第三ラウンドでもまだまったりした内容。だいぶ眠たくなってきましたがあっというまに7月28日の第四回会議で答申(案)が、そして8月末の第五回で最終答申がでますのでがんばってフォローしていきましょう!
なんとなく『議論が出尽くした感』を感じてしまう理由
もともとこの会議は、昨年秋、加計学園さん側から、『私大でやるにはしんどいので、公立大に移行してください、あとはお任せします』から始まったもの。これに対し銚子市さん側は、市が関与して大学を誘致した手前もあり、公立大学への移行できるかどうか検討しています。一方加計学園さんは、会議が始まってからも『公立化がダメなら撤退します、切り売りもしてほしくありません』等の追加表明もありました。ですので、加計学園さんとしては、この大学とは縁を切りたいとはっきりとした表明済み。これに対して委員からは、(公立大学化するには)『学部学科の再編議論は避けられない』『(大学のスリム化は必須。現状のままで市に押し付けようとしても進まない』等考え方の基本部分での隔たりは大きなものになっています。
筆者の見た感じ、第一回~三回の会議を眺めている限り、公立大学化の話はどうみても詰んでいるので、会議の方向性を千葉科学大の終活作業に改めるくらいしか思いつきません。それでも、お互い知恵を出し合って会議の結末(答申)を出すのであれば、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた 高等教育の在り方という、最近、MEXTでよく使われている考え方(後述)を踏まえることが大切になります。
財務状況の把握と先行事例の分析
四月から設置されたこの検討会議(委員会)は、10人構成、その半分が銚子市に関係する人たち、もう半分はいわゆる外部有識者の人たち。特に筆者がみたところ、外部有識者さんに関しては、誰がみても文句の言えない良い人選をしています。その中には教育機関の公会計を専門としている公認会計士さんや地方行政やまちづくりを得意とされる先生もいて、大学経営や銚子市側の財務状況を検討するには的確な評価が可能な好メンバー。
①お金(財務状況)
第三回の会議資料の中で議論の中核となりそうなのは、公立大学法人化財務シミュレーション(銚子市作成)(パワポで9枚)で、入学定員の充足状況を仮定(シミュレーション)して、どのくらい学生が入学したらやっていけるか検討したもの。そのため充足状況を3パターン作って試算しています。ぱっと眺めると複雑な数値設定をしているようにみえますが、東京オリンピックや大阪万博とかの予算・必要経費シュミレーションと同じような机上の論理で思ったよりも…的な言い訳で大きな誤差が生じる可能性を十分感じます。ですので、この資料も含め、今回の資料のみで法人化の有無を判断するのはかなりのチャレンジャーです。
②先行事例をみて ー他の地域もいろいろ大変そうー
他の公立大学などの運営状況について(資料1)についてでは、公立大学化をした(しなかった)大学の検証をしています。その内容のいくつかを取り上げてみます。
2 公立大学法人化を見送られた(難色を示された)私立大学 の事例(3つ)の中に姫路独協大学さんがありました。筆者の地元県なのでこちらを中心に考えます。人口50万人余りの兵庫県姫路市にある私立大学で、1980年代、時代に先駆け姫路市のサポートによる公設民営タイプの大学として発足しています。そうすると、なんとなく千葉科学大学誘致時、施設等に80億円以上投資した銚子市さんと同じような雰囲気も。
で、ここから近くに住んでいる筆者としての印象。昔の区割りでいう播磨地域は、明石市より西側の兵庫県。(なお、筆者の地元神戸市は、ギリギリ摂津地域の西の端)。その播磨にある私立大学ってあまり元気がありません。姫路独協大学さんもそうですし、姫路大学さん、兵庫大学さん等々皆苦しい状況。どうも姫路を中心とした播磨地域の高校生たちの目線は、JRに乗れば1時間で行ける神戸・大阪エリアの大学に目が向いています。反対に、神戸・大阪の高校生たちにとっては、わざわざ播磨地域の大学まで学びに行く必要性を感じていない状況。これを眺めていると首都圏⇔銚子市の関係にも当てはまりそう。また、公立大学法人化することによる周辺大学(同業他社)への影響も議論(看護学部の重複)されたようですが、それが姫路大学さんと兵庫大学さんあたり。千葉科学大学はスタンドアローン的な存在ですが、それでも同じような状況を想定ししっかりした説明を行わないと周辺の大学から批判を受けかねません。
その顛末ですが、公立化を断られた姫路独協大学薬学部さんは、2024年4年から募集停止となりました。何のめぐりあわせかわかりませんが、姫路獨協大学薬学部さんは設立当初から低迷し、そのままフェードアウトに。近年、学生が集まらないことを理由とした私大薬学部の募集停止はこちらが初めてだと思います。繰り返しいろいろと書いているとおり、6年制が基本の薬学部ですから、学部をクローズしてからも6年間は普通に在学生が残る勘定。学内での教育だけでなく外部の施設での実習のケアも必要となりますので、その道のりはとても長くなります。
