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日本の大学 今 未来

カナダの大学3 モントリオール大学 Université de Montréal

モントリオール大学 Université de Montréal https://www.umontreal.ca/  ーカナダ・ケベック州の大学ーその3

Université de Montréalと周辺

地下鉄Métro de Montréal グリーンラインGreen Lineから行くとLionel-Groulx Sta.でオレンジラインOrange Lineに乗り換え、さらにSnowdon Sta.ブルーラインBlue Lineに乗り換え、Université-de-Montréal Sta.で下車になります。イメージ的にはMont Royalの西側の丘沿いにある感じ。なお、ダウンタウンから複数人数で行くならタクシーの方が楽かもしれません。

Université-de-Montréal Sta.を降りるとを長いエスカレータがあって大学方面へ連れていってくれます。(よく修理中になっているので動いていればラッキーと考えてください。)キャンパスは広大、傾斜地にあるので多少歩くことになります。なお、日本人の来訪者を一番戸惑わせることが案内掲示Quebecの仏語で講義を行う大学ですので(トコトン)英語を見ることはありません。学部・研究科等の行き先が決まっている場合、仏語表記を予習しておく方が無難です。ただし、学内を歩く人や事務室の人に英語で尋ねれば英語で(多分)丁寧に答えてくれます。

【写真】時計台にはカナダ国旗ではなくQuebec州旗のみ掲揚

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キャンパス内は、場所的に多くの人が行き交うことが少ないので静かな雰囲気。構内にあるブックストアーはお土産になりそうなマグやTシャツが豊富でオススメです。

【写真】Mont Royal Park  キャンパスから東へ1キロほど、Mont Royal の山頂はきれいに 整備された公園になっています。さらに東側方向へ下ればMcGill University のあるダウンタウンに行き着きます。(以下は夏の写真)

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【写真】ダウンタウンへ続く道

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【写真】ダウンタウンからも上ることができます

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Mug photo taking at Kitano, Kobe 20210211





 

 

 

カナダの大学 2 マギル大学 McGill University その2

マギル大学 McGill University ーカナダ・ケベック州の大学ーその2

McGill University周辺

地下鉄Métro de Montréal グリーンラインGreen Line/Ligne verte)のMcGill Sta.かPeel Sta.が最寄り駅になります。グリーンラインMontrealの中心を走るもっとも賑わう路線。またこの路線沿いにUQAM(Berri–UQAM sta.)、Concordia University(Guy–Concordia Sta.)の2つ大学もあります。(筆者の昔話、ESLの先生がPeel Sta.(皮をむく、ピーラーとか)って面白い名前の駅だと何気なく話していました。このあたり日本人だとすぐにつかめない英語感だと思います。)

McGill University の正門(McGill Gate)は Rue Sherbrooke Ouest(West)沿いの賑やかな通りに面しています。周辺には高層ビルが立ち並ぶ一方でMont Royalへ続く丘陵にキャンパスの建物が並んでいます。

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Rue Sherbrookeは、東西に走る幹線道路、同じく南北を走る幹線 Boul. St-Laurentを境にしてSherbrooke Ouest(West)Sherbrooke Est(East)に分けられます。なんだか複雑に書いていますが市内はタテヨコに分かりやすく区画されていますのでそれほど道に迷うことはありません。なお、通りの標記はStreet ではなくRue となりフランス語記載となります。 

特にMétro McGill Sta. から AtWater Sta.までの地域が過去Quebecを経済的に支配していた英国系住民が多く住むところ、独立した行政区となるCity of Westmountは高級住宅地として知られています。

トリビア的な話になりますが、Montrealエリア中でもWestmountのような行政区域に入ると交通標識が英語(Stop etc)の表示に変わったりします。

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 そしてMcGill Gate に入ると創設者James McGill像がお出迎え。広い芝生の突き当たりに大学本部機能の施設や大学が管理するレッドパス博物館(Musee Redpath)、日本の大学で言えば大学生協的な施設 McGill Bookstore もこのあたりに。夏に来ると爽やかなキャンパスを体感できますが、1月あたりに訪問するとマイナス30℃の世界になりますので衣類の選択に注意が必要です。

