FOU’s blog

日本の大学 今 未来

【短編】定年再就職教授の嘆き節をこっちのほうが嘆いてみる

この状況を知っている人たちはわずか… これから大学を受験するひとたちや家族もアタマに入れておく方が良いかもしません。

私立大学に驚く!

この人物、ざっくり社会科学系学部・大学院の先生のお話。ちょっと前に割愛のお話での登場人物でもあります。筆者とすれば、普通教員の他大学への異動とは、例えば学会や研究者仲間のコネで進んでいくもんだと思っていましたが、この先生の場合、マジメ?に教員公募に応募して転職先が決まったようです。そういえば『〇△大学に応募したけど落ちたわ』のような話も以前していらっしゃいました。それが昨年あたりに執筆した本(非研究系)が大手新聞社などでも評価をされ、Amazon でも売り上げ上位にランクされちょっとご機嫌、そして今の大学は退職の道へ。この名著?による後押しがあったかはなんとも言えません。

そんな先生が研究室等の片付けに訪れた際のお言葉が以下の感じ。(多少大阪弁を誇張している部分はあります。)

R(Retired)『向こうの大学大変やねん』

H(Hissha)『どうしたんですか?』

R『何もないのに月曜日から金曜日まで大学に出勤せんとあかんみたいなんや。家(アパート)どうしょうか悩んでもうて…』

➡新しい大学から平日は全部出勤を求められたとのこと。で、この先生、これまでの調子で、1週間に1~2日の勤務なら新幹線での日帰り(名古屋らしい)をもくろんでいたご様子。なお、そもそもこの人の住所は(大阪の大学で教えていた際も中京エリアに居住)、ちなみにこの人だけが特別ではなく遠方から教えにくる先生は山ほどいます。

H『アッタリマエダのクラッカーの話ですやん!大学で働いてるんやから毎日出勤するのが普通でしょ!』と筆者は厳しく?叱責?

で、家(アパート)は新幹線の最寄り駅周辺に安いアパート借りたようです。彼が驚いた理由の根幹はなぜ何もないのに大学へ行かなきゃいけないのか?という当たり前にも感じてしまう理屈。

彼をフォローするつもりは微塵もありませんが、この人も国公立大学で教える人文社会科学系の先生の縮図。何十年も授業と会議の時しか大学に来なくて良かったツケが今頃めぐってきた感じ。これから働く私立大学は、西日本でなんとか定員充足を維持できるか微妙なレベルで、当然学ぶ学生のユニバーサルアクセスレベル。そりゃ、大学としてオープンキャンパスもたくさんやるだろうし、そんなレベルの学生さんだからこそ、オフィスアワーをしっかり設けて Face to Face で学生への教育指導を行わなきゃいけません。それに私大なら教授会以上に理事会の偉い人の大学運営に関する決定(命令?)に異を唱えることはできません。話によるこの大学定年制度はなく自己申告制でいつもまでもいられるようですが、いつまで耐えられるか…。これからは心を入れ直して明鏡止水でがんばっていただきたいものです。

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【短編】千葉科学大学ってこれからどうなるのか考えてみる2 ーダメ。ゼッタイ。ー

今回は第一ラウンドの軽いジャブですがそれでも意表を突かれた銚子市&委員会側は…

駆け引き?が興味深い

遅れていた千葉科学大学法人化検討委員会がようやく始まりました。まずは、千葉科学大学加計学園)側の先制パンチの撤退発言に銚子市・委員会側はびっくりしたようです。

筆者が思うに、大きなことを決める会議ですので、冒頭で軽いジャブの応酬と思えばこんなものかもしれません。そのため戦術的にはこんなやり方はアリだと思いますが、、ただ、そうは言っても大学の今後の在り方を話し合会議の初回で、身売り(公立大学化)しないと撤退する=法人(加計学園)として大学経営を放棄すると言い放つのは極めて下品で無責任に感じます。どうも大学(加計学園)側からすると相手側の、衣の下から鎧をチラ見せつけて、『法人化しなきゃ学生の人たちが困りますよ』的な表現で大学の法人化案をゴリ押ししているように感じざるを得ません。そしていつまでも採算の合わない大学から早く手を引きたい思いがありそう。

