FOU’s blog

日本の大学 今 未来

オープンキャンパスの楽しみ方を大学職員なりに考えてみる(行ったとき役立つ?質問例つき)

高校生や受験生のうちにオープンキャンパスに行ってリアルな大学を知ることはとても大切です。新コロの影響でzoomによる遠隔参加であったり、絞り込んだ予約制で人数が限られていたりとまだまだ通常の状態ではありませんが、出来ることなら是非ご参加を。

日本型オープンキャンパスの始まり

まず1990年代初めのころの話をすると、第二次ベビーブームのおかげで、大学は殿様商売の時代。何もしなくても受験生は来てくれるし、特に私大は、一時的に学生の収用定員なんかも増やすことが出来てウハウハの状態でした。なので、入試広報なんかも低調。特に夏休み期間なんて教職員みんなほぼ出勤なしでお休みの大学(阪神間にあった女子大)なんかも普通にあったりしました。それがミレニアムを迎えるころになるとその様相が大きく変わってきます。特に18歳人口の急激な減少の影響が目に見える形であらわれてきたため、特にキリギリスさん(イソップ童話)をしていた私大さんは、女子大の共学化など切羽詰まった様々な大学改革を行ない、限られたパイ(受験生)を奪い合うようになりました。その取組みの一つとして、まず私大から先にオープンキャンパスの実施が始まります。やってることの基本はみんな同じ、これから大学で学びたい受験生に大学に来てもらい(自慢の)施設を見てもらったり大学の先生とお話できたり等々のPRを行なって入学者の増加を狙うもの。

オープンキャンパスってどんな感じ?

多くの国公立大は、だいたい高校生の夏休み時期の平日にやります。なんで土日にやらないかというと(深い理由は全くなく)土曜・日曜日にすると出勤した職員の休日振替え等々邪魔くさいことをしないといけないから。また、先生たちも何度もやるのを嫌がります。筆者のイメージでは、一番最初のころは、あんまりやるきはなかったんだけど、私大がやっているし、文科省も大学の情報公開の一環だ云々でやれ等々、と言われて(仕方なく)開始したように感じます。ですので、あんまり盛り上がりませんし、やる回数も一年に一回程度が基本。

私大の場合、毎週のようにオープンキャンパスをやって(なんだかよくわからないけど)参加者には受験料のお値引きのようなインセンティブまでついてきたりして、その必死さが逆に大学の経営状況を心配してしまいます。

筆者の経験では、コロナ前の状況では、オープンキャンパスにくる層は、多くが高校3年生かと思いきや2年生1年生も結構な数。また、ご家族・保護者同伴もかなりの割合。いつも大学にいる者からすると、ぜんぜんドキドキする場所ではないですが、やはり高校生や家族・保護者にとっては高等教育機関という凄いところと感じるのかもしれません。

で、当日の流れですが、もちろん大学によってもそれぞれ、まずは受付へ→当日のスケジュール等を受け取る(夏ならペット水なんかももらえます)。このようなお仕事は、おそろいのTシャツを着(せられ)たバイト学生が中心。体育会・文化会なんかの学生も動員させられて応援団・チアリーディングの出し物もあるかもしれません。

渡されたスケジュール表には、大学案内の全体説明だとか、入試に関する説明会だとか、ココで〇〇研の公開実験をやってますとか、(私大なら)大手予備校の講師を呼んでの試験問題攻略説明会やりますとか、何でも聞ける個別相談会もやりますよ、などなどの出し物が書かれているのが普通。その案内を見ながら行くところを決めて歩き出します。

そんな催しの中でも、キャンパスツアーというものが目玉の一つ。大きな大学図書館、キレイな大講堂、私大なら体育館や競技用グラウンドあたりも見せてくれるかもしれません。また、工学部があればロボットが動く姿や風洞とかの大きな実験施設を見せてくれるかも。また、学内の(いくつかある中で一番キレイで値段の高い方の)食堂でおいしいものが食べれる状況や、コンビニがあってたくさんいろいろなものが買える光景は、大学にあこがれを(意味不明に)抱かせてくれます。

