FOU’s blog

日本の大学 今 未来

【短編】千葉科学大学ってこれからどうなるのか考えてみる

大阪(伊丹)から飛行機に乗って東京(羽田)に行くとき、低空で房総半島銚子付近からきれいな海と丘陵地帯、ゴルフ場を眺めつつ東京湾へと入っていきます。とてものどかそうなところ。そんなところにある大学の将来がどうなるか懸念されています。今後もふえていくであろう地方の私立大学の公立大学化の良い判断基準になると思います。このブログでのスタンスは、この公立大学化はお断りした方が良いのでは…です。また、この話を書いていて感じることは、今に至るまでの『そもそも~』の話が多すぎです。

千葉科学大学さんが、学生が来てくれないので公立大学に設置変更してくださいと銚子市さんへ言っているみたいです。最近の日本のアマアマの世の中の縮図に感じます。ことここに至って言っても詮無き事ですが、なんでこの地にこのような大学を作ったのか…。どのような結論になるかはわかりませんが、オトナの火遊びで学生さんや地域住民に迷惑がかからない方策を考えないといけません。

決めるのは銚子市さん ー問題は薬学部ー

千葉科学大学側の立場は、一生懸命頑張ったけど定員に満たない(70%未満)ので(今はやりの)公立大学化を求めています。ただ、この大学、設置・設立した2004年の時からミステリアスで、銚子市から不動産やハコモノの支援をうけるような密接な関係(下品な言葉を使えばズブズブ)を築き、さらにどうみても経営状態が良くない中、看護学部の新設(一応市側の要望)まで行っています。大学ができて20年ほど、設置母体の運営に疑問が残る中、今回はさらなる支援要請(というか経営放棄)。ですので、銚子市さんはいろいろ考えてどうするか考えないといけません。

銚子市にとっては存続させる方がリスク大

一番の心配は、薬学部。そもそも薬学部というものは、教育と研究、さらに病院等での実習も必要。その分、市の負担が大きくなります。そんな中で、公立大学法人化すれば、私大なら年額一人当たり200万円の授業料求めていたところを、50万円程度の授業料収入のみ。場合によっては更なる減免措置を行いますので、大学経営上は必ず赤字になります。地方交付税の増額はあるのでしょうが、それだけでは追いつきません。

そもそも、人口6万人足らずの小さな銚子市に、市としてなぜ薬学部の設置が必要か?もちろん、過疎の進む地方都市ですので、薬剤師の不足はあるのでしょうが『学校』まで作る必要は感じられません。そのような場所ですので教育環境にも課題がたくさん。コアカリができるレベルの実習・研修先も銚子市内には見当たりません。おとなりの旭市に大きな病院(国保旭中央病院)があるみたいですが、そこばかりに実習を依存することもできません。今現在もそうなのでしょうが、5年次、6年次の学生は大学から遠く離れた病院で実習を受けることに。公立大で成功している和歌山県医大薬学部の場合、大学内にはもちろん大学病院があり、医学部との交流が可能、実習先も県立病院、市立病院もたくさんあります。やはり、銚子に単独で設置された薬学部では、多くの面でロケーションの悪さが気になってしまいます。

銚子市だけじゃ無理

以上、いろいろ考えてみて、人口6万人足らずの過疎化の進む一つの市だけで薬学部のある大学を賄うこと自体が無理。その必要性も見出せません。仮にどうしても公立大学化での存続をやりたいのであれば、銚子市は千葉県や近隣市町村を巻き込んだ形での公立大学法人を設置する方がまだ良く思えます。相手方が承諾すればですが…。

蛇に睨まれた? ーどうも力関係が…ー

この大学の学長さんは、元文科省キャリアさんであったり元議員さんがやっています。(単にメンタリティーの問題にすぎませんが)さらにその上の理事長さんと学長さんが人口6万人足らずの銚子市役所へ談判しに乗り込んできて、市長や事務方に何とかしてくれと言われたら、受ける立場の人にとっては大きなプレッシャーなるのかしれません。(筆者が担当の係長だったら病気事由で1年間お休みを頂戴してしまいそうです。)ですので、そんなプレッシャーの中、銚子市さんは、今までの関係は、一応、winwin に見える形で進んできたのかもしれません、が、だからと言って銚子市さんは、今回法人の逃げ得を許して良いものかはよく考える必要があります。特にこの大学が設置母体の法人から銚子市に移管されたとしたら、今の経営責任者は、これまでのことを責任回避でき、今後の経営責任は市がすべてを負ってしまうことになります。

今回、(多分)大学と銚子市さんとの交渉がうまくいかなかった場合、(大学経営がうまくいっていないことが表面化して)今後の学生募集にも影響がでるかもしれません。だからと言って銚子市さんが、公立大学化して救済するのもヘンなお話。やはりどこかでケジメをつる必要があります。それが今だと筆者は感じます。

その他いろいろ

この法人のパワーは、獣医学部新設の際には、これまで岩盤であった旧勢力への突破力となったと思えますが、今回の場合は、あだとなっている印象。いつも筆者は書いていますが、私大で学びたい人は、その大学の偏差値のような受験情報だけでなく、どんな人が設置母体にいるのか知っておくほうが良いと思います。こういうタイプの教育系法人は結構あります。初等中等教育(高校とか)でもあるし、専門学校でも、そして大学でも。

・薬学部6年制はとても長い

薬学部は、標準修了年限を6年に設定していますから、大学に何かあっても、少なくとも入学してから6年は学生の面倒をみないといけません。仮に途中で閉校するとしてもこの学生が卒業するまでの間、大学はカリキュラムを維持させる必要があります。そのスパンが4年制学部よりさらに2年要するのは時間軸として負担が増えます。公立法人化をしようがしまいが今後の経営は大変です。なので、定員充足の悪い、私大薬学部を受験する際は、経営基盤の安定したところを選ぶ必要があります。

・今後はどこでも起こりうること ー設置した法人の清算能力に期待ー

最近、関西圏でも神戸海星女学院大学さんが閉校を決定してその準備に入っています。ですので、大学の閉校はそれほど珍しい話でもなくなってきました。ただ、薬学部を設置する大学の存続が厳しいということが露呈したのは(多分)今回が初めて。

そもそも、出来て20年ほどの大学が学生が来てくれないとブツブツいうのは、大学側の自助努力の不足や目測誤りがあったと言わざるをえません。今後は(必要が生じた場合)学んでいる学生に迷惑をかけないようにしつつ、粛々と自分で募集停止、廃校までしっかりとやらせるべき。教職員の雇用継続も(岡山に薬学部はありませんが)求められれば理系学部が多いのでなんとか吸収できると感じます。これ以上、地方公共団体に依存しても良いものは生まれません。もちろん政治力を使うのもだめです。

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