FOU’s blog

日本の大学 今 未来

カナダの大学6 トロント大学University of Toronto etc

トロント大学University of Torontoーカナダ・オンタリオ州の大学

Toronto の空港

TorontoOntario州にあるカナダ最大の都市、オンタリオ湖の西北岸に位置しています。空の玄関口は  Toronto Pearson International Airport。日本からの直行便がありますし周辺のニューヨーク、シカゴあたりからのフライトも多いので米国系のフライトで乗り継いでもそれほど時間のロスはありません。それでもフライトはエアカナダが基本。日本~カナダ間は幾つかルートはありますがエアカナダの日本~TorotoのダイレクトフライトがあるとともにVancouver経由でも便数が多いので時間のロスが少なくてオススメです。

アメリカを経由して出入国する場合

日本からアメリカにつくとトランジットでも入国扱いとなるのでESTAが必要になります。すでに持っている人はOKですが、持っていない人は取得手続きが必要になります。カナダからアメリカへ行く場合、カナダ主要空港内にアメリカのimmigrationがあるので、ESTAを持っていれば、カナダ国内でアメリカ入国手続きが完了します。アメリカ→カナダの際は、アメリカ入国手続きに時間を要したりと多少イライラしますが、カナダ→アメリカは単なるトランジットだけなので慣れればそれほど気になりません。※大学で教員が学生を引率して連れて行くような場合、慣れない学生が出てきそうなので事前の十分なレクが必要になると思います。

空港からダウンタウンなどへ

 従来ならエアポートリムジンがオススメでしたが、現在はUP Expressが一番。基本的には到着するUnion Sta.は大きな駅で近郊都市へ乗り継いで行け、市内なら地下鉄、タクシーなどで目的の宿泊施設などへスムーズに行けます。また、空港内からナイアガラや周辺都市へ向かう長距離バスが出ていますので時間があえば利用価値があります。

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 Downtown, Toronto

Toronto の良いところ・少し困ったところ

Torontoは、カナダ最大の都市、地下鉄、バスで主要箇所に行けます。観光するなら(行ってみる観光地自体は少ないですが)MLBMBAの観戦と多くの博物館見学、コンサートの観賞など北米大都市ならではの楽しみが待っています。また、ナイアガラの滝もバスで数時間で到着可能。印象的にはカナダと言うよりアメリカのどこかの大都市と感じる人が多いと思います。治安も近隣のアメリカの都市と比べても数段安全。ただ、一部時間帯によっては行かない方が良いエリアはあります。また、学生間でも比較的容易に大麻などのドラッグが手に入る環境がありますので、特に中長期滞在する学生・研究者の人は注意が必要です。 

 TorontoとOntario の大学

ざっくりオンタリオ州には日本との交流が盛んな大学が多くあります。イメージ的にはアメリカとの国境に近いところの方が人口密度が高く、そのミドルタウンに主要な大学が置かれている感じ。北方面に行かない限り交通は発達しているので比較的容易にどこへでも行けます。また、Kingston や 首都Ottawa周辺にも大学・研究機関が集まっています。

クイーンズ大学Queen’s University かつて高円宮憲仁親王が学ばれた大学として知られています。

www.queensuca

オタワ大学University of Ottawa 

www.uottawa.ca

【写真】首都Ottawaの議事堂(夏と冬)

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Toronto市内にある総合大学はUniversity of TorontoYork Universityあたりが日本との交流が盛んです。この場ではUniversity of Torontoを考えてみます。

トロント大学University of Toronto 

www.utoronto.ca

 筆者が行ったことがあるのは、トロントのど真ん中に位置するセントジョージSt. Georgeキャンパス。基本的には地下鉄の利用が便利です。雰囲気は(わかりにくいかもしれませんが)典型的な研究型大学院大学のキャンパス。あまり若い学生が大勢行き交う姿はありません。

【写真】あまり日本の大学では見かけない同窓会による記念塔。

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【写真】訪問した研究所(写真は冬季)

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なお、ESLも充実していますので、日本の大学の夏休みあたりに大学から、もしくは学生本人が頑張って自力で英語研修を受けてみるのも良いと思います。中長期の滞在者の人には近くに日本総領事館国際交流基金のオフィスもあるので情報収集が必要な場合役にたちます。

カナダの大学 1 マギル大学 McGill University その1

マギル大学McGill University ーカナダ・ケベック州の大学ーその1

この項では、カナダ東部の大学、基本的には筆者が行ったことがあり、日本との関わりの深そうな大学についてお話してみます。目線としては、留学や語学研修をしてみたい人の参考になればと思います。記載は日本人で英語のみ話す人物を前提にしてお話します。出来るだけ普通の旅行ガイド的にならないようにしてみます。

カナダの大学にももちろん大学評価やランキングというものはあるのですが、日本の大学とは異なり、それぞれの大学で学生や教員の質にトコトン差が出ることはありません。基本的には高等教育は州の仕事になりますのでどこの大学でも最低限の質的保証はなされています。反対に地理的に不利な大学の方が授業料やドミトリーにインセンティブをつけている場合もあるので狙ってみる価値もあります。

筆者の視点ですが、Montrealに滞在していたこともありカナダの話題はQuebec中心になります若干ご留意を。それでは、そのケベック州の大学から始めてみます。

Montreal の大学紹介

Montreal の空港

MontrealQuebecで一番人口の多い街、(気づくことはありませんが)セントローレンス河の巨大な中洲にあります。空の玄関口は Montréal-Pierre Elliott Trudeau International Airport。規模の大きな空港ですが今のところ日本からの直行便がないので近隣の日本からの直行便があるところから乗り継ぎが必要です。フライトはエアカナダが基本。日本~カナダ間は幾つかルートはありますが日本~Toroto~Motrealのルートが一番時間のロスが少なくてオススメです。他にもシカゴやニューヨークも距離的には近いのですがトランジットの際アメリカへの入国が必要になるのが厄介です。なお、エアカナダはVancouver経由でのフライトも提供していますが、大陸の西から東で距離があり過ぎるの(イメージ的にはサンフランシスコ乗り換えでニューヨークへ行く感じ)とフライトの定時制の問題から先に東海岸へひとっ飛びする方が時間はかかりますがらくちんです。

