FOU’s blog

日本の大学 今 未来

大学入試の問題点を考えてみる 英語教育の不思議

こちらでは、大学職員側からの目線で、初等中等レベルでの英語教育と入試を考えてみます。大学入試にかかることも含めていますが、高校生にはキツイ内容になりました、それでも興味のある方は是非ご一読を。

はじめに JETプログラム参加の声から

JETプログラムとは、語学指導等を行う外国青年招致事業The Japan Exchange and Teaching Programme のことで欧米諸国を中心に年間5000人を超える若者を日本へ招致し、主として全国の地方公共団体に配属、外国語指導助手ALT: Assistant Language Teacher国際交流員 CIR: Coordinator for International Relations のような名前で学校において英語教育のサポート、市役所の国際交流のような部門で主として英語の能力を活かした職務につき一定の報酬を得ることができます。期間は1年で延長も可。一応世界最大規模の英語学習スタッフの招致事業となっています。筆者個人的には(他に誰も言ってませんが)政府が主導するパブリックなワーホリのイメージを持っています。来日してくれたJETの若者は、定められた期間、比較的簡単めのお仕事をすることにより一定の報酬を得て(彼らの立場としては)日本を楽しむことができます。また、帰国した後もJETでの経験は(日本政府のお墨付き事業なので)キャリアパスとして活きそうです。念のためそんなJETの気になる部分も少々、募集形態がざっくりのため、全てのJET来日者が崇高な目的と使命感を持ってくれていないという状況、また、ALTとなる外国人にしても一定の教育水準はクリアしていますが、Second Language として日本人学生に対して特別に英語を教えるメソッドをもっているわけではないこと、あたりがウイークポイントと言えます。筆者個人的には、そのような負の部分も織り込んでもJETを継続することは悪いことではないと思います。でないと(特に地方で)中高生がナマの英語を話す人と接する機会がまた一つ失われます。

大学とJETプログラムの関係、直接関わり合いはありませんが、JET参加者が、その後、日本にさらに興味をもつことにより、日本の大学(院)に入学したり、働いたりということもあったりします。

筆者とJETの最初の関わり合いは、McGill Univ.にいたころ、文学部東アジア学科所属の学生(女性)がJETで九州の地方公共団体(いわゆる市役所)の国際交流部門での配属CIRになっていました。彼女の日本語はN1レベル、ケベクワなので英語も仏語もOKでしたので(多分)市役所では貴重な戦力になったと思います。Calgaryでは日本へ送りだす選考をする人たちとお話をしたことも。そして日本国内では、大学で行われた国際関係の講演会に参加した際、JETで来日後大学でポジションを得た人の滞在記的なお話を聞く機会がありました。このお話、筆者個人的に大変深刻に受け止めました。で、そのお話の要点は、

ATL終了者の言葉で一番感じたことは、英語教育の国際通用性の無さ。(英語を話す上で優先順位が低いというかどうでもいい)文法上の人称、時制などの正確性、単語(単数・複数)やイディオムなどの暗記物に重点を置き過ぎているのでは、ということ。このことについては、筆者個人的は同意できます。マギルのESLで学んだ際の teaching method とは明らかに(悪い方向で)異なります。以下では何故日本での英語教育がヘンなのに是正されないかいろいろ考えます。

日本の英語教育の不思議  初等中等教育における英語教員の英語レベルを考えてみる

検索エンジン文部科学省英語教育実施状況調査 あたりでググればたくさんでてきますが、英語を教える教員の英語能力の圧倒的な低さ。

普通に高校の英語教師として教壇に立っている先生が、英語の検定試験を受けてみたら、という普通にありふれた能力評価だと思っていたのですが、その結果は惨憺たるもので、今現在でなく、今後の英語教員養成のため、英検準1級、TOEFL iBT80点、TOEIC 730点あたりが成果目標とすべき目安とおかれています。すなわち、現在のところは、この数値を下回る英語教師がたくさんいて教えていることがわかります。このお話というかこの事実と改善に向かう知恵の無い日本社会には本当にがっかりです。