せっかくの機会だからいろいろ聞いてみる

こんな感じで大学の雰囲気を感じてそのまま帰るのも良いのですが、多くの大学ではなんでも相談コーナー的なものをやってくれていますので、入試関係以外にも大学のことをいろいろを質問できる良い機会だと思います。以下は、筆者なりに聞いてみると良いと感じる事項。ただし、当時入試課で働いていた知人から、そんな質問する受験生見たことありませんっ!と言われましたが(筆者的には)全然聞いて悪いことではありません。というか積極的に聞いてみるべき。もちろん受験生自身が思う入試傾向やキャンパスライフのことを聞くのも大切ですが、以下のような内容はこれから4年間学ぶ大学情報の基本となりますので遠慮せずどんどん聞いてみましょう。

オープンキャンパスへ行く前に予習をする

まず、行く前にあらかじめのお勉強。それぞれの大学にはHPがありますので、基本情報の確認。各学部にどんな専攻・学科・コース等々があって何を学べるか等を事前に知っておくことは重要。ともかく大学というところは、大半の情報をHPにあげていますので気になる大学は常日頃からのチェックしていればだいたいのことがわかってきます。

筆者的には、その中の認証評価のチェックも重要だと思っています。私大さんの大半は、大学基準協会さんというところで実施・評価をしています。今の日本の大学では、何年かに一度、このような認証評価機関に大学の状況を審査をしてもらい、大学としてちゃんと機能しているかを評価してもらいます。審査結果がOKだったら適合マークをもらえる感じ。その審査結果は、大学のHPなどで公開しないといけないのですが、その結果について、筆者のような大学職員的というか業界筋的な目線でみるとボコボコにダメ出しされている大学もよく見かけます。これの見方については、他のところでも書いていますが、一大学だけみても様子がよくわからないので、複数大学を眺めて審査結果がどうなっているか見比べるのが良いと思います。

www.juaa.or.jp

①学生定員の充足率の確認『〇〇学部の定員充足率はどんな感じですか?』

大学の各学部は、それぞれ収容できる学生数が定められています。例えば各学年の収容定員が200名という〇〇学部があったとして、なぜか実学生数が170名しかいない場合、定員割れがおこっているということ。基本的にこのような大学を受験することは避けることが望ましいと思います。今、人気のない私立大学さんは入学者が定員に届かず大変なことになっているところもあります。このことについては、すべての大学が学校基本調査(毎年5月1日現在の大学の統計資料)を文科省に提出しており(ちゃんとした大学なら)基本データでもありますので即座に回答してくれます。

②退学者(留年者)数の確認『〇〇学部では1年間に何人くらい退学者が出ますか?次の学年に進めない留年生は何人くらいいますか?』

例えば、学部に200人の入学者があったとして、来年の4月にはその学生が何人残っているかの質問。もちろん進路変更であったり経済的事情であったりで退学する学生は出てくるものですが、例えば、残っている学生が170/200名などになっていれば異常な数値。大学の何かに問題があるから退学の道を選んだのではないかと推察されます。同様に私大の薬学部などで良くあるケースですが、(薬剤師国試受験のための)学力が伴わない(と大学が考えた)学生を大量に留年措置にして次の学年に上げないようすることもあります。この意味は、薬学部の場合、1度留年したら在学年限が7年になるということ。こちらも留年者の数が異常に多い場合、その理由は何なのか検証してみる必要があると思います。ただし、外部関係者に数値として退学率を公開していない可能性はありますので、そんな時、その担当者はどんな説明(どんな顔して言い訳)をするのかも注目です。

③教員の年齢構成等の確認『〇〇学部の常勤教員の性別と年齢構成はどんな感じですか?』

もともと私大は、国立大学より教員の定年年齢を高めに設定していますが、それでも、非常に多くの教員が50歳台後半以上、場合によったら60台後半から70歳越えの先生がうようよいる大学があれば問題。文科省もバランスのとれた年齢構成の教員組織を作ることを求めています。同様にあまりにも女性教員の比率が低いのも昭和の大学をイメージしてしまいます。特に表向き大学HPトップにはSDGsとかダイバーシティ&インクルージョンの取り組みをあげている割に、自分のところでは全然できていない大学があるので注意が必要。大学側は、このような事項を大学要覧的な名前の冊子に取りまとめているはずですのでそんなに時間をかけず説明できるはずです。

