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【短編】歯学教育コアカリキュラムを読んで歯医者に行くのが心配になってみる

歯学教育のコアカリを読んでみてがっかりした理由はそのレベルに?がつくから。コアカリですから、基本的な教育・実習内容のポイント列記と理解してますが、それにしても医学教育のコアカリと比べて大きく品質の劣化を感じます。このコアカリ策定には厚労省さんも加わっているはずですのでみんな歯科医療ってこんなもんで構わないと思っているようです。

歯科でも医療行為します それが一番

筆者の一番の心配ごとは、世間の人たちって、歯科医師のやる歯科診療(医療)を軽視しているように感じるから。歯科医師の仕事はチマチマ虫歯の治療で歯を削って何かを充填するだけではではありません。抜歯の際には顎骨にくっついている歯を引き抜く観血的措置をし、特に奥歯・埋伏歯を抜くときは顔面神経に触れることもあり適切な判断・措置が必要です。また、交通事故などでの眼窩底や顎骨骨折手術は歯科口腔外科の歯科医師が行うし、下顎前突症、口唇口蓋裂、各種口腔内の腫瘍なんかも歯科医の担当。最近は高齢者の治療も多いですから、障がい者、認知能力の低い人、高血圧でなんらかの全身症状がでる可能性があるリスクを抱えた患者さんへの治療等々、通常の内科医と同等以上に全身症状のケアが必要な場合も生じます。※筆者は歯科医師ではありませんが、歯学部附属病院医事課で4年勤務した経験があり、口腔領域内での深刻な病気をもった患者さんをたくさん見てきました。

筆者の体験談を言えば、昔々、家族(父・故人)が、近所の歯医者で(多分)う蝕治療を行う際、(多分)古いクラウン(歯冠)を外した時、誤って気管支内に誤嚥したよう。で、その歯科医院内では摘出困難で、結局、大学病院にまで救急搬送されたことがありました。患者全てがそうですが、特に老人相手の歯科治療の時、口腔内のものをヘンなところへ誤嚥させないなんてイロハのイです。

他にも、筆者が現在通う歯医者さんの待合での光景、一人では次回予約日の確定がままならない認知レベルの高齢者さんがいて、隣で眺めているだけで大丈夫かいなと不安になったこと。そんなで歯科診療には様々なリスクは高まっているように感じます。そんなお年寄りだからこそ、認知症の影響で自身でハミガキもできない人には週1回程度でもしっかりした歯石除去などをしてあげないと口腔内環境の悪化がそれ以外の場所への病気に波及していく心配もあります。

歯医者さんも患者も、なにもない平穏な日が続けば Happy ですが、残念ながら、急性期の出来事は起こるし、そのための日ごろからの用意はとても大切です。

歯科治療を甘く緩めるのはとても危険

医学部のイメージから、歯学部も難関・高倍率と思われがちですが、2022年度入学試験で、全体の入学者数は2,174人と入学定員2,468人に満たない状態。入学者数を定員数で割った充足率は全体で88.1%(MEXT医学教育課資料)。国立の有力どころはまだ大丈夫ですが、ローカルなところにある私大歯学部の質が気になります。そんな状態ですから、一部の歯学部は、事実上『歯科医師になれる』⇒『歯科医師国試の受験資格が取得可能』にキャッチフレーズが変わってしまってきています。(このあたり一部の薬学部も同じ)

その一方で、都市部では、歯科医師が余剰で、そのせいか、歯科点数表による保険診療に準拠した治療だけでは収入がしんどいので、『歯を白くしましょう』とか、『保険の歯よりつけ心地の良い歯にしませんか』とか、『インプラントだとしっかり嚙めますよ』とかの自由診療のお誘いをする歯医者さんも結構います。

ですので、歯科医師国家試験については、歯科医師の質的保証を行う必要が増しますし、歯科医師国師合格後の研修制度も医師の臨床研修並みに、充実させる必要があると感じます。時代が変わったから、みたいな理由で日本の歯科医療の質が落とさないようにしてもらいたいものです。

むすび

日本人は手先が器用?とかいう納得しそうで実は意味不明な優越性。そんなの歯科医師さんには通用しません。ちゃんとしっかりしたコアカリやエビデンスに基づくトレーニングを行い使命感をもって歯科医療に励んでいただきたいものです。

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