FOU’s blog

日本の大学 今 未来

公立大学 未来を考えてみると少し心配

最近公立大学の行く末が気になります。短期的に受験したり学んだりする人に大きな影響が出るわけではありませんが、大学内部の状況は褒められたものではありません。特に人材難は深刻。

どんどん増える公立大学

まず、文科省で、大学を所管しているところ。私立大学は私学部 国立大学は国立大学法人支援課公立大学は高等教育局大学振興課公立大学文科省内での直接的な責任者は部長ではなく、課長でもなく、なんと係長さんがもろもろを仕切っていらしゃいます。このレベルの文科省の係長って国立大との人事交流で充てられそうなポジションですので場合によったら筆者のような?もしくは筆者程度の?レベルの(多分優秀な?)人物が座っていたかもの状況。多分文科省が公式に説明(言い訳)するその理由は(多分)公的機関が所掌しているという性善説的な信頼と小規模大学が多く手間暇がかからないことかなと思います。

それが、何気なくぼーっとしていると?気がつけば公立大学の数は100大学に迫り国立大学の数を追い抜いてしまいました。その大学たちですが、一つの系統だったしっかりした運営をしているのではなく、地方でダメになった私立大学の救済策として公立大学化したもの、もともと地方公共団体が運営していた看護学校や短期大学をまとめて統合して4年制大学化したようなもの、そして昔からなんとなく公立大学としてやってきていたもの等々それぞれの独自性を有しているのが特色。反対に、現在でも地方独立行政法人化せず地方公共団体が直轄で運営している場合もあります。

それでも基本的には法令順守をしているので受験する側、学ぶ側には学費などそれなりのメリットはありますが、筆者としては、大学のあり方が気になります。

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財政面が気になる

全ての地方公共団体は財政上余裕がありません。特に地方独法化した公立大学の多くは国立大学以上の効率化を求められ、教職員全ての数減らしや研究費(大学独自)や管理運営費の削減が行われています。独法化したからといって授業料を自由に上げるわけでもなく、反対に大学所在地に住んでいる受験生にはさらなる入学料・授業料の減額を行っている状況なので大学独自で収入を増やすことは不可能。そのため、建物の建替えや学部の増設とかの特別のイベントがない限り新たに予算が追加されるのは困難。一番大きな影響がでるのは自然科学系で、医学部なら病院収入である程度予算確保はできるでしょうが、工学部、薬学部、看護学部のような学部を地方公共団体の予算で維持するのはそれなりにしんどくなってくると思います。今後も公立大学の増加が予想されますのでその動きを見守る必要があると思います。

地方政治が気になる

一番わかりやすい事例が、大阪府立大学大阪市立大学との統合。当時の府知事、市長が同じ政党出身者となり、かなりのこじつけと勢いで一つにまとめてしまいました。何も知らない素人的にはわかりやすい?『一つにまとめれば無駄が省けて効率化できスケールメリットも期待できる』の論法ですが、急にそんなことが決められて大学関係者の間では困惑するばかり。このような感じで知事選挙や市長選挙、議会選挙の結果が突然大学の運営に大きな影響を与える部分が大。国・文科省レベルならスパコンの予算を仕分けで『一番じゃないとダメなのか?』と削減された事例がありました。教育研究上の一貫性については(筆者的には)どの政党が政権をとっても配慮を求めたいものです。

大学職員養成の立ち遅れ・人材が気になる

筆者が一番気になる部分がココ。大学職員になりたい!という若者はブログなどみているとそれなりにいそうですが、そんな人たちの話題の中で公立大学に就職という話はあまり聞きません。それもそのはず、多くの公立大学では(常勤)職員の募集をやっていないから。それはもともと主要な職員は県や市の職員で通常のルーティーンの異動の中で大学事務が行われているからが大きな理由。そして、それ以外の現場いる職員は3年任期付きの非常勤職員でまかなっているやり方が絶対多数。わかりやすいたとえ話をすれば、3月まで県の土木事務所で勤務していていた人が異動で4月から公立大学の教務課勤務となりさらに数年すれば県立病院の医事課へ異動で去っていくような人事体制で大学の事務をやっています。ですからお仕事は引継ぎとマニュアル頼りとなり定型的な業務以外の複雑な仕事はその職員個人の能力に依存をせざるを得ない状況。特に影響がでると感じるのは、研究協力部門での科研費の申請と執行方法、例えば大型科研の申請方法や科研の研究代表者が年度終わりにたくさん未執行額があったりした際のさばき方なんて県の経理のレベルの知識と経験値で対応してうまくいくわけありません。このようなことは、国際交流や留学生、教務、学務の仕事でも同様。そのため県職員たちは非常勤の人たちに(わからない)お仕事を丸投げ状態にする悪循環が生じてしまいます。そのため、筆者の経験値から非常に高い自信をもって言えることは、非常に多くの(ほとんどの)公立大学の大学運営能力は(少なくとも)国立大学よりも劣るということ。

それでも、規模の大きな公立大学では(法人化すれば)自前での職員採用をすることを試みてはいますが、新採なら(ノウハウがないので)人材育成の方法が成熟してない、係長や課長職で一本釣り採用してみても仕事のマッチングがうまくいかないなど、どうもうまく進んでいるように見えません。方や小規模公立大学では、そもそも職員数が少ないので、個別に(例えば一人だけ)常勤職員を新たに雇用して人材育成すること自体が非常に困難。いくらどんなに頑張ってもプロパーの優れた大学職員人材が育たない負のスパイラルが待っています。

このことは、教員人事でも同じ。(イメージ的に、そして残念ながら)若手の優秀人材が地方の公立大学で教授になって定着する事を期待することも結構困難。国立大学間なら法人化したにしても給与水準がある程度把握されているので割愛しても割愛されても比較的スムーズに他の大学へ移ることが可能です。これは人材流動性の面でまだ救いがありますが、公立大学の場合はみんなバラバラでまとまりがなく法人ごとの給与水準の違いが原因となり違う大学へ転職するにも躊躇ができてしまいます。

まとめ

さまざまなメディア・ブログを見渡しても、公立大学について語っているもの自体ごくわずか。わかりやすい事例をあげれば、大阪公立大学の誕生のようなことについても、統合効果で偏差値アップ!、都心にキャンパス移転でさらなる発展!などなど肯定的なものばかり。ちょっと視点を変えればすぐに見えてくる現実を取り上げてくれていません。このことについてはブログネタとしても盛り上がる話でもありませんが、それでもがんばって今後も取り上げていくようにします。

 

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