④外部資金獲得の確認『この大学の科研費を中心とした外部資金の獲得状況はどんな感じですか?』

特に理工系の大学では聞いてみる価値があります。外部資金とは科学研究費補助金科研費を中心とした競争的資金の獲得状況こと。大学側が交付機関(学振とか)に申請して価値のある研究だとお金がもらえる仕組み。比較的獲得しやすいポピュラーなものとして基盤研究(B)(C)などがあります。このことへの筆者のこだわりは、科研費の状況が分かれば、大学や教員が教育だけでなく外部資金への意欲があることを知ることができるということ。採択された研究については、大学以外の公平な目でみて良い研究だと評価がなされているので素直に大学・教員ががんばっている証(あかし)。極端に言えば大学や先生は出しても出さなくても良いもの、ですので、大学の教育以外の研究の面でのやるき・がんばりを知ることができます。ただし、文学部や経済学部のような人文・社会科学系の研究分野には外部資金の提供が少ないのも事実で、そのあたりは大目に優しくみてあげてください。

⑤ハラスメント対策『教員や学生同士でおこるハラスメント対策はしっかりやっていますか?』

これも大事なお話。対教員、学生同士等々、授業中、クラブ活動など様々な場で起こりうるハラスメント行為について、大学はどのように向き合っているのか、説明をしないといけません。どこの大学でもガイドラインは作っているはずですので、それがちゃんと機能していて、実際、不幸にも、なにかがおこった時、大学はしっかり対応します、のような確約くらい説明をして欲しいものです。高校生くらいの人には想像がつきにくいかもしれませんが、教員からの授業や成績を通じての差別的発言や暴言、学生を交えた集団での無視、飲み会への参加の強要、『こんなのオンナには無理』のような性に基づく差別等々様々の行為が想定されます。LGBTqへの対応を含め、大学の取り組みについて確認することは大切です。

⑥少人数制『語学の授業の一クラスの学生数は何人くらいですか?』

最近、私大のHPを眺めていても少人数制という言葉すら死語になって見かけない印象。ハコモノはキレイでも大部屋での一方通行の授業ばかり。仮に少人数制と謳(うた)っているなら、それは何人を指すのか教えてもらいたいものです、特に語学の授業くらいはマトモにしてもらいたい、ということで、英語やそれ以外の言語の授業を(ホントは20人と言いたいところですが)30人を超えてクラス編成をしているようなら(語学教育として)完全に失格で授業をうける価値はありません。この内容も大学で教務系といわれるのお仕事をしている職員ならすぐに答えられます。

⑦比較も重要『この大学と◆◆大学◇◇学部との違いや強みはなんですか?』

大学受験をする際、他の大学と比べて、どっちを選ぼうかと考えるのは当然の流れ。特段不自然な話ではありませんので率直に聞いてみて良いと思います。反対に言えばこんな時、大学はどのように説明できるかあらかじめ用意をする必要があります。例えば、本学は就職先として公務員試験や金融系のような分野は強くてどこにも負けない、とか、本学は大学院進学率が高い等々いくらでも引き出しを持った説明は出来るはず。それができないのは大学側のオープンキャンパスへの準備不足といえます。

⑧たくさんのオープンキャンパスに参加していろいろ感じる方がよい

今の自分の学力が低い人もいろんな大学のオープンキャンパスに行ってみることを勧めます。特に日本国内で良い教育を行っている大学の状況をみると受験勉強のモチベーションもあがると思います。筆者個人的な嗜好も含めてですが、推奨する大学は、

首都圏:理工系なら東工大、私大なら慶応大・人文系なら慶応大上智あたり

関西圏:理工系・人文系どちらも、京大阪大神大あたり

以上のような大学のオープンキャンパスは行ってみて損はありません。自分が本当に受験を考える大学との様々な相違を感じて、改めて自分の受けてみたい大学を考えることができるとても良い機会だと思います。

まとめ

いろいろ書いてきましたが、大学受験をするうえで、オープンキャンパスへ参加することはとても重要だと思います。受験勉強に明け暮れている人は、息抜きもかねてたくさんの大学を訪れてみてください。

6/27追記 海外の事例

毎度ですが、McGill Univ. @Quebec, Canada さんの事例を見つけたのでご参考になりましたら。※英語がわかりにくい人はEnglish→日本語に言語変換してみてください。またリンク切れになったらごめんなさい。

www.mcgill.ca

www.youvisit.com