空港からダウンタウン

筆者はタクシーをオススメします。その大きな理由は定額制、市内の主要箇所なら値段は同じ(40CAD程度)。バスで行っても待ち時間や乗り換えの手間を考えるとタクシーならホテルなどの玄関先まで安全に運んでくれます。

なお、カナダのタクシーは至って安全。釣り銭ごまかしや遠回りするドライバーも見かけたことはありません。ただし、Quebecなので移民系の仏語話者が多く英語は片言の人も結構いますが皆さん丁寧に対応してくれます。

Montreal の大学4つ

 Montreal 市内にある大規模大学は、

マギル大学 McGill University https://www.mcgill.ca/

コンコルディア大学  Concordia University https://www.concordia.ca/

モントリオール大学 Université de Montréal https://www.umontreal.ca/

UQAM Université du Québec à Montréal https://uqam.ca/

MontrealQuebecにある都市。州法により仏語が原則優先されるのですが、過去の様々な経緯で英語の使用が認められる大学があります。その代表がMcGill University、カナダで三指に入る世界的にも評価の高い大学です。また、日本の大学との交流も盛んに行われています。

次にUniversité de Montréal フランス本国外で最大の仏語で授業を行う大学として知られています。こちらも日本の大学とは研究を中心とした国際交流は良く行われています。※日本からの視線では、英語系大学を中心にみてしまい、日陰がちになりますがこちらもTHEで100番以内に入る大学です。筆者がいた時には、ここの大学図書館に日本の国立国会図書館から派遣された職員の方が長期研修をされていました。図書自体が仏語文献中心なのでかなりの知識と専門性がないとキツイところだったと思います。

その他、Université du Québec à Montréal (UQAM)は、州内の仏語話者向け、Concordia Universityは、英語系で留学生も多いのですが、職能系(移民の人たちへの資格取得など)の色彩が強く、どちらも日本の大学との関わりは強くありません。

さらに留学できます

Quebecで交換留学生ではなくフルタイムの学生をしていたらさらに留学出来る機会があります。筆者がいたころはCREPUQプログラムと呼ばれていたケベック州とヨーロッパのフランス語圏の国を中心とした学生交換プログラム。現在も形を変えて行われています。日本は蚊帳の外ですが、欧州ではエラスムスのプログラムが増えてきて欧州域外との学生・研究者との人的交流が盛んになっています。興味のある人は自分のいる大学のStudent Exchangeの窓口に行ってみると良いと思います。https://www.bci-qc.ca/en/ 20201026追記

 

【写真】一例ですが、英語系大学以外では州法の関係で英語表記を行いません。

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Montreal の良いところ

カナダ全般に言えることですが、一番感じるのが治安の良さ。イメージ的には日本と同じ感覚で生活できます。市内は地下鉄(Metro)が網羅されていて行きたいところへ不自由なく行けることもメリット。筆者は一年滞在した中で、その経験上、治安上の危険な思いをしたことは皆無、また、アジア系人種として差別感を感じたことも同様にありませんでした。

また、食文化の多様性も他のカナダと大きく異なるところで、比較的安価においしい食事を楽しめます。  

【写真】 Eggspectation1

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 【写真】Eggspectation2

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 Eggspectation https://www.eggspectation.ca/maisonneuve/

Boulevard de Maisonneuve Ousetにあるお店。McGill Universityからもほど近い観光エリアにあり、朝から夕方まで賑わっています。わぁわぁした雰囲気ですが気楽におなかいっぱいになれ使いやすいお店です。

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Sakura  https://sakuragardens.com/

(筆者的には)日本人がおいしく楽しめる日本料理のお店。HPが多少エキゾチックになりましたが日系カナダ人の人たちを中心にしたスタッフがお料理を出してくれます。筆者滞在時は在モントリオール日本総領事館御用達のお店でした。

【写真】ある日のランチメニュー

 

 

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京都市立芸術大学と京都芸術大学の呼称について英語も含めて考えてみる

 先に阪大と大阪公立大学の英語呼称の話を書きましたが、こちらは京都にある芸術系大学の名称使用に関する大阪地裁判決。

芸術系の大学について、筆者個人的にはなじみが少ないのですが、一度沖縄県立芸術大学に行って三線を中心とした琉球文化を研究する外国人研究者へのインタヴューを行った記憶があります。多くの芸術系大学は総合大学の中に位置しないで独自展開しているので、大学業界の中でも、知っている人は知っている、知らない人は~の世界観を感じてしまいます。

2019年、京都造形芸術大学が開学30年に合わせて京都芸術大学に名称変更するとに対し京都市立芸術大学が、類似名称の使用を差し止めを求めましたが、結局は裁判となり、その判決がでました。判決的には区別がつくとのことで京都芸術大学が(一審レベルですが)この名称を今後も使ってかまわないとのこと。その根拠となる言葉が市立でそれ以外の京都芸術大学は日常ありふれた言葉で他大学との識別のための重要部分とは言えないという見解。

この判決にについて、筆者個人的な考えは、今回の裁判官の法解釈的はそれはそうなんですが、実際の同じ京都エリアにあって市立という言葉以外同じ大学が二つあることについては、必ず混乱が生じるので現実的に見分けがつくようにしてもらいたく感じます。ですから、判決内容的には?で納得できない部分があるので、市立芸大側はその辺を突いて改めて高裁へ持っていけば違う判決がでるかもしれません。