キャンパスは手狭感があり周辺のビル、高級住宅地の建物を借用してMont Royalの中腹まで続きます。坂を上った医学部関連の建物が立ち並ぶあたりにある通りがドクターペンフィールド通りAvenue du Docteur-Penfield。1930年代からMcGill University 医学部や関連病院で勤務をした DrWilder Graves Penfield は、世界に知られた脳科学の権威。その名に因んだ通りです。

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脳と心の神秘

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臨死体験 上 (文春文庫)

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  • 作者:立花 隆
  • 発売日: 2000/03/10
  • メディア: 文庫
 

  【写真】キャンパスからMcGill Gate 方面f:id:FOU:20201010230856j:plain

 

  

 

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カナダの大学6 トロント大学University of Toronto etc

トロント大学University of Torontoーカナダ・オンタリオ州の大学

Toronto の空港

TorontoOntario州にあるカナダ最大の都市、オンタリオ湖の西北岸に位置しています。空の玄関口は  Toronto Pearson International Airport。日本からの直行便がありますし周辺のニューヨーク、シカゴあたりからのフライトも多いので米国系のフライトで乗り継いでもそれほど時間のロスはありません。それでもフライトはエアカナダが基本。日本~カナダ間は幾つかルートはありますがエアカナダの日本~TorotoのダイレクトフライトがあるとともにVancouver経由でも便数が多いので時間のロスが少なくてオススメです。

アメリカを経由して出入国する場合

日本からアメリカにつくとトランジットでも入国扱いとなるのでESTAが必要になります。すでに持っている人はOKですが、持っていない人は取得手続きが必要になります。カナダからアメリカへ行く場合、カナダ主要空港内にアメリカのimmigrationがあるので、ESTAを持っていれば、カナダ国内でアメリカ入国手続きが完了します。アメリカ→カナダの際は、アメリカ入国手続きに時間を要したりと多少イライラしますが、カナダ→アメリカは単なるトランジットだけなので慣れればそれほど気になりません。※大学で教員が学生を引率して連れて行くような場合、慣れない学生が出てきそうなので事前の十分なレクが必要になると思います。

空港からダウンタウンなどへ

 従来ならエアポートリムジンがオススメでしたが、現在はUP Expressが一番。基本的には到着するUnion Sta.は大きな駅で近郊都市へ乗り継いで行け、市内なら地下鉄、タクシーなどで目的の宿泊施設などへスムーズに行けます。また、空港内からナイアガラや周辺都市へ向かう長距離バスが出ていますので時間があえば利用価値があります。

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 Downtown, Toronto

Toronto の良いところ・少し困ったところ

Torontoは、カナダ最大の都市、地下鉄、バスで主要箇所に行けます。観光するなら(行ってみる観光地自体は少ないですが)MLBMBAの観戦と多くの博物館見学、コンサートの観賞など北米大都市ならではの楽しみが待っています。また、ナイアガラの滝もバスで数時間で到着可能。印象的にはカナダと言うよりアメリカのどこかの大都市と感じる人が多いと思います。治安も近隣のアメリカの都市と比べても数段安全。ただ、一部時間帯によっては行かない方が良いエリアはあります。また、学生間でも比較的容易に大麻などのドラッグが手に入る環境がありますので、特に中長期滞在する学生・研究者の人は注意が必要です。 

 TorontoとOntario の大学

ざっくりオンタリオ州には日本との交流が盛んな大学が多くあります。イメージ的にはアメリカとの国境に近いところの方が人口密度が高く、そのミドルタウンに主要な大学が置かれている感じ。北方面に行かない限り交通は発達しているので比較的容易にどこへでも行けます。また、Kingston や 首都Ottawa周辺にも大学・研究機関が集まっています。

クイーンズ大学Queen’s University かつて高円宮憲仁親王が学ばれた大学として知られています。

www.queensuca

オタワ大学University of Ottawa 

www.uottawa.ca

【写真】首都Ottawaの議事堂(夏と冬)

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Toronto市内にある総合大学はUniversity of TorontoYork Universityあたりが日本との交流が盛んです。この場ではUniversity of Torontoを考えてみます。

トロント大学University of Toronto 

www.utoronto.ca

 筆者が行ったことがあるのは、トロントのど真ん中に位置するセントジョージSt. Georgeキャンパス。基本的には地下鉄の利用が便利です。雰囲気は(わかりにくいかもしれませんが)典型的な研究型大学院大学のキャンパス。あまり若い学生が大勢行き交う姿はありません。

