FOU’s blog

日本の大学 今 未来

京都市立芸術大学と京都芸術大学の呼称について英語も含めて考えてみる

 先に阪大と大阪公立大学の英語呼称の話を書きましたが、こちらは京都にある芸術系大学の名称使用に関する大阪地裁判決。

芸術系の大学について、筆者個人的にはなじみが少ないのですが、一度沖縄県立芸術大学に行って三線を中心とした琉球文化を研究する外国人研究者へのインタヴューを行った記憶があります。多くの芸術系大学は総合大学の中に位置しないで独自展開しているので、大学業界の中でも、知っている人は知っている、知らない人は~の世界観を感じてしまいます。

2019年、京都造形芸術大学が開学30年に合わせて京都芸術大学に名称変更するとに対し京都市立芸術大学が、類似名称の使用を差し止めを求めましたが、結局は裁判となり、その判決がでました。判決的には区別がつくとのことで京都芸術大学が(一審レベルですが)この名称を今後も使ってかまわないとのこと。その根拠となる言葉が市立でそれ以外の京都芸術大学は日常ありふれた言葉で他大学との識別のための重要部分とは言えないという見解。

この判決にについて、筆者個人的な考えは、今回の裁判官の法解釈的はそれはそうなんですが、実際の同じ京都エリアにあって市立という言葉以外同じ大学が二つあることについては、必ず混乱が生じるので現実的に見分けがつくようにしてもらいたく感じます。ですから、判決内容的には?で納得できない部分があるので、市立芸大側はその辺を突いて改めて高裁へ持っていけば違う判決がでるかもしれません。

この判決を英語名称にあてはめてみる

なお、今回の判決は日本語表記についてのもの。それでも、とりあえず判決がでましたので、その判決の趣旨に則り英語の大学名を考えてみます。

京都芸術大学さんは、Kyoto University of the Arts

(旧名 Kyoto University of Art and Design) 

京都市立芸術大学さんは、Kyoto City University of Arts

と、いうことで、市立を表すCity 部分を除けば、定冠詞theを付ける付けないの違いはありますが、旧名にあったDesignが無くなり類似性は高まったと言えます。

それでも(良いか悪いかは別として)今回の判決による表記運用ルールでいくと、両大学ともに用いている、Kyoto・Univerisity・Arts については、日常ありふれた言葉なのでどちらも利用OK、そして両者を識別できるキーとなる City 京都市立芸術大学さんには入っているので、日本語表記同様見分けがつくということ。ですから両英語表記はそのまま使ってかまわないことになります。(筆者解釈)

この解釈を他の事例 "University of Osaka" に当てはめてみる

現在、大阪大学が新大学・大阪公立大学に強く変更を求めているUniversity of Osakaについて考えてみると、日本語表記なら、大阪大学と大阪公立大学は、識別に用いられる重要部分公立がちゃんと入っていますので十分に区別は可能で問題なし。

英語表記について、後出し側の大阪公立大学が新たに主張しているUniversity of Osakaについては、識別に用いられる重要部分Public etcに相当する記載が無いのでルール違反?となるの可能性が生じます。(筆者解釈)

蛇足で、今回の判決は大阪地裁から出ていますので、仮に阪大が同様に訴えるとすれば同じ管轄となる大阪地裁に同じ根拠で主張をしてみたら有利に働くかもしれません。

それでもやはり類似性は良くない

京都芸術大学さんって、筆者的には、テレビでコメンテーター教授を多く輩出したり独自な文化活動を行ったりと個性的な営業方針でその存在価値を高めてきたという印象があります。そして今回も多分他の大学なら躊躇するような名称変更をトライして裁判所からも認められたのだと感じます。

それはそれで結構なことなのですが、現実的に似たような名前の大学が増えていくことは日本国内はもとより海外においても混乱が生じかねません。阪大・大阪公立大学間同様(思ったより)大学同志では調整能力が無いことが分かってきましたので、そろそろ文科省さんが重い腰を上げる時期に来ているのではと感じます。

 

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構造と力―記号論を超えて

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  • 作者:浅田 彰
  • 発売日: 1983/09/10
  • メディア: 単行本