この判決を英語名称にあてはめてみる

なお、今回の判決は日本語表記についてのもの。それでも、とりあえず判決がでましたので、その判決の趣旨に則り英語の大学名を考えてみます。

京都芸術大学さんは、Kyoto University of the Arts

(旧名 Kyoto University of Art and Design) 

京都市立芸術大学さんは、Kyoto City University of Arts

と、いうことで、市立を表すCity 部分を除けば、定冠詞theを付ける付けないの違いはありますが、旧名にあったDesignが無くなり類似性は高まったと言えます。

それでも(良いか悪いかは別として)今回の判決による表記運用ルールでいくと、両大学ともに用いている、Kyoto・Univerisity・Arts については、日常ありふれた言葉なのでどちらも利用OK、そして両者を識別できるキーとなる City 京都市立芸術大学さんには入っているので、日本語表記同様見分けがつくということ。ですから両英語表記はそのまま使ってかまわないことになります。(筆者解釈)

この解釈を他の事例 "University of Osaka" に当てはめてみる

現在、大阪大学が新大学・大阪公立大学に強く変更を求めているUniversity of Osakaについて考えてみると、日本語表記なら、大阪大学と大阪公立大学は、識別に用いられる重要部分公立がちゃんと入っていますので十分に区別は可能で問題なし。

英語表記について、後出し側の大阪公立大学が新たに主張しているUniversity of Osakaについては、識別に用いられる重要部分Public etcに相当する記載が無いのでルール違反?となるの可能性が生じます。(筆者解釈)

蛇足で、今回の判決は大阪地裁から出ていますので、仮に阪大が同様に訴えるとすれば同じ管轄となる大阪地裁に同じ根拠で主張をしてみたら有利に働くかもしれません。

それでもやはり類似性は良くない

京都芸術大学さんって、筆者的には、テレビでコメンテーター教授を多く輩出したり独自な文化活動を行ったりと個性的な営業方針でその存在価値を高めてきたという印象があります。そして今回も多分他の大学なら躊躇するような名称変更をトライして裁判所からも認められたのだと感じます。

それはそれで結構なことなのですが、現実的に似たような名前の大学が増えていくことは日本国内はもとより海外においても混乱が生じかねません。阪大・大阪公立大学間同様(思ったより)大学同志では調整能力が無いことが分かってきましたので、そろそろ文科省さんが重い腰を上げる時期に来ているのではと感じます。

 

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構造と力―記号論を超えて

構造と力―記号論を超えて

  • 作者:浅田 彰
  • 発売日: 1983/09/10
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

University of Osaka と蟷螂之斧(とうろうのおの)の意味合いについて考えてみる

2022年4月に大阪府立大学大阪市立大学が一法人一大学化することに伴い新大学の名称発表が行われました(令和2年6月)。新大学の日本語名称は『大阪公立大学』そして英語名称がUniversity of Osakaに決定。これに敏感に反応したのが大阪大学。本発表後1月余りの間に計4回(第4報)大学HP上で英語の名称変更を求めるとともに新法人が特許庁へ出願している新法人側のUniversity of Osakaの商標登録を認めないための情報登録制度を用いて(膨大な)資料提出を行っています。しかしながら大阪公立大学側からは(正面からの説明は行わず)基本的に無視をし続けています。何人かの友人が阪大側にいて彼らのコメント「JAROに訴えてやる!」(事務職員(もちろん冗談))、「これからどうするつもりですかね」(教授・自然科学系)のような感じ。特に国際畑を中心に仕事をしてきた筆者個人的としては阪大側の主張が100%正しいと思うのと大阪公立大側がなぜこの(トラブル必至の)名称を選択したのかその大学としてのガバナンスが気になります。 

新大学が言うUniversity of Osakaを使って良い理由

以前より、同じ都府県内に、国立大学○▲University・公立大University of ○▲という住み分けで英語名称を用いている大学があり、それが問題になっていない。(事例をあげると、高知大×高知県立大、長崎大×長崎県立大etc)。

阪大側からの指摘があった以降も、世間をお騒がせしているが「この名称を使う資格がある」「今後の新大学の発展により理解される」「海外での周知を徹底する」等のつぶやき程度、正面切って阪大へは説明はしていません。

確かに他にも類似例がいくつかあるのは事実で、それはそのとおりなのですが、だからと言って敢えて混乱を招く名称を選ぶ必要があるのかが疑問。その他の事例も含めて、これらの大学の存在がドメスティックで英語名称はお飾りに過ぎなかったことが大きな理由と思えます。

今回の場合、指定国立大学法人に採択され、国際協働(国際共著論文の数・留学生政策の充実etc)に真剣に力を入れている阪大側にとってはこんなこと(こんなレベルで)で国際化の足を引っ張ってもらいたくないというのは本音だと思えます。 

阪大が言う類似名称の弊害はたくさん 

その1 日本の英語教育のたまもの?