【写真】あまり日本の大学では見かけない同窓会による記念塔。

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【写真】訪問した研究所(写真は冬季)

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なお、ESLも充実していますので、日本の大学の夏休みあたりに大学から、もしくは学生本人が頑張って自力で英語研修を受けてみるのも良いと思います。中長期の滞在者の人には近くに日本総領事館国際交流基金のオフィスもあるので情報収集が必要な場合役にたちます。

カナダの大学 1 マギル大学 McGill University その1

マギル大学McGill University ーカナダ・ケベック州の大学ーその1

この項では、カナダ東部の大学、基本的には筆者が行ったことがあり、日本との関わりの深そうな大学についてお話してみます。目線としては、留学や語学研修をしてみたい人の参考になればと思います。記載は日本人で英語のみ話す人物を前提にしてお話します。出来るだけ普通の旅行ガイド的にならないようにしてみます。

カナダの大学にももちろん大学評価やランキングというものはあるのですが、日本の大学とは異なり、それぞれの大学で学生や教員の質にトコトン差が出ることはありません。基本的には高等教育は州の仕事になりますのでどこの大学でも最低限の質的保証はなされています。反対に地理的に不利な大学の方が授業料やドミトリーにインセンティブをつけている場合もあるので狙ってみる価値もあります。

筆者の視点ですが、Montrealに滞在していたこともありカナダの話題はQuebec中心になります若干ご留意を。それでは、そのケベック州の大学から始めてみます。

Montreal の大学紹介

Montreal の空港

MontrealQuebecで一番人口の多い街、(気づくことはありませんが)セントローレンス河の巨大な中洲にあります。空の玄関口は Montréal-Pierre Elliott Trudeau International Airport。規模の大きな空港ですが今のところ日本からの直行便がないので近隣の日本からの直行便があるところから乗り継ぎが必要です。フライトはエアカナダが基本。日本~カナダ間は幾つかルートはありますが日本~Toroto~Motrealのルートが一番時間のロスが少なくてオススメです。他にもシカゴやニューヨークも距離的には近いのですがトランジットの際アメリカへの入国が必要になるのが厄介です。なお、エアカナダはVancouver経由でのフライトも提供していますが、大陸の西から東で距離があり過ぎるの(イメージ的にはサンフランシスコ乗り換えでニューヨークへ行く感じ)とフライトの定時制の問題から先に東海岸へひとっ飛びする方が時間はかかりますがらくちんです。

空港からダウンタウン

筆者はタクシーをオススメします。その大きな理由は定額制、市内の主要箇所なら値段は同じ(40CAD程度)。バスで行っても待ち時間や乗り換えの手間を考えるとタクシーならホテルなどの玄関先まで安全に運んでくれます。

なお、カナダのタクシーは至って安全。釣り銭ごまかしや遠回りするドライバーも見かけたことはありません。ただし、Quebecなので移民系の仏語話者が多く英語は片言の人も結構いますが皆さん丁寧に対応してくれます。

Montreal の大学4つ

 Montreal 市内にある大規模大学は、

マギル大学 McGill University https://www.mcgill.ca/

コンコルディア大学  Concordia University https://www.concordia.ca/

モントリオール大学 Université de Montréal https://www.umontreal.ca/

UQAM Université du Québec à Montréal https://uqam.ca/

MontrealQuebecにある都市。州法により仏語が原則優先されるのですが、過去の様々な経緯で英語の使用が認められる大学があります。その代表がMcGill University、カナダで三指に入る世界的にも評価の高い大学です。また、日本の大学との交流も盛んに行われています。

次にUniversité de Montréal フランス本国外で最大の仏語で授業を行う大学として知られています。こちらも日本の大学とは研究を中心とした国際交流は良く行われています。※日本からの視線では、英語系大学を中心にみてしまい、日陰がちになりますがこちらもTHEで100番以内に入る大学です。筆者がいた時には、ここの大学図書館に日本の国立国会図書館から派遣された職員の方が長期研修をされていました。図書自体が仏語文献中心なのでかなりの知識と専門性がないとキツイところだったと思います。