大学の国際交流課・留学生課的な部門で非常勤職員の募集をしてみるとTOEIC800以上のスコアをもつ人が(とても安い給料なのに)わんさか応募してきます。そんなで国際交流で飯食っている大学職員からすると、石を投げたらすぐにあたる程度のイメージで日本中のそこいらにその程度のスコアを取得している人は満ちていると思っていたら、そうではないらしい。筆者には、何故そんな能力でプロの英語教師をやれて飯を食っていることができるのかが大きな衝撃。そんな先生が40名編成のクラスでレベルチェックも行なわれていない生徒に一方的に座学的な授業をするんですから英語能力向上なんて絶望的な状況になってしまいます。

※彼らを少しフォローするなら、筆者の経験上、かなり高いTOEICTOEFLのスコアを持っていても、海外からの簡単なビジネスメールや電話応対が出来ない人はわんさか見てきました。また、エビデンスはもっていませんが、英語が使える人でも、40歳を超えて英語検定試験を受けると(若い時と比べ)スコアが伸び悩むことになると思います。ですので、一概にスコアだけでは推し量れないところはありますが、これを彼らへのハンディキャップとしてあげても、大半がTOEIC600台レベルの人たちが、現役教員として生徒にたちに英語を教えているという現実は、日本の国際化の進展が望めない原因と感じてしまいます。

TOEICTOEFLなどの英語検定試験は、試験自体はいつも同じパターン&レイアウトで作られているので何度か受験すると受験テクニック的なコツがわかり(追加の勉強していなくても)かなりの得点の向上は見込めます。それこそ彼らは英語教育のプロなんだから、ちょっとづつでも時間をかけて頑張れば良いのに、こんな低いスコアしか出せなくて、それで学校で英語の授業やってて、恥ずかしくないのか謎。確かに中高の先生たちは、朝から校門に立ち、夕方からクラブ活動の指導をし、夜になったら繁華街を非行防止の巡回をし、教え子が二度と戦場に行かないよう日々組合活動しないといけない状況で英語教育の研鑽までなかなか手が届きにくいところですがなんとかがんばっていただきたいものです。

大学受験予備校も同じ

この傾向は予備校も同様。受験の神様的な存在になる人物はみんな日本人。アメリカやイギリスの有名どころの大学で英語学や英語教育を専門的に学んだような人物はお呼びではなく、ひたすら日本の大学受験で東大だの京大だのに合格した人物の受験テクニックの方がもてはやされることからみても、北米でごく一般的に行なわれているESL的な手法は全く必要ないことが分かります。

このことは根が深くもっとたくさん書けそうなのですが、もうそろそろにして、以上のようなことで筆者が感じたことは、日本の中高では、常に英語教育は、日本人教師から日本人生徒が教わる・日本人教師が日本人生徒へ教えるというのが基本パターン。英語を教わる中高生はネイティブと話す機会は圧倒的に少ない中、こんな日本人同志でやる英語教育を6年も続けているところが、いくら教えても英語能力が向上しない理由の一つだと思います。そんな英語教育は、当然大学入試にも影響します。

共通テストで外部英語テスト導入がダメになった理由を(疑いをもって)考えてみる

令和3年夏にMEXTは、あれだけやるやる言っていた外部英語テストの導入を最終的に見送りました。その理由は、

①受検に係る地域的事情への対応(地方では英語試験が受けれないらしい)

②受検に係る経済的事情(受検料や複数回受検に伴う負担等)への対応

③高等学校教育への影響 

あたり。①②については、『予算措置と工夫』でいくらでも克服可能。単なる都合の良い言い訳に過ぎず導入を見送る主たる理由になり得ません。③について、導入反対の人が言いたいことは『中高は学習指導要綱に基づいて教育してるのに、急に枠外の試験を導入すると今やっている教育が根底から覆る』から困るということ。制度設計上確かにそのとおりなのですが、英語をしゃべっている国がやっている英語能力試験の利用を否定すると言うのは、なんだかヘンだろの気分になります。

