FOU’s blog

日本の大学 今 未来

兵庫県立大学と神戸市外国語大学&神戸市看護大学 阪神間公立大学ぶらり歩き その3

兵庫県立大学 http://www.u-hyogo.ac.jp/

基本的には、平成16年に神戸商科大学(神戸)、姫路工業大学(姫路)、兵庫県立看護大学(明石)の県立3大学が、統合され一公立大学法人となったことが由来。学部については、当初のままの場所で現在に至っていますが、専門性の高い小規模独立大学院が各所にできているのが最近の大きな特色。兵庫県という場所は、神戸と大阪に接するエリアと、それ以外に姫路を中心とした中播磨エリア、淡路島、日本海側までと思った以上に広大。大学施設の多くは、神戸市から播磨エリアに広がります。一つの大学にはなりましたが、あまりにそれぞれが離れているので、学部レベルでの学びではキャンパスを行き来し講義を受けるような機会は多くありません。そのため学部を受験しようとするひとは、それぞれ西神戸・明石エリアと中播磨エリアとをわけて大学をイメージした方が良いと思います。基本的にはどこも地味目な存在ですが、周辺に優れた理研なのどの他機関の施設がくっついているので学びを求めるひとには魅力になると思います。  筆者の感じるこの大学の事務系常勤職員は、部課長級から現場まで大多数が県庁の人事ローテーションの中の存在。具体には他の県機関(病院や出先事務所など)からやってきて、数年大学の仕事をしてまた大学の仕事から離れて異なる県の仕事につきます。また、キャンパスもそれぞれが離れていることも影響し、法人化後も大学の仕事を専門とする職員養成自体も他の公立大学よりも遅れています。一般の事務はそれなりに回るでしょうが、専門的な学務や外部資金関係のできる大学専属の常勤職員の養成は必要に(筆者は)感じます。そんな事情もあって実際の現場は、(どこもそうですが)低価格で3年雇用されている非常勤職員の頑張りで大学事務部が維持されている状況。そのようなところで働く県からきた常勤職員たちは、幹部も含めてのんびりモード、何かのイベントでも無いかぎり男性もノーネクタイ、夏はポロシャツが主流でお仕事をしています。

少しぶらり歩きから外れますが

 良いか悪いかの評価は別として、国立大学(法人)においては、職員に対して昇任人事をからめた他国立大学・高専文科省への出向、異動官職と呼ばれる主として課長級職員を中心とした国立大学間の異動システムなど、(とりあえず)多くの職員が複数の大学をいったりきたり普通にしています。また、旧帝大クラスの大学なら文科省から出向してきてるキャリアが一人や二人必ずいます。このような様々な人事交流でできたネットワークのおかげで、入試のトラブルであったり、外部資金の不適切な取り扱いであったり、各種ハラスメントへの対応などのトラブルが生じた場合、他の国立大学事務部に『そちらではどんなふうにやってますか』などの相談が気楽にできたり、深刻な問題であれば『それは先に文科省に一声かけておいた方がいいんじゃない』的な判断もつきやすくなります。私大も含めてですが、内向きになりがちな公立大学さんでもなんらかの仕掛けを作って他の大学の事務部との(公式・非公式での)交流を増やすことは、大学運営上有意義なことだと感じます。

兵庫商科キャンパスと明石看護キャンパス
神戸市営地下鉄学園都市駅』からすぐ。旧兵庫商科大学のあったところに大学本部と旧兵庫商科大学(旧商経学部系)のキャンパスがあります。この場所は、神戸の中心三宮エリアから地下鉄で22分くらい。となりの『総合運動公園駅』には、オリックスバファローズの『ほっともっとフィールド神戸』やきれいな運動競技場などもあったります。このキャンパスのある神戸市西区は、学生が、大阪方面からはわざわざ授業をうけにいくにはしんどい場所、基本的には兵庫県内に居住する学生が中心となって学ぶことになります。                                

一方明石看護キャンパスは、新快速の停車するJR『明石駅』が最寄り駅。明石城は、天守閣の無いお堀だけのお城なのですが、なかなか良い雰囲気。特に桜のシーズンは多くの人がお城周辺の公園にあつまります。また、駅南側には、明石名物として有名な明石鯛や大阪のたこ焼きとはちょっと違うスタイルの明石焼きのお店があったりします。また、天気が良ければ海沿いから明石海峡大橋をきれいにみることもできます。明石看護キャンパスは、そんな『明石駅』から神姫バスで10分ほど。見ればすぐ推測できる有名建築家が設計した、夏暑く、冬冷え冷えするコンクリートの打ちっぱなし校舎が出迎えてくれます。また、キャンパスの東隣には県立がんセンターがあり歩いて数分で看護関係の実習に行くことも可能です。電車の最寄り駅は全く異なりますが、直線距離では兵庫商科キャンパスと近く、兵庫商科キャンパスへ共通教育科目の履修に行くことが可能、授業のあるときだけキャンパス間(有料)バスが行き来しています。