その他、Université du Québec à Montréal (UQAM)は、州内の仏語話者向け、Concordia Universityは、英語系で留学生も多いのですが、職能系(移民の人たちへの資格取得など)の色彩が強く、どちらも日本の大学との関わりは強くありません。

さらに留学できます

Quebecで交換留学生ではなくフルタイムの学生をしていたらさらに留学出来る機会があります。筆者がいたころはCREPUQプログラムと呼ばれていたケベック州とヨーロッパのフランス語圏の国を中心とした学生交換プログラム。現在も形を変えて行われています。日本は蚊帳の外ですが、欧州ではエラスムスのプログラムが増えてきて欧州域外との学生・研究者との人的交流が盛んになっています。興味のある人は自分のいる大学のStudent Exchangeの窓口に行ってみると良いと思います。https://www.bci-qc.ca/en/ 20201026追記

 

【写真】一例ですが、英語系大学以外では州法の関係で英語表記を行いません。

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Montreal の良いところ

カナダ全般に言えることですが、一番感じるのが治安の良さ。イメージ的には日本と同じ感覚で生活できます。市内は地下鉄(Metro)が網羅されていて行きたいところへ不自由なく行けることもメリット。筆者は一年滞在した中で、その経験上、治安上の危険な思いをしたことは皆無、また、アジア系人種として差別感を感じたことも同様にありませんでした。

また、食文化の多様性も他のカナダと大きく異なるところで、比較的安価においしい食事を楽しめます。  

【写真】 Eggspectation1

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 【写真】Eggspectation2

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 Eggspectation https://www.eggspectation.ca/maisonneuve/

Boulevard de Maisonneuve Ousetにあるお店。McGill Universityからもほど近い観光エリアにあり、朝から夕方まで賑わっています。わぁわぁした雰囲気ですが気楽におなかいっぱいになれ使いやすいお店です。

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Sakura  https://sakuragardens.com/

(筆者的には)日本人がおいしく楽しめる日本料理のお店。HPが多少エキゾチックになりましたが日系カナダ人の人たちを中心にしたスタッフがお料理を出してくれます。筆者滞在時は在モントリオール日本総領事館御用達のお店でした。

【写真】ある日のランチメニュー

 

 

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京都市立芸術大学と京都芸術大学の呼称について英語も含めて考えてみる

 先に阪大と大阪公立大学の英語呼称の話を書きましたが、こちらは京都にある芸術系大学の名称使用に関する大阪地裁判決。

芸術系の大学について、筆者個人的にはなじみが少ないのですが、一度沖縄県立芸術大学に行って三線を中心とした琉球文化を研究する外国人研究者へのインタヴューを行った記憶があります。多くの芸術系大学は総合大学の中に位置しないで独自展開しているので、大学業界の中でも、知っている人は知っている、知らない人は~の世界観を感じてしまいます。

2019年、京都造形芸術大学が開学30年に合わせて京都芸術大学に名称変更するとに対し京都市立芸術大学が、類似名称の使用を差し止めを求めましたが、結局は裁判となり、その判決がでました。判決的には区別がつくとのことで京都芸術大学が(一審レベルですが)この名称を今後も使ってかまわないとのこと。その根拠となる言葉が市立でそれ以外の京都芸術大学は日常ありふれた言葉で他大学との識別のための重要部分とは言えないという見解。

この判決にについて、筆者個人的な考えは、今回の裁判官の法解釈的はそれはそうなんですが、実際の同じ京都エリアにあって市立という言葉以外同じ大学が二つあることについては、必ず混乱が生じるので現実的に見分けがつくようにしてもらいたく感じます。ですから、判決内容的には?で納得できない部分があるので、市立芸大側はその辺を突いて改めて高裁へ持っていけば違う判決がでるかもしれません。

この判決を英語名称にあてはめてみる

なお、今回の判決は日本語表記についてのもの。それでも、とりあえず判決がでましたので、その判決の趣旨に則り英語の大学名を考えてみます。

京都芸術大学さんは、Kyoto University of the Arts

(旧名 Kyoto University of Art and Design) 