阪大の主張の一つに、海外では、Osaka University も University of Osakaも同じ(とみられる)というものがあります。英語が母語となる海外諸国では微妙に二つの表現を使い分けている事例もありますが、特に欧州言語が母語でない国(例えば日本)の者からするとよく理解できません。

参考になりそうな事例として、筆者が訪問した経験のあるカナダ・オンタリオ州の名門University of Toronto(正式英名称)は、検索エンジンToronto University を入れてもUniversity of Torontoに普通にたどり着きます。ただ、Toronto University の事例と異なり、ひっくり返すと異なる大学になる場合もなくはありません。このような日本の知識・価値観で、運用が難解な英語圏では行われて事例を参考としてまでこの表現を選ばなくても、と感じ、それは阪大だけでなく自分自身のためにもなりそうです。

そして、今の状況。様々な検索エンジンに、University of Osakaと入れてもOsaka University (つまり大阪大学)に行き着きます。その中で,、新たにそして突然同業他社のUniversity of Osaka (大阪公立大学)が割り込んでくるのですから、まず阪大は迷惑必至、そして言い出しっぺの新大学もことある毎に「大阪にはもう一つ大学がありまして…」を説明を行う必要が出てきます。

「表現が違うから大丈夫」的な発想を思いついてしまうのは、ネイティブの英語話者を用いずに初等中等高等教育に至るまで文法中心の英語教育を行う日本独特の英語文化がそうさせるのかもしれません。 

その2 英語以外の言語だとさらに混乱

以上が英語で表現する場合の状況。他の言語ではさらに区別がつかない場合も生じてきます。フランス語など他の言語表記ならさらに区別がつかなくなるようです。

例えば、筆者の訪問した経験のあるカナダ・ケベック州(仏語圏)にあるMcGill University(英語系大学)。仏語表記にするとUniversité McGillとなります。仮に英語名称がUniversity of McGill という表現をしても(仏語文法上)仏語の表記に代替表現はありませんからUniversité McGillで同じになります。(カナダは多文化・多言語主義の国ですから、自然と英語表記・仏語表記の使い分けが行われるので個別事例としてのに解釈を求めるのには苦労がいります)。

同様の表現をする言語はラテン系が多いようですが、そのような諸国の人たちに日本国内で今回のいきさつ話しても納得してもらうのは困難。また多くの英語が母国語でない諸国の人たちは、英語の表記からもう一度自国言語に変換するとなると、もう何が何だかの世界になります。新大学は、これら海外との大学間とのやりとりだけでなく、VISA取得上の渡航先名称に関わるので、各国出入国管理部門の人にも丁寧に説明していく仕事も必要になりそうです。 

その3 海外での公的認証

仏語の続きのお話で、少し専門的な話になりますが、仏語圏などの在外日本公館(例えば在仏・在加公館)でのアポスティーの作業(大学関係なら大学間との公的文書の授受など)でもめんどくさくなるかもしれません。新大学はこのような英語名称の説明をするための作業は産みの苦しみとしてがんばるのも一つですが、全く関係のない阪大側もいろいろなところで「最近似たような名前の大学が近所にできまして~」をやらなくてはなりません。このことは(自分で蒔いた種ですから)新大学側も真摯に阪大とともに協力して対応する必要が生じてきます。 

その4 国際学術誌への投稿

特にこのことが阪大がいらだつことだと思います。日本の研究型大学院大学(旧七帝や東工大など)の研究者はNatureScience を代表する国際学術誌に研究成果を投稿して世界的な評価を得ることが大きな目標として日々の研究活動を進めています。投稿時には当然「どこそこの誰」を英語表記で入れるわけで、そんな中に新たに似た名称の大学が割り込んでこられるのは非常に迷惑な話。同様に国際的な場面で活躍している現大阪市大、大阪府大の研究者たちも新たな説明責任を抱え込むことになります。

 

新大学の意志決定過程が気になる

この名称を決めた新大学名称検討委員会(新法人HP)。2020年4月頃から複数回会議を開催し3候補に絞りこみ6月26日に府知事、市長、法人理事長の三者で最終決定の流れ。この検討委員(6名)の構成は、大阪府副知事、大阪市副市長、新法人経営部門から1名、法人理事長(市大医卒)、市大学長(市大医卒)、府大学長(阪大工卒!)で構成。なお、この構成員6名に女性はゼロ、特に命名には女性目線は必要ないようです。

さらにその下には優秀な府職員と市職員からなる事務部門が法人本部を支えています。まず、委員会構成員の中で気づくのは、そのうち3名は大学教授としてキャリアがあること。(多分)英文の学位論文の審査したり海外のジャーナルへの投稿に関わったくらいの経験はあるはず。まして委員の一人である府大の学長は阪大工卒のキャリア。これらをみても、少なくとも構成員の半数が大学事情に精通している(はず)の人たちがUniversity of Osaka を選ぶと、国内外からどのような反響が出るかについて想像力に欠けていること、その後の阪大側からの主張にも明確(法人HPトップに「本法人の考え方」等を示す程度)な反証は行われていないこと。これは所謂目に見えない同調圧力がこの組織が支配されているとしか思えません。その割にこの英語名称だけは商標登録をちゃっかりしていたりしていて、この「指定国立大阪大学」に一方的にけんかを売る対応を眺めるにつけても大学の危機管理や所謂CSRが出来ていないと筆者は感じます。 

 設置審査にも良いことは…

新大学は未だ設置審査の途上。令和2年10月末までに最終的な設置構想の書類を文科省へ提出することになります。このような大事な時期に波風を立てたままだと、文科省の担当者から(彼らは模様ながめで変えろとは言いませんが)、「阪大側から英語名称に指摘がでてますが大丈夫ですね?今後何か問題が生じれば貴学で適切に対応してくださいね」等々とやんわり釘を刺されるのことは必定だと感じます。 

敬意なき相場観

新大学の今回の対応、同様の行動を、東大、京大に行ったのか?筆者はそうは思えません。阪大(程度)だから(これくらい行ってもいい)という彼ら独自の相場観を感じられます。

新大学は、統合効果で大学規模が国公立で3位(入学定員・近畿圏なら神戸大に匹敵)になるとのコメント(各HPでの広報関係etc)を入れています、が、こちらはあくまで学部レベルでの話、大学院レベルの学生数や研究力は大きく劣ります。阪大側の説明(第3報)のとおり新大学に統合されたにしても、留学生数、科研費の採択件数などは阪大とはダブルスコアはおろかトリプルスコア、関西で言えば学生数は同程度になる神戸大学と比較してもその差は歴然、特に科研費千葉大学岡山大学が当面のライバルの状況。新大学になっても現実的には研究力・国際力の面では阪大・神大にすら遠く及びません。 