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キャンパス内にはえてきたキノコ(明石看護キャンパス)

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5月は鯉のぼりを掲揚(明石看護キャンパス)

神戸防災キャンパス 減災復興政策研究科
神戸市東部の再開発施設HAT神戸の中にあります。HAT神戸へ行くには、(長くても6両編成の)阪神電車岩屋駅から徒歩、もしくは三宮方面から市バスで向かうことも可能。海からの風を感じるベイエリアと言えばカッコいいのですが、立地的にはちょっと外れたところ。この場所には、阪神淡路大震災を機に地震を中心とした防災をキーワードとした機関が集結。人と防災未来センター、WHO神戸センター、JICA関西などの施設が集まり国際性にも富んだ中で防災に関する情報発信と研究が行われています。これら施設群の中に大学院減災復興研究科も設置。独立研究科で大学受験生や学部学生には関わりが薄いですが、特化された専門性の高い大学院でもありますのでその存在を覚えておいても良いかもしれません。

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人と防災未来センターHAT神戸内)

神戸情報科学キャンパス シミュレーション学研究科・応用情報科学研究科
神戸の中心三宮駅から、ポートライナーと呼ばれる無人のトラムでポートアイランド(人工島)へ。車両は小さめ、無人運転、一番前の車両には運転席部分がありませんので前方がよく見え楽しい気分になります。最寄駅の名は、『京コンピュター前』駅。到着するとたくさんの人が乗り降りする駅だなあ、と感じるかもしれませんが、圧倒的多数の人は、すぐお隣にある、いろんな鳥や動物と身近に接することができてとても楽しい『神戸どうぶつ王国』へ行く人たち。ちなみにその次の駅は、終着駅『神戸空港駅』です。
キャンパスのあるポートアイランドという場所は、1980年代には、豪華ホテルだの遊園地だのがあって活気あふれる街でしたが、徐々に衰退、さらに1995年には、阪神淡路大震災の影響で甚大な被害を受けてしまいます。これ以降(遊びにいくには)つまらない時代が続いていましたが、(広大な空き地に)複数の大学施設の誘致し、昼間島内人口は増加、場所によっては活気がもどりつつあります。さらに(しつこく)新たに埋め立てた南部分には、(飛行機があまり飛んでいない)神戸空港もできあがりました。
ただ、それでも港湾施設を除けばまだまだ空き地だらけで見晴らしが良い状態になっています。神戸市としてもせっかくこれだけ埋め立てたのですから何かに使わなければいけません。そのあたりは、昔から『株式会社神戸市』といわれた商売上手な地方公共団体。様々な企画立案と経営手腕により、旧ポートピアランドの空き地にはIKEAさんができたり、高度医療施設(群)を誘致、さらに島の南部分にやってきたのが理研理化学研究所)の二大施設。理研は、なんとなく関西圏に住んでいるとなじみが薄いのですが、このポートアイランドには、スーパーコンピュータ『京』を中心とした施設『計算科学研究センター』と、研究論文プラスアルファのことで世間を賑わせた生命機能系の研究施設『生命機能科学研究センター』があり、総称して神戸研究所と呼ばれています。これら理研施設とくっつく形で神戸大や兵庫県立大の二つの研究科が設置されました。どちらも小規模な自然科学系の独立研究科としてデザインされているので知名度は低いですが、理研の高度な研究施設と隣接していていることは強み。関係する分野に興味のあるひとは、覚えておくと良いと思います。

姫路工学キャンパスと姫路環境人間キャンパスと播磨理学キャンパス
それぞれ独立したキャンパス。阪神間に住む(筆者のような)ひとの地理感では、みんないっしょに感じますがそれぞれ微妙に離れています。このエリアの施設は、公立大学法人化する前に設置されていた旧県立姫路工業大学を起源として発展して現在に至っています。                                  