京都市立芸術大学さんは、Kyoto City University of Arts

と、いうことで、市立を表すCity 部分を除けば、定冠詞theを付ける付けないの違いはありますが、旧名にあったDesignが無くなり類似性は高まったと言えます。

それでも(良いか悪いかは別として)今回の判決による表記運用ルールでいくと、両大学ともに用いている、Kyoto・Univerisity・Arts については、日常ありふれた言葉なのでどちらも利用OK、そして両者を識別できるキーとなる City 京都市立芸術大学さんには入っているので、日本語表記同様見分けがつくということ。ですから両英語表記はそのまま使ってかまわないことになります。(筆者解釈)

この解釈を他の事例 "University of Osaka" に当てはめてみる

現在、大阪大学が新大学・大阪公立大学に強く変更を求めているUniversity of Osakaについて考えてみると、日本語表記なら、大阪大学と大阪公立大学は、識別に用いられる重要部分公立がちゃんと入っていますので十分に区別は可能で問題なし。

英語表記について、後出し側の大阪公立大学が新たに主張しているUniversity of Osakaについては、識別に用いられる重要部分Public etcに相当する記載が無いのでルール違反?となるの可能性が生じます。(筆者解釈)

蛇足で、今回の判決は大阪地裁から出ていますので、仮に阪大が同様に訴えるとすれば同じ管轄となる大阪地裁に同じ根拠で主張をしてみたら有利に働くかもしれません。

それでもやはり類似性は良くない

京都芸術大学さんって、筆者的には、テレビでコメンテーター教授を多く輩出したり独自な文化活動を行ったりと個性的な営業方針でその存在価値を高めてきたという印象があります。そして今回も多分他の大学なら躊躇するような名称変更をトライして裁判所からも認められたのだと感じます。

それはそれで結構なことなのですが、現実的に似たような名前の大学が増えていくことは日本国内はもとより海外においても混乱が生じかねません。阪大・大阪公立大学間同様(思ったより)大学同志では調整能力が無いことが分かってきましたので、そろそろ文科省さんが重い腰を上げる時期に来ているのではと感じます。

 

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構造と力―記号論を超えて

構造と力―記号論を超えて

  • 作者:浅田 彰
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University of Osaka と蟷螂之斧(とうろうのおの)の意味合いについて考えてみる

2022年4月に大阪府立大学大阪市立大学が一法人一大学化することに伴い新大学の名称発表が行われました(令和2年6月)。新大学の日本語名称は『大阪公立大学』そして英語名称がUniversity of Osakaに決定。これに敏感に反応したのが大阪大学。本発表後1月余りの間に計4回(第4報)大学HP上で英語の名称変更を求めるとともに新法人が特許庁へ出願している新法人側のUniversity of Osakaの商標登録を認めないための情報登録制度を用いて(膨大な)資料提出を行っています。しかしながら大阪公立大学側からは(正面からの説明は行わず)基本的に無視をし続けています。何人かの友人が阪大側にいて彼らのコメント「JAROに訴えてやる!」(事務職員(もちろん冗談))、「これからどうするつもりですかね」(教授・自然科学系)のような感じ。特に国際畑を中心に仕事をしてきた筆者個人的としては阪大側の主張が100%正しいと思うのと大阪公立大側がなぜこの(トラブル必至の)名称を選択したのかその大学としてのガバナンスが気になります。 

新大学が言うUniversity of Osakaを使って良い理由

以前より、同じ都府県内に、国立大学○▲University・公立大University of ○▲という住み分けで英語名称を用いている大学があり、それが問題になっていない。(事例をあげると、高知大×高知県立大、長崎大×長崎県立大etc)。

阪大側からの指摘があった以降も、世間をお騒がせしているが「この名称を使う資格がある」「今後の新大学の発展により理解される」「海外での周知を徹底する」等のつぶやき程度、正面切って阪大へは説明はしていません。

確かに他にも類似例がいくつかあるのは事実で、それはそのとおりなのですが、だからと言って敢えて混乱を招く名称を選ぶ必要があるのかが疑問。その他の事例も含めて、これらの大学の存在がドメスティックで英語名称はお飾りに過ぎなかったことが大きな理由と思えます。

今回の場合、指定国立大学法人に採択され、国際協働(国際共著論文の数・留学生政策の充実etc)に真剣に力を入れている阪大側にとってはこんなこと(こんなレベルで)で国際化の足を引っ張ってもらいたくないというのは本音だと思えます。 

阪大が言う類似名称の弊害はたくさん 

その1 日本の英語教育のたまもの?

