要。学内の改革で手強い勢力は医学部であることだと感じます。目安として2022年末までにはいろいろ方向性を提示し、2023年度には、林さん色が見えてくる日大にするようにがんばってもらいたいです。

この元講師さんの凄いところは不正と認定された件数。彼の論文の多くは何らかの不正があったと認定されてしまいました。個人の問題だけでなく不正を許してしまう大学の風土を無くしていかないといけません。

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世界の研究論文の撤回数を中心に取り上げています。日本人もたくさんですが、世界の一流どころの大学でも同様に行なわれていることが分かります

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大学の研究者の研究倫理の基本書 大学の研究者は一度は読まされています。

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