もともと今回の新大学構想の根っこは地方の政治力で地方公共団体が2つの大学をもつ経済負担が大きいから、という『コストカットをやってしまえ』が主たる目的。統合当初は一時的にキャンパス移転等で予算がつき所謂見栄えするハコモノできるでしょうが、大阪府・市よりの継続的な経済支援を得て大きく飛躍する素地は見当たりません。自分たちは国立大の連中に負けていないという気概はあるのでしょうがその差は歴然という状況分析を冷静に行う必要があります。 

新大学側が気づかないといけないことは、今対立している相手が指定国立大ということ。そもそも設置趣旨や予算規模が大きく異なる大学(阪大)と不毛な対立をするのではなく自分の立ち位置でより良い大学にしていくことが重要。大阪の狭い中で紛糾していても首都圏その他の地域の人たちは冷めた目しかみてくれないし設立前の新大学の評判を傷つけるばかりです。

筆者としては、対立より協調をして、多少古くさい言葉になりますが、ONE大阪となって両大学が地域を盛り上げて行くという進め方が多くの人たちからの賛同と支援が得られると感じます。

 

阪大側はオトナの対応

今回阪大は「被害者側」になりますが、自大学のHPと文書の送付(と思われる)などによりエビデンスを積み上げながら主張することは、自制が効き大学らしくて好感を持てます。 また、このような大学で突然起こる想定外の危機管理についても(多分)新大学よりも場慣れしている印象も感じます。(半分嫌みになるかもしれませんが多くの不祥事が日常茶飯に起こることが今回は幸いとしているとも感じます。)

だいたい旧7帝規模の国立大学になると文科省キャリアの人が出向しています。
現在法人理事(阪大HP)で在職しているNさんのキャリアをみていると、若いころは学術国際局、研究振興局、そして途中から文科省の国際関係の部門を中心に進み、在米日本大使館参事官、国連代表部公使、阪大にくる直前は文化庁長官官房国際課長、文科省大臣官房国際課長を歴任しています。筆者の見る限り、ここ十年は文科省の中でも仕事のできる国際通でやってきたキャリアの人。当然阪大内ではこの英語名称問題についても大きな影響力をもち、文科省への情報発信力も大きなものがあります。(ときとして大学へ流れてくる文科省キャリアは?の人も来るのですが、今回の騒動のさなか、阪大にとっては非常にラッキーな人が来てくれています)

片や新大学、霞ヶ関文科省にパイプがあるわけでもなく「他にも事例がある」「名乗る資格がある」云々レベルの申し訳でエビデンスてんこ盛りの阪大からの指摘からUniversity of Osaka の正当性を説明するのはかなりしんどそう。仮にがんばりとおしたとしても多くのしこりを残してしまいそうです。


考えられる英文名称

今のところ新大学側は、名称変更の意思を示していませんが、(何か見えない圧で)急に(あっさり)新ネームを発表することも無いではありません。筆者はその事例を幾つかを考えてみます。
基本的にはPublicを入れるのが一番妥当。Public University of Osaka もしくはOsaka Public University を用いれば新大学の有り様をよく理解できると思います。
次いでMetoropolitan。首都の意味ではなく漠然と大都市にある的なイメージでOsaka Metropolitan University あたりも良いイメージを感じます。
個人的にはFree University of Osaka。ベルリン自由大学からの連想ですが、律儀に英文大学名はそのまま日本名称から直訳する必要もありません。
戦前期よりドイツの都市型大学をモデルに大阪市大が作れたこと、滝川事件に由来する自由とのつながりや理念を連想させるなど誇らしく気品があり、最初は取っつきにくいかもしれませんが、中長期的には日本国内でも海外でもおぼえてもらいやすい名前ではないかと思います。なお、この名称の大学は欧州域内に少なくとも3大学あるようです。日本では高等教育機関としては使用している大学はありません。

それでもUniversity of OsakaでがんばるというならOsaka University(OU)University of Osaka(OPU)等の記載で常に略称を入れ表現するしかないと思います。

ついでに良い機会なので日本の大学の英語名称も考え直してみる

新大学がよりどころでとしている同一地域にある類似英語名称(高知大学高知県立大学etc)の交通整理もやっておいた方が良いと感じます。公立大であれば基本としてPublic Prefecture、Cityをいれるか、例外的に他と大学と明白に区別がつく独創的名称なら認める等、公立大学協会あたりが音頭をとればそれほど難しくはないと感じます。また、Tokyo、Osaka、Kyotoなど、それぞれ10を超える地名を冠した紛らわしい大学名についても、海外目線を意識して新名称を模索する方がそれぞれの大学にとって知名度があがると思います。このような知名度アップの事例として、名称変更を行った意味合いは異なりますが、近畿大学さんのKinki University→Kindai University がよい事例になると思います。

結局、今回の騒動は、日本には英語による大学名称を大事にしない国際化が未熟な大学がたくさんあることを世界に知らしめてしまったようです。 

結び

新たに大きな公立大学が生まれるのという本来祝うべき時期に、21世紀に入って20年もたっているこの時代に、こんなレベルの論争と対立が行われていることにショックを感じました。同時に、日本の大学の英語の運用能力がこの程度であること海外にさらしてしまったこともかなりショック。日本の大学の国際化はこの程度のもの。特にこれから大学で学びたい人、大学の事務職員で働く皆さんもこの現実を覚えておくほうが良いと思います。

 