阪大の主張の一つに、海外では、Osaka University も University of Osakaも同じ(とみられる)というものがあります。英語が母語となる海外諸国では微妙に二つの表現を使い分けている事例もありますが、特に欧州言語が母語でない国(例えば日本)の者からするとよく理解できません。

参考になりそうな事例として、筆者が訪問した経験のあるカナダ・オンタリオ州の名門University of Toronto(正式英名称)は、検索エンジンToronto University を入れてもUniversity of Torontoに普通にたどり着きます。ただ、Toronto University の事例と異なり、ひっくり返すと異なる大学になる場合もなくはありません。このような日本の知識・価値観で、運用が難解な英語圏では行われて事例を参考としてまでこの表現を選ばなくても、と感じ、それは阪大だけでなく自分自身のためにもなりそうです。

そして、今の状況。様々な検索エンジンに、University of Osakaと入れてもOsaka University (つまり大阪大学)に行き着きます。その中で,、新たにそして突然同業他社のUniversity of Osaka (大阪公立大学)が割り込んでくるのですから、まず阪大は迷惑必至、そして言い出しっぺの新大学もことある毎に「大阪にはもう一つ大学がありまして…」を説明を行う必要が出てきます。

「表現が違うから大丈夫」的な発想を思いついてしまうのは、ネイティブの英語話者を用いずに初等中等高等教育に至るまで文法中心の英語教育を行う日本独特の英語文化がそうさせるのかもしれません。 

その2 英語以外の言語だとさらに混乱

以上が英語で表現する場合の状況。他の言語ではさらに区別がつかない場合も生じてきます。フランス語など他の言語表記ならさらに区別がつかなくなるようです。

例えば、筆者の訪問した経験のあるカナダ・ケベック州(仏語圏)にあるMcGill University(英語系大学)。仏語表記にするとUniversité McGillとなります。仮に英語名称がUniversity of McGill という表現をしても(仏語文法上)仏語の表記に代替表現はありませんからUniversité McGillで同じになります。(カナダは多文化・多言語主義の国ですから、自然と英語表記・仏語表記の使い分けが行われるので個別事例としてのに解釈を求めるのには苦労がいります)。

同様の表現をする言語はラテン系が多いようですが、そのような諸国の人たちに日本国内で今回のいきさつ話しても納得してもらうのは困難。また多くの英語が母国語でない諸国の人たちは、英語の表記からもう一度自国言語に変換するとなると、もう何が何だかの世界になります。新大学は、これら海外との大学間とのやりとりだけでなく、VISA取得上の渡航先名称に関わるので、各国出入国管理部門の人にも丁寧に説明していく仕事も必要になりそうです。 

その3 海外での公的認証

仏語の続きのお話で、少し専門的な話になりますが、仏語圏などの在外日本公館(例えば在仏・在加公館)でのアポスティーの作業(大学関係なら大学間との公的文書の授受など)でもめんどくさくなるかもしれません。新大学はこのような英語名称の説明をするための作業は産みの苦しみとしてがんばるのも一つですが、全く関係のない阪大側もいろいろなところで「最近似たような名前の大学が近所にできまして~」をやらなくてはなりません。このことは(自分で蒔いた種ですから)新大学側も真摯に阪大とともに協力して対応する必要が生じてきます。 

その4 国際学術誌への投稿

特にこのことが阪大がいらだつことだと思います。日本の研究型大学院大学(旧七帝や東工大など)の研究者はNatureScience を代表する国際学術誌に研究成果を投稿して世界的な評価を得ることが大きな目標として日々の研究活動を進めています。投稿時には当然「どこそこの誰」を英語表記で入れるわけで、そんな中に新たに似た名称の大学が割り込んでこられるのは非常に迷惑な話。同様に国際的な場面で活躍している現大阪市大、大阪府大の研究者たちも新たな説明責任を抱え込むことになります。

 

新大学の意志決定過程が気になる

この名称を決めた新大学名称検討委員会(新法人HP)。2020年4月頃から複数回会議を開催し3候補に絞りこみ6月26日に府知事、市長、法人理事長の三者で最終決定の流れ。この検討委員(6名)の構成は、大阪府副知事、大阪市副市長、新法人経営部門から1名、法人理事長(市大医卒)、市大学長(市大医卒)、府大学長(阪大工卒!)で構成。なお、この構成員6名に女性はゼロ、特に命名には女性目線は必要ないようです。