大阪を起点に考えると、このエリアで一番近いのは、姫路環境人間キャンパス。こちらは、JR新快速で『姫路駅』まで約1時間、あとは、電車を降りて駅前のバスに乗り姫路城をながめながら15分程度。次に近いのが姫路工学キャンパスですが、こちらはバスで25分を要します。さらに播磨理学キャンパスは、最寄り駅が岡山県がもう間近な『相生駅』、JR大阪駅から在来線で1時間半かかり、さらにそこからバスで45分。電車通学は、絶望的な場所になります。そんなローカル色を払拭するのが、『SPring-8』と『SACLA』の存在。兵庫県が中心となり、播磨科学公園都市と呼ばれる学術研究エリアの誘致に成功、その中に、1997年理研が中心となり供用が開始された巨大な放射光施設『SPring-8』、近年供用が開始されたX線自由電子レーザー(非常に強いX線レーザーで原子・分子レベルを観察する)施設『SACLA』は、世界的にも知られた研究拠点となっています。(多少理研施設の紹介になりつつありますが)この研究エリアに理学部と理学系2研究科、それに附置研に相当する『高度産業科学技術研究所』があります。学部レベルでは、直接『SPring-8』の施設を用いて何かすることはないと思いますが、間近でこのような施設を見ることができるだけでも学びのモチベーションには必ず貢献しそうです。

 

神戸市外国語大学神戸市看護大学                      

神戸市が設置している大学は、外国語系と看護系の2大学。両大学は、神戸市が開発した神戸研究学園都市(神戸市西区)の一角にあり、同地区には、兵庫県立大(神戸商科キャンパス)、さらに流通経済大学などの私立大や高専まで、いろいろな教育機関が集まっています。(個人的には)昔は大学が一杯あってとてもとても華やかなイメージを感じた一角でしたが、徐々に良く言えば歳月を重ねて落ち着いた雰囲気になってきた場所です。

神戸市外国語大学 http://www.kobe-cufs.ac.jp/                   

公立大学唯一の外国語大学であることが大きな特色。地下鉄『学園都市駅』下車南側すぐ。落ち着いた(というか閑散とした)雰囲気の中にキャンパスがあります。この外大の興味深いところは、提供する外国語の構成。英語、中国語、ロシア語、スペイン語という4言語により外国語教育を提供しています。
多分、過去からの経緯があって今のような外国語科目の提供となったのでしょうが、(筆者なりのイメージでは)G7言語のフランス語やドイツ、イタリア語、それにアジア系言語(タイ、ベトナム語とか)、そして中東系言語があってもいいのになあ、と感じます。また、入学定員は。英語系で140名程度、残り3言語は40~50名程度、他に国際学科(言語+国際性を学べる)もありますが、全ての分野で学生/教員比はかなり高め、基本的に『良くも悪くも』少人数制が行き届いています。『良くも悪くも』とした理由は、大学規模の小ささ。学生数は、特色のある二部(夜間)と大学院を含めても2000名少々。神戸市という地方公共団体が出資母体になり、(良い意味でわざわざ)外国語の高等教育を提供することは、独自性があって良い試みと感じます。しかし、(公立大学の)小規模大学であるがゆえに、共通教育系科目でも専門教育の中でも、自前のスタッフを揃え、継続的に多様性のある質の高い学び提供することは、人的にもコスト面でも普通の大学以上に大きな負担を感じます。それなら(いっそのこと)発展的に近隣大学(特に神戸大学)との連携や統合を行うことは、双方の大学も在籍する学生もみんながwinwinになれて良い気がします。神戸大学の立場(推測)としても『外国語学部』の編入(阪大と大阪外大とがいっしょになったイメージ)は、メリットを感じるでしょうし、この次に紹介する神戸市看護大学についても、神大医学部にくっついている看護系分野と統合すれば、発展的に『神戸大学看護学部』に格上げすることができ、教育・研究レベルの向上が期待できます。
神戸大学側にとっても大阪市大と大阪府大の法人統合は、人ごとではなく(推測)、大学の基盤強化は必須、多くの大学を巻き込む再編がおこれば関西圏の大学業界も盛り上がると思います。

神戸市看護大学 https://www.kobe-ccn.ac.jp/
こちらは神戸市国語大学と地下鉄『学園都市駅』をはさんで北西の位置。建物自体はゴージャス感がありますが、多少人影は少なく寂しい雰囲気。それでも近隣にある兵庫県立大学看護学部(旧兵庫県立看護大学)とともに、大学院まで学べる看護系単科大学です。選択肢の多いエリアにある看護学部ですが筆者が感じるこの大学の魅力はやはり神戸市が作った大学であること。質の高い市民病院を複数有する神戸市なので病院実習の際は強みとなりそうです。看護系の大学は、小規模でもがんばっているところがたくさんあり、こちらも問題なく(現状維持の)大学経営は可能だと思いますが、今後の様々な社会情勢を考えると、上述のとおり、(健全な大学経営が行われているうちに)他大学との連携・統合で新しい姿を見せてもらえると(神戸市民の筆者は)うれしいです。

この項 了