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世界大学めぐりーはじめにー

筆者は、大学職員生活の中で、海外とつながりを持つ仕事に長くついてきました。その中には1年間の海外の大学での実務経験もあったりします。今でも、国立大学では、人気のある庶務系や人事系、経理系の部門と違って『国際』系の職員は、組織化されにくく、人材不足でマイノリティな状況。そんな部門で働いてきたこれまでの経験を備忘録的に書くようにしてみます。流れとしては、北米、中国(と台湾)、タイ、ヨーロッパなどの大学やその状況を紹介、特にカナダのボリュームは多めになります。

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Campanile (Sather Tower)@University of California-Berkeley

 

兵庫県立大学と神戸市外国語大学&神戸市看護大学 阪神間公立大学ぶらり歩き その3

兵庫県立大学 http://www.u-hyogo.ac.jp/

基本的には、平成16年に神戸商科大学(神戸)、姫路工業大学(姫路)、兵庫県立看護大学(明石)の県立3大学が、統合され一公立大学法人となったことが由来。学部については、当初のままの場所で現在に至っていますが、専門性の高い小規模独立大学院が各所にできているのが最近の大きな特色。兵庫県という場所は、神戸と大阪に接するエリアと、それ以外に姫路を中心とした中播磨エリア、淡路島、日本海側までと思った以上に広大。大学施設の多くは、神戸市から播磨エリアに広がります。一つの大学にはなりましたが、あまりにそれぞれが離れているので、学部レベルでの学びではキャンパスを行き来し講義を受けるような機会は多くありません。そのため学部を受験しようとするひとは、それぞれ西神戸・明石エリアと中播磨エリアとをわけて大学をイメージした方が良いと思います。基本的にはどこも地味目な存在ですが、周辺に優れた理研なのどの他機関の施設がくっついているので学びを求めるひとには魅力になると思います。  筆者の感じるこの大学の事務系常勤職員は、部課長級から現場まで大多数が県庁の人事ローテーションの中の存在。具体には他の県機関(病院や出先事務所など)からやってきて、数年大学の仕事をしてまた大学の仕事から離れて異なる県の仕事につきます。また、キャンパスもそれぞれが離れていることも影響し、法人化後も大学の仕事を専門とする職員養成自体も他の公立大学よりも遅れています。一般の事務はそれなりに回るでしょうが、専門的な学務や外部資金関係のできる大学専属の常勤職員の養成は必要に(筆者は)感じます。そんな事情もあって実際の現場は、(どこもそうですが)低価格で3年雇用されている非常勤職員の頑張りで大学事務部が維持されている状況。そのようなところで働く県からきた常勤職員たちは、幹部も含めてのんびりモード、何かのイベントでも無いかぎり男性もノーネクタイ、夏はポロシャツが主流でお仕事をしています。

少しぶらり歩きから外れますが

 良いか悪いかの評価は別として、国立大学(法人)においては、職員に対して昇任人事をからめた他国立大学・高専文科省への出向、異動官職と呼ばれる主として課長級職員を中心とした国立大学間の異動システムなど、(とりあえず)多くの職員が複数の大学をいったりきたり普通にしています。また、旧帝大クラスの大学なら文科省から出向してきてるキャリアが一人や二人必ずいます。このような様々な人事交流でできたネットワークのおかげで、入試のトラブルであったり、外部資金の不適切な取り扱いであったり、各種ハラスメントへの対応などのトラブルが生じた場合、他の国立大学事務部に『そちらではどんなふうにやってますか』などの相談が気楽にできたり、深刻な問題であれば『それは先に文科省に一声かけておいた方がいいんじゃない』的な判断もつきやすくなります。私大も含めてですが、内向きになりがちな公立大学さんでもなんらかの仕掛けを作って他の大学の事務部との(公式・非公式での)交流を増やすことは、大学運営上有意義なことだと感じます。

兵庫商科キャンパスと明石看護キャンパス
神戸市営地下鉄学園都市駅』からすぐ。旧兵庫商科大学のあったところに大学本部と旧兵庫商科大学(旧商経学部系)のキャンパスがあります。この場所は、神戸の中心三宮エリアから地下鉄で22分くらい。となりの『総合運動公園駅』には、オリックスバファローズの『ほっともっとフィールド神戸』やきれいな運動競技場などもあったります。このキャンパスのある神戸市西区は、学生が、大阪方面からはわざわざ授業をうけにいくにはしんどい場所、基本的には兵庫県内に居住する学生が中心となって学ぶことになります。                                

一方明石看護キャンパスは、新快速の停車するJR『明石駅』が最寄り駅。明石城は、天守閣の無いお堀だけのお城なのですが、なかなか良い雰囲気。特に桜のシーズンは多くの人がお城周辺の公園にあつまります。また、駅南側には、明石名物として有名な明石鯛や大阪のたこ焼きとはちょっと違うスタイルの明石焼きのお店があったりします。また、天気が良ければ海沿いから明石海峡大橋をきれいにみることもできます。明石看護キャンパスは、そんな『明石駅』から神姫バスで10分ほど。見ればすぐ推測できる有名建築家が設計した、夏暑く、冬冷え冷えするコンクリートの打ちっぱなし校舎が出迎えてくれます。また、キャンパスの東隣には県立がんセンターがあり歩いて数分で看護関係の実習に行くことも可能です。電車の最寄り駅は全く異なりますが、直線距離では兵庫商科キャンパスと近く、兵庫商科キャンパスへ共通教育科目の履修に行くことが可能、授業のあるときだけキャンパス間(有料)バスが行き来しています。

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キャンパス内にはえてきたキノコ(明石看護キャンパス)

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5月は鯉のぼりを掲揚(明石看護キャンパス)