さらにその下には優秀な府職員と市職員からなる事務部門が法人本部を支えています。まず、委員会構成員の中で気づくのは、そのうち3名は大学教授としてキャリアがあること。(多分)英文の学位論文の審査したり海外のジャーナルへの投稿に関わったくらいの経験はあるはず。まして委員の一人である府大の学長は阪大工卒のキャリア。これらをみても、少なくとも構成員の半数が大学事情に精通している(はず)の人たちがUniversity of Osaka を選ぶと、国内外からどのような反響が出るかについて想像力に欠けていること、その後の阪大側からの主張にも明確(法人HPトップに「本法人の考え方」等を示す程度)な反証は行われていないこと。これは所謂目に見えない同調圧力がこの組織が支配されているとしか思えません。その割にこの英語名称だけは商標登録をちゃっかりしていたりしていて、この「指定国立大阪大学」に一方的にけんかを売る対応を眺めるにつけても大学の危機管理や所謂CSRが出来ていないと筆者は感じます。 

 設置審査にも良いことは…

新大学は未だ設置審査の途上。令和2年10月末までに最終的な設置構想の書類を文科省へ提出することになります。このような大事な時期に波風を立てたままだと、文科省の担当者から(彼らは模様ながめで変えろとは言いませんが)、「阪大側から英語名称に指摘がでてますが大丈夫ですね?今後何か問題が生じれば貴学で適切に対応してくださいね」等々とやんわり釘を刺されるのことは必定だと感じます。 

敬意なき相場観

新大学の今回の対応、同様の行動を、東大、京大に行ったのか?筆者はそうは思えません。阪大(程度)だから(これくらい行ってもいい)という彼ら独自の相場観を感じられます。

新大学は、統合効果で大学規模が国公立で3位(入学定員・近畿圏なら神戸大に匹敵)になるとのコメント(各HPでの広報関係etc)を入れています、が、こちらはあくまで学部レベルでの話、大学院レベルの学生数や研究力は大きく劣ります。阪大側の説明(第3報)のとおり新大学に統合されたにしても、留学生数、科研費の採択件数などは阪大とはダブルスコアはおろかトリプルスコア、関西で言えば学生数は同程度になる神戸大学と比較してもその差は歴然、特に科研費千葉大学岡山大学が当面のライバルの状況。新大学になっても現実的には研究力・国際力の面では阪大・神大にすら遠く及びません。 

もともと今回の新大学構想の根っこは地方の政治力で地方公共団体が2つの大学をもつ経済負担が大きいから、という『コストカットをやってしまえ』が主たる目的。統合当初は一時的にキャンパス移転等で予算がつき所謂見栄えするハコモノできるでしょうが、大阪府・市よりの継続的な経済支援を得て大きく飛躍する素地は見当たりません。自分たちは国立大の連中に負けていないという気概はあるのでしょうがその差は歴然という状況分析を冷静に行う必要があります。 

新大学側が気づかないといけないことは、今対立している相手が指定国立大ということ。そもそも設置趣旨や予算規模が大きく異なる大学(阪大)と不毛な対立をするのではなく自分の立ち位置でより良い大学にしていくことが重要。大阪の狭い中で紛糾していても首都圏その他の地域の人たちは冷めた目しかみてくれないし設立前の新大学の評判を傷つけるばかりです。

筆者としては、対立より協調をして、多少古くさい言葉になりますが、ONE大阪となって両大学が地域を盛り上げて行くという進め方が多くの人たちからの賛同と支援が得られると感じます。

 

阪大側はオトナの対応

今回阪大は「被害者側」になりますが、自大学のHPと文書の送付(と思われる)などによりエビデンスを積み上げながら主張することは、自制が効き大学らしくて好感を持てます。 また、このような大学で突然起こる想定外の危機管理についても(多分)新大学よりも場慣れしている印象も感じます。(半分嫌みになるかもしれませんが多くの不祥事が日常茶飯に起こることが今回は幸いとしているとも感じます。)