多分、この撤退発言は、会議の席上で大学(加計学園)側の誰かの思いつきによる不規則発言ではなく、そのスジの弁護士さんやコンサルさんと十分な想定問答の打ち合わせたをした上で、意図的に発したようにも感じます。ただ、この撤退という発言がこの会議の性質上相手側からするとビビットに感じられただけ。どうも指示役の弁護士さん?が企業買収・再生部門?ご専門の強面で凄腕のようで?、銚子市さん側には少し強く感じてしまったのかもしれません。

がんばれ銚子市さん

で、筆者の考え方、公立大学化は『ダメ。ゼッタイ。』です。一度公立大学化してしまえば、もう元の大学(加計学園)とは(事実上)縁が切れ、経営上の責任は全て銚子市が負うことになります。特に筆者が危惧するのは薬学部。コアカリ・実務研修に適した病院も非常に少なくこの地で学ぶ学生たちには大きなハンデと負担となります。そのため、今後それなりのテコ入れをしても、しっかり持ち直す可能性は非常に低く思えます。次いで危機管理学部も今のような設置趣旨で学生を継続的に集客するのはコペルニクス的回転による大きな努力が必要なレベル、こちらも存続は厳しく感じます。その中で看護学部は、公立化するなら一番期待がもてそうですが、反対に考えれば2つの学部をなくせば、公立大学化しなくても今の大学でやっていけそうにも感じます。で、とどのつまり公立大学化するには高いリスクが生じそう。今の大学には自ら公的な支援なしで将来を決めてもらうのが良さげです。

銚子市さんとすれば、この大学が設置された時からのしがらみで、なんとしても大学を支援・存続させる方向にベクトルが向かうのかもしれませんが、今後公立大化して経営を引き継いだところで、将来の明るい展望が見えません。それでも大学(加計学園)さん側の試算によると、近い将来大学経営黒字転換するとまで明るい未来を示していらっしゃいます(黒字を出せる公立大である必要もないのですが…)。銚子市さんは、今回のような加計学園さん側の撤退という目眩まし的な言葉には惑わされず、次回会議以降も粛々と冷静に議論を行う必要性を感じます。まずは今回が第一回会合、次回以降もどんどんこのような意表を突く作戦で公立大化を行う必要性を説いてきます。これは交渉事ですから是々非々で相手側の発言に惑わされてはいけないと感じます。

他の地方公共団体の模範に

筆者の結論は、これだけ少子高齢化・18歳人口減少の中、無理してまで大学を存続させる必要はありません。無理なものは無理と躊躇せず閉校の手続きを進める勇気が必要。

もともとこの公立大学法人化の話、今の大学の状態での存続云々での議論では単なる時間の引き延ばしにすぎず根本的な問題の解決にはなりません。ここはあっさりと大学の閉校し、役目を終えたキャンパスの施設は(ざっくりですが)運動や研修ができる施設に作りなおし若い人たちが集まることができる場に用途変更すれば市民も歓迎してくれるはずです。きっと。

今回は、加計学園さんと銚子市地方公共団体)さんとの協議ですが、全国を見渡しても(主として不採算の大学の存続のため)公立大学化の必要性を検討しないといけない事例はまだまだでてきます。確実に少子高齢化により18歳人口が減る中、設置母体となる地方公共団体は無理筋な公立大化は行わないことが重要。そんな事例となるような銚子市さんの決断に期待をします。

残念ながら千葉科学大学は設立当初から低空飛行が続いています。設置母体の加計学園ですら、ある意味無理ですと言っているんですから、この際、もう手の下しようがないものがないものと判断し、大学は残った在学生をちゃんと卒業させてあげて役目を終えてもらいたいものです。

 

www.city.choshi.chiba.jp

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【大学英語名称】"University of Osaka" 論争が究極の到達地に達したのか考えてみる

信頼できるスジからのお話。阪大さんが英語名称の