FOU’s blog

日本の大学 今 未来

歯学部と歯科医のメンタリティーをいろいろ考えてみる

もう数十年前のことになりましが、筆者は歯学部を卒業したての人と仲良しな時がありました。

※(筆者としては)書いている話は間違ってはいませんが、場所や日時が特定されるとややこしいので基本的には全て仲良しの歯医者さんから聞いた話にぼかしてしておきます。それに前世紀のお話。この彼は30歳前に歯学部に再入学した変わり種の人。昔はやんちゃだった皆さんもとっくに社会的責任が求められる年代になってしまいました。

口の中だけというコンプレックス

そもそも歯学部と医学部の違いを患者さん的な立場で言うと、歯医者さんは口の中だけ医療行為が出来る人たち。ですから、歯医者さんは熱いコーヒーを飲んで舌を火傷してしまったら(特に口腔外科を標榜している)歯医者さんは治療をしてくれます。でも、熱いコーヒーが手にもかかって水ぶくれになっていたとしても、歯医者さんは『こちらは外科か皮膚科に行ってください』になります。反対に(医学部を出た)お医者さんは、(専門領域の違いはありますが)手の水ぶくれも、口の中の舌もどちらも治療ができます。そこが(わかりやすい)歯医者さんとお医者さんの違い。

仲良しだったアタマの良い卒業したての歯科医師の彼との会話で今でも記憶に残っているものがあります。彼が某病院で急患対応の夜の当直(バイト)をしていた際、アタマの悪い医学部出身の医師(もちろん医師免許はあり)と当直が一緒となったとのこと。その二人で、深夜、急患が運ばれてきて対応、アタマの悪い医師が、容体を見て診断を下し処置を進めるのですが、どうもおかしい。アタマの良い歯科医師が一つ二つ治療方針について質問をすると(最初のうちは)何を歯科医師ごときが!的な態度で相手にしていなかったのですが、次第にしどろもどろになり結局治療のやり直しになったとのこと。※こんなノリで医者が急患の対応をしていること(もある)については、それはそれで議論が必要かもしれませんがこの場ではその評価は避けます。とりあえずアタマの良い歯科医師さん的にはどうだ医者にかったぞっ!と勝利の余韻に浸ることが出来たそうな。

特に彼の専門領域は、口腔外科の中でも、全麻下で顎関節症や下顎前突症の手術をたくさん手がけていたので、患者の全身症状の把握は通常の外科医と変わらないレベルだったと思います。また、通常の口の中の治療でも、高血圧や心疾患をもった患者がいるわけなんで全身症状のチェックができないと危険です。そこで彼とお話をしてて感じたことは、(まだ若いこともありストレートに)彼が医者に勝ててうれしい!の気持ちが満ちていたということ。この言葉の評価にもいろいろありますが、筆者的には歯医者は医者に対してのコンプレックスがあることを反対に感じてしまいます。

歯医者さんをナメてはいけない

コロナワクチン接種の際も、厚労省が人が足りないので歯科医にも協力してもらおうという声が出たら、医師会側から(あいつら大丈夫かよ的な上から目線で)不要論が出て、メディアからも歯科医も接種へ!的なちょっと懐疑的な目でとりあげられていました。ただ、それには、一部の歯医者さんで良く行なわれる自由診療で歯を白くする、歯並びキレイにする歯列矯正をする、インプラントで歯を復活させる的な診療に特化している所謂富裕者向けのサービスを行なっていることも原因のように筆者は感じます。

なお、普通の街中の歯医者さんでも所謂親知らず(智歯・第三大臼歯)などの埋伏歯の抜歯が必要な際は、自分が卒業した大学の病院や口腔外科をやっている総合病院に紹介状を書いて自分ではやらない人が多くいます。(歯医者ではない)筆者が思うその理由は、臨床上の経験が少ない(最近抜いていない)、診療時間に(これは外科手術ですから)抜歯して、患者さんが帰宅後抜歯後出血や予想外の事が起こった時(診療時間が終わっていると)対応できない、(外科手術なので)抜歯後ままあるそこそこの出血や顔面が大きく腫れるようなことが起こると知識の乏しい患者にヤブ歯医者扱いされることも懸念材料になるのかもしれません。

特に各地の歯学部附属病院では口腔内領域での悪性腫瘍の治療、口唇口蓋裂の長期的な治療、顎骨周りの骨折治療など普通の人たちがイメージするお医者さんの仕事をやっている歯医者さんもいます。ですので、歯学部附属病院では入院も手術もやってますし、患者さんも(重篤な全身症状がでたら転院することもありますが)死亡退院することもあります。

※筆者が謎に思っていることがあります。某有名タレントさんの舌がんの件。(筆者はもちろん歯科医ではありませんが)舌がんは病変が目に見えるところに出来るのと、患者さんの舌の違和感があるので(多分タレントさんなら定期的に歯科治療はしてるでしょうから)普通の歯科診療時に普通の歯医者さんなら、病変を確認し病理検査をすれば、早期に発見できた気がしてなりません。残念ですが様々な不幸が重なって進行が進んでしまったことが悔やまれます。一般論として特に口腔内の悪性腫瘍はタバコやアルコールに起因する(直接影響を受ける部位でもある)ものが多いので気をつけましょう。

レベル差を懸念

東日本では、東京医科歯科大、北大、東北大、西日本なら、阪大、九大、広大、岡大、徳島大あたりの国立と旧制の歯科医専を起源とする大学あたりは研究も臨床もそれなりに大丈夫だと思いますが、それ以外の歯学部とそこで学ぶ学生は格別のがんばりが必要になります。歯学部設置の地域偏在性や(都市部は充足しているように感じますが)実際歯科医は日本全国で足りているのかいないのかなどなど身近な問題として考える時期ではないかと感じます。