読んでいて気づく人もいるかもしれませんが、なんだかホントは別の理由を感じていまいます。それが以下。

まず、教員側。本音ベースでTOEIC600台のスコアしか持たない英語の先生が、生徒に『このレベルの大学いくんやったらスコアは800以上ないとあかんで…』なんて、どの面下げて進学指導の場で言えるのか。お笑いネタになってしますがこれが日本の英語教育の現状。今の初等中等レベルの先生たち(教育委員会)に外部英語試験導入の対応をするのは筆者には困難に見えます。

このことには、同様に困っている業界があるので強力なタッグをくんでくれそう。大学受験予備校も同様に大きな危機感があるはず。英語の試験は大学入試の中でも中核科目なのでドル箱の存在。そのこれまで培ってきた受験テクニックがご破算になって(今さら)TOEFLの得点アップ講座を一からやり直さねばなりません。それは彼らにとってもやってもらいたくないこと。

以上のような勢力の圧(あつ)がメディアをうまく使って、外部英語テストを先送りしたと感じます。また、この事例以外にも筆者が気になるのは、①高校で(特に)TOEFL試験への取組みをおろそかにすると英語が得意な生徒のアメリカ・カナダなど(高卒後すぐに)海外への大学へ進学したいとという思い・機会を阻むことになる。②中高の英語教育について、大学受験と結びつけがちだが、中学、高校それぞれで社会へ出る人たちの存在を忘れてはいけない。大学進学のためだけでなく、中高の段階で一定水準の話せる・使える英語を身につけてもらうという視点が吹っ飛んでいる、についても意識していく必要があります。

そんな中での大学入試

出題ミスとその指摘が怖いので、私大はマークシートのクイズ形式の出題が中心になります。そのため難しい単語を知ってるか的な暗記力ばかりが求められてしまいます。学生の能力を測る上では英作文を書いてもらうのは悪いことではありませんが、出題時、書いてもらうセンテンスが長くなれば長くなるほど、採点者の与える得点の差異が生じる可能性があるので入試で課すのは消極的になりがち。筆者個人的には、所謂長文読解を中心にした試験で多方向から受験生の理解度を知るのが国際通用性もありそうで良いことだと考えます。

まとめ

全然まとまりませんが、日本の英語教育は大学入学前から課題が多いと感じます。大学においてもTOEFLのスコアを大学院入試時の英語試験の代替として用いたり、英語の出来る学生はGMATだのGREへの関心を示しますが少し出遅れ感が。すぐに解決できそうな妙案も見当たりません。こんなことがあるんだなと、気になる方は少しだけ心に留めていただければと思います。以下ご参考。

知ってそうで知らないJETプログラム。たくさんの人が来日するわりにあまり知られていないような。折角きてくれているんだから、JSPSの外国人特別研究員(PD中心)の行なっているサイエンス・ダイアログプログラムのような高校に出かけて出張講義をするような仕組みとかあっても良いのになあ、と感じます。

jetprogramme.org

平成26年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果概要 (MEXT資料/pdf多くの数値が右肩あがりでよく頑張っているようにみえます、が、例えば海外英語研修をした教育委員会が10%では先行き不安です。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/06/04/1358566_02_1.pdf

大学入試のあり方に関する検討会議(第28回)(MEXT資料)【参考資料1】大学入試における英語民間試験活用及び記述式問題の導入に係る検討経緯の整理 に方向転換した理由(言い訳)が書かれています。

www.mext.go.jp

令和3年度英語教育改善プラン 都道府県ごとにどんなふうにして英語教育をよくしていくかのとりまとめ最新版。日本国内で長くて数週間の研修をして英語能力が伸びるようなら是非やってもらいたいものです。

www.mext.go.jp