神戸防災キャンパス 減災復興政策研究科
神戸市東部の再開発施設HAT神戸の中にあります。HAT神戸へ行くには、(長くても6両編成の)阪神電車岩屋駅から徒歩、もしくは三宮方面から市バスで向かうことも可能。海からの風を感じるベイエリアと言えばカッコいいのですが、立地的にはちょっと外れたところ。この場所には、阪神淡路大震災を機に地震を中心とした防災をキーワードとした機関が集結。人と防災未来センター、WHO神戸センター、JICA関西などの施設が集まり国際性にも富んだ中で防災に関する情報発信と研究が行われています。これら施設群の中に大学院減災復興研究科も設置。独立研究科で大学受験生や学部学生には関わりが薄いですが、特化された専門性の高い大学院でもありますのでその存在を覚えておいても良いかもしれません。

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人と防災未来センターHAT神戸内)

神戸情報科学キャンパス シミュレーション学研究科・応用情報科学研究科
神戸の中心三宮駅から、ポートライナーと呼ばれる無人のトラムでポートアイランド(人工島)へ。車両は小さめ、無人運転、一番前の車両には運転席部分がありませんので前方がよく見え楽しい気分になります。最寄駅の名は、『京コンピュター前』駅。到着するとたくさんの人が乗り降りする駅だなあ、と感じるかもしれませんが、圧倒的多数の人は、すぐお隣にある、いろんな鳥や動物と身近に接することができてとても楽しい『神戸どうぶつ王国』へ行く人たち。ちなみにその次の駅は、終着駅『神戸空港駅』です。
キャンパスのあるポートアイランドという場所は、1980年代には、豪華ホテルだの遊園地だのがあって活気あふれる街でしたが、徐々に衰退、さらに1995年には、阪神淡路大震災の影響で甚大な被害を受けてしまいます。これ以降(遊びにいくには)つまらない時代が続いていましたが、(広大な空き地に)複数の大学施設の誘致し、昼間島内人口は増加、場所によっては活気がもどりつつあります。さらに(しつこく)新たに埋め立てた南部分には、(飛行機があまり飛んでいない)神戸空港もできあがりました。
ただ、それでも港湾施設を除けばまだまだ空き地だらけで見晴らしが良い状態になっています。神戸市としてもせっかくこれだけ埋め立てたのですから何かに使わなければいけません。そのあたりは、昔から『株式会社神戸市』といわれた商売上手な地方公共団体。様々な企画立案と経営手腕により、旧ポートピアランドの空き地にはIKEAさんができたり、高度医療施設(群)を誘致、さらに島の南部分にやってきたのが理研理化学研究所)の二大施設。理研は、なんとなく関西圏に住んでいるとなじみが薄いのですが、このポートアイランドには、スーパーコンピュータ『京』を中心とした施設『計算科学研究センター』と、研究論文プラスアルファのことで世間を賑わせた生命機能系の研究施設『生命機能科学研究センター』があり、総称して神戸研究所と呼ばれています。これら理研施設とくっつく形で神戸大や兵庫県立大の二つの研究科が設置されました。どちらも小規模な自然科学系の独立研究科としてデザインされているので知名度は低いですが、理研の高度な研究施設と隣接していていることは強み。関係する分野に興味のあるひとは、覚えておくと良いと思います。

姫路工学キャンパスと姫路環境人間キャンパスと播磨理学キャンパス
それぞれ独立したキャンパス。阪神間に住む(筆者のような)ひとの地理感では、みんないっしょに感じますがそれぞれ微妙に離れています。このエリアの施設は、公立大学法人化する前に設置されていた旧県立姫路工業大学を起源として発展して現在に至っています。                                  

大阪を起点に考えると、このエリアで一番近いのは、姫路環境人間キャンパス。こちらは、JR新快速で『姫路駅』まで約1時間、あとは、電車を降りて駅前のバスに乗り姫路城をながめながら15分程度。次に近いのが姫路工学キャンパスですが、こちらはバスで25分を要します。さらに播磨理学キャンパスは、最寄り駅が岡山県がもう間近な『相生駅』、JR大阪駅から在来線で1時間半かかり、さらにそこからバスで45分。電車通学は、絶望的な場所になります。そんなローカル色を払拭するのが、『SPring-8』と『SACLA』の存在。兵庫県が中心となり、播磨科学公園都市と呼ばれる学術研究エリアの誘致に成功、その中に、1997年理研が中心となり供用が開始された巨大な放射光施設『SPring-8』、近年供用が開始されたX線自由電子レーザー(非常に強いX線レーザーで原子・分子レベルを観察する)施設『SACLA』は、世界的にも知られた研究拠点となっています。(多少理研施設の紹介になりつつありますが)この研究エリアに理学部と理学系2研究科、それに附置研に相当する『高度産業科学技術研究所』があります。学部レベルでは、直接『SPring-8』の施設を用いて何かすることはないと思いますが、間近でこのような施設を見ることができるだけでも学びのモチベーションには必ず貢献しそうです。

 

神戸市外国語大学神戸市看護大学                      

神戸市が設置している大学は、外国語系と看護系の2大学。両大学は、神戸市が開発した神戸研究学園都市(神戸市西区)の一角にあり、同地区には、兵庫県立大(神戸商科キャンパス)、さらに流通経済大学などの私立大や高専まで、いろいろな教育機関が集まっています。(個人的には)昔は大学が一杯あってとてもとても華やかなイメージを感じた一角でしたが、徐々に良く言えば歳月を重ねて落ち着いた雰囲気になってきた場所です。