だいたい旧7帝規模の国立大学になると文科省キャリアの人が出向しています。
現在法人理事(阪大HP)で在職しているNさんのキャリアをみていると、若いころは学術国際局、研究振興局、そして途中から文科省の国際関係の部門を中心に進み、在米日本大使館参事官、国連代表部公使、阪大にくる直前は文化庁長官官房国際課長、文科省大臣官房国際課長を歴任しています。筆者の見る限り、ここ十年は文科省の中でも仕事のできる国際通でやってきたキャリアの人。当然阪大内ではこの英語名称問題についても大きな影響力をもち、文科省への情報発信力も大きなものがあります。(ときとして大学へ流れてくる文科省キャリアは?の人も来るのですが、今回の騒動のさなか、阪大にとっては非常にラッキーな人が来てくれています)

片や新大学、霞ヶ関文科省にパイプがあるわけでもなく「他にも事例がある」「名乗る資格がある」云々レベルの申し訳でエビデンスてんこ盛りの阪大からの指摘からUniversity of Osaka の正当性を説明するのはかなりしんどそう。仮にがんばりとおしたとしても多くのしこりを残してしまいそうです。


考えられる英文名称

今のところ新大学側は、名称変更の意思を示していませんが、(何か見えない圧で)急に(あっさり)新ネームを発表することも無いではありません。筆者はその事例を幾つかを考えてみます。
基本的にはPublicを入れるのが一番妥当。Public University of Osaka もしくはOsaka Public University を用いれば新大学の有り様をよく理解できると思います。
次いでMetoropolitan。首都の意味ではなく漠然と大都市にある的なイメージでOsaka Metropolitan University あたりも良いイメージを感じます。
個人的にはFree University of Osaka。ベルリン自由大学からの連想ですが、律儀に英文大学名はそのまま日本名称から直訳する必要もありません。
戦前期よりドイツの都市型大学をモデルに大阪市大が作れたこと、滝川事件に由来する自由とのつながりや理念を連想させるなど誇らしく気品があり、最初は取っつきにくいかもしれませんが、中長期的には日本国内でも海外でもおぼえてもらいやすい名前ではないかと思います。なお、この名称の大学は欧州域内に少なくとも3大学あるようです。日本では高等教育機関としては使用している大学はありません。

それでもUniversity of OsakaでがんばるというならOsaka University(OU)University of Osaka(OPU)等の記載で常に略称を入れ表現するしかないと思います。

ついでに良い機会なので日本の大学の英語名称も考え直してみる

新大学がよりどころでとしている同一地域にある類似英語名称(高知大学高知県立大学etc)の交通整理もやっておいた方が良いと感じます。公立大であれば基本としてPublic Prefecture、Cityをいれるか、例外的に他と大学と明白に区別がつく独創的名称なら認める等、公立大学協会あたりが音頭をとればそれほど難しくはないと感じます。また、Tokyo、Osaka、Kyotoなど、それぞれ10を超える地名を冠した紛らわしい大学名についても、海外目線を意識して新名称を模索する方がそれぞれの大学にとって知名度があがると思います。このような知名度アップの事例として、名称変更を行った意味合いは異なりますが、近畿大学さんのKinki University→Kindai University がよい事例になると思います。

結局、今回の騒動は、日本には英語による大学名称を大事にしない国際化が未熟な大学がたくさんあることを世界に知らしめてしまったようです。 

結び

新たに大きな公立大学が生まれるのという本来祝うべき時期に、21世紀に入って20年もたっているこの時代に、こんなレベルの論争と対立が行われていることにショックを感じました。同時に、日本の大学の英語の運用能力がこの程度であること海外にさらしてしまったこともかなりショック。日本の大学の国際化はこの程度のもの。特にこれから大学で学びたい人、大学の事務職員で働く皆さんもこの現実を覚えておくほうが良いと思います。

 

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世界大学めぐりーはじめにー

筆者は、大学職員生活の中で、海外とつながりを持つ仕事に長くついてきました。その中には1年間の海外の大学での実務経験もあったりします。今でも、国立大学では、人気のある庶務系や人事系、経理系の部門と違って『国際』系の職員は、組織化されにくく、人材不足でマイノリティな状況。そんな部門で働いてきたこれまでの経験を備忘録的に書くようにしてみます。流れとしては、北米、中国(と台湾)、タイ、ヨーロッパなどの大学やその状況を紹介、特にカナダのボリュームは多めになります。

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Campanile (Sather Tower)@University of California-Berkeley