その他、新潟産業大学さん、長浜バイオ大学さんの見送り事例についてをあげていますが、それぞれの地域において、それぞれの事情で公立大学化しなかったことを紹介。どちらとも将来に不安があれば地方公共団体としても協力はできないことを理由としています。
また、公立大学化ではなく、千葉科学大学さんの開設時のように、地方公共団体が私大を誘致する施策も考えられます。こちらも近年、京都看護大学四万十看護学部構想(現地看護学校の事業継承により大学誘致を計画し、設置構想時は2023年4月開学予定でしたが最終的に誘致断念)のようにムリなことへの気づき?的なものもあります。このケースをみていても、地方公共団体が、少子化と過疎地域の活性化という理由で大学を使うのはやめた方が無難。
※会議資料のマチガイ発見:3 公立化を要望しているその他の私立大学 の ⑴ 九州看護福祉大学さんは、熊本県や、玉名市をはじめとする旧2市10町の財政支援と、官民の長い誘致運動が実を結ん(だようで)「公設民営」の公立大学としてすでに機能しています。(多分、会議前後に誰かが気づいて修正しているとは思います。公開資料ですから、誰にでも見られるので誰かさんから細かい記載をチェックされたりするもんです。)
私案:大学を存続する場合の将来
ウダウダ言ってるだけでは建設的ではありませんので、筆者の考えるる最善の将来構想も考えてみます。学部の再編については、薬学部は銚子市に設置する需要・必要性に乏しいので廃止。文系学部はリベラルアーツっぽい 従前のスタイルにはこだわらない、地域での公務員の候補者になれるような人物が育つ学部に再編。看護学部は看護学とともに理学療法やリハビリ等の分野を追加・充実し地域に貢献できるような人材育成を目指す方向が妥当と思えます。(書くだけならカンタンなんだなぁ…)
別の気づき ー思ったより加計学園さんって…ー
筆者なりに誤解していたかもしれないこと。加計学園って魑魅魍魎の世界を跋扈(ばっこ)するやり手の学校法人かと思っていたのかもしれません。その誤った?イメージとして、メディアでの理事長さんが政治家さんとゴルフしたり美味しいそうなお酒を飲んだりのシーンが目に焼きついてしまったことによりますが、その実体は、岡山県にある理科系大学を中心とした中規模学校法人。岡山県内の評判は知りませんが、お隣の兵庫県に住んでいる筆者には、この大学に関する情報は届きませんし、この大学を目指す高校生の話も聞きません。そう考えてみると、学園幹部の方の政治家さんや霞が関関係者へのアプローチもそれなりに大学の存亡をかけた切実な営業活動だったのかもしれません。そうであれば、将来的に経営リスクを抱える大学があるのなら早めに見切りをつけたいお気持ちがあるのかもしれません。
(今さらですが)会議の名前を変えてみては?
加計学園側からの申し出があったからとはいえ、検討事項が、法人化の可否を中心に論じられていています。そうするとどうしても認める・認めないのゼロサム的な二元論による解決方法になりがちに。答申のあとも、どちらの結果になるとしてもぎくしゃくしたものになるかもしれません。
『千葉科学大学の建て直しを考える会議』 とか…
公立大学法人化を検討するための視点とは別に、(例えば)公立大学にはしないまでも市側の関与を増やし、大学規模を適正に縮小し、PPP/PFI的に公共経営的なアプローチで市が大学を支える方式をとり、その財政的な余力で学生の授業料負担を軽減するような仕組みづくりの検討が良いように感じます(言うのは適当で簡単で実際は難しい…)
第四回開催でいよいよ答申(素案)が出ます ー急転直下はあるのかー
第4回千葉科学大学公立大学法人化検討委員会は、7月28日(日曜日)午後3時30分から開催予定。議題を見てみると、答申(素案)が出される予定。筆者の経験上、このような地方公共団体の委員の委嘱の相場って高くても一回2万円未満(別途旅費あり)程度。楽な座ってるだけの会議もあるのかもしれませんが、この会議は責任重大、皆さん一生懸命考えているんだと思います。がんばってください。今回の答申(案)は、同じような状況を抱える地方私大・地方公共団体等を中心に全国的にも注目されている(はず)です。
PPP/PFIの取り組みは今のトレンド(うまくいくかは不明)
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そもそも公立大学とは
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fou.hatenadiary.jp