神戸市外国語大学 http://www.kobe-cufs.ac.jp/                   

公立大学唯一の外国語大学であることが大きな特色。地下鉄『学園都市駅』下車南側すぐ。落ち着いた(というか閑散とした)雰囲気の中にキャンパスがあります。この外大の興味深いところは、提供する外国語の構成。英語、中国語、ロシア語、スペイン語という4言語により外国語教育を提供しています。
多分、過去からの経緯があって今のような外国語科目の提供となったのでしょうが、(筆者なりのイメージでは)G7言語のフランス語やドイツ、イタリア語、それにアジア系言語(タイ、ベトナム語とか)、そして中東系言語があってもいいのになあ、と感じます。また、入学定員は。英語系で140名程度、残り3言語は40~50名程度、他に国際学科(言語+国際性を学べる)もありますが、全ての分野で学生/教員比はかなり高め、基本的に『良くも悪くも』少人数制が行き届いています。『良くも悪くも』とした理由は、大学規模の小ささ。学生数は、特色のある二部(夜間)と大学院を含めても2000名少々。神戸市という地方公共団体が出資母体になり、(良い意味でわざわざ)外国語の高等教育を提供することは、独自性があって良い試みと感じます。しかし、(公立大学の)小規模大学であるがゆえに、共通教育系科目でも専門教育の中でも、自前のスタッフを揃え、継続的に多様性のある質の高い学び提供することは、人的にもコスト面でも普通の大学以上に大きな負担を感じます。それなら(いっそのこと)発展的に近隣大学(特に神戸大学)との連携や統合を行うことは、双方の大学も在籍する学生もみんながwinwinになれて良い気がします。神戸大学の立場(推測)としても『外国語学部』の編入(阪大と大阪外大とがいっしょになったイメージ)は、メリットを感じるでしょうし、この次に紹介する神戸市看護大学についても、神大医学部にくっついている看護系分野と統合すれば、発展的に『神戸大学看護学部』に格上げすることができ、教育・研究レベルの向上が期待できます。
神戸大学側にとっても大阪市大と大阪府大の法人統合は、人ごとではなく(推測)、大学の基盤強化は必須、多くの大学を巻き込む再編がおこれば関西圏の大学業界も盛り上がると思います。

神戸市看護大学 https://www.kobe-ccn.ac.jp/
こちらは神戸市国語大学と地下鉄『学園都市駅』をはさんで北西の位置。建物自体はゴージャス感がありますが、多少人影は少なく寂しい雰囲気。それでも近隣にある兵庫県立大学看護学部(旧兵庫県立看護大学)とともに、大学院まで学べる看護系単科大学です。選択肢の多いエリアにある看護学部ですが筆者が感じるこの大学の魅力はやはり神戸市が作った大学であること。質の高い市民病院を複数有する神戸市なので病院実習の際は強みとなりそうです。看護系の大学は、小規模でもがんばっているところがたくさんあり、こちらも問題なく(現状維持の)大学経営は可能だと思いますが、今後の様々な社会情勢を考えると、上述のとおり、(健全な大学経営が行われているうちに)他大学との連携・統合で新しい姿を見せてもらえると(神戸市民の筆者は)うれしいです。

この項 了

 

大阪府立大学 阪神間公立大学ぶらり歩き その2 

大阪府立大学 http://www.osakafu-u.ac.jp/ 

府立登美丘高校仁徳天皇陵
こちらは大阪中心部からだと南海電車なんば駅からが基本。最近の南海電車は、インバウンドの影響もあって、関空と和歌山方面へ向かう南海本線が話題の中心ですが、こちらは、世界遺産高野山とを結ぶその名のとおりの高野線を利用します。最寄駅は、『白鷺(しらさぎ)駅』か『中百舌鳥(なかもず)駅』の両駅。ちょうど2つの駅の中間くらいにメインキャンパスがあります。大阪市大同様、最寄駅は、どちらもローカル感いっぱいのたたずまい。
この大学周辺の名所は、昔の教科書では仁徳天皇陵と呼ばれていた大仙陵古墳を中心とした百舌鳥古墳群、全国的には名前の知られていないたくさんの前方後円墳を見ることができます。また、近年、キレッキレのダンスで知名度が全国区になった大阪府登美丘高校さんもご近所です。
二つの駅から最寄り駅からキャンパスへは、どちらからでも下町情緒あふれる狭い道を歩いて10分程度。10年くらい前に2度ほど訪問する機会があった際の印象は、(学部よって)建物がボロボロ。特に社会科学系の先生とお話をした際、「何年も前から改築計画があるんだが全然進まない」との泣きをお聞きしました。
それが2年ほど前、改めて訪問した際には、キャンパス整備が済んだようで、(とりあえず外観は)全体的にとても綺麗になっています。

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大阪府立大学中百舌鳥キャンパス正門(2006年頃)

この大学の成り立ちは、基本的には、それまであった府立大学群を統合する形で一法人化し、キャンパスもその多くを中百舌鳥キャンパスに集約してきました。
筆者が少しとまどうところは、学部名称。この『学域→学類』名での組織づくりは、それなりに長く高等教育機関で働いていますが、どんな教育、研究をやっているのか非常にわかりにくく感じます。(なお、大阪市大との2022年統合の際には、全て「学部」にもどるようです。)
基本的には自然科学系を中心としたオーソドックスな総合大学のスタイルで質の高い教育・研究をしている印象を持ちますが、一つ特色ある教育・研究の分野をあげるとすれば、「獣医学類(獣医学部)」。こちらだけは、関西国際空港の対岸、りんくうタウンの中にキャンパスがある特別な存在。数年前からの不毛な騒ぎで良く取り上げられ知名度があがった?関西圏唯一の獣医学部です。学風なども特別とりあげるものはありませんが、トリヴィア的にいうと事務職員の気風は、大阪市大とちょっと違い、いまでも大阪府職員の文化・影響が強い印象。長いシーズン(結構暑い時期でも)勤務中にネクタイ着用の男性職員を多く見かけます。

これから受験しようとする人は、大阪市大との統合話が気になると思いますが、当初は多少バタバタすることはあっても中長期的には今より良くなる方が大きく、悪い方向に振れることはないはず(個人的イメージ)。今でも良質な教育研究をおこなっていますので、さらにスケールメリットの増す(はずの)新大学に夢を馳せて普通にトライしてみれば良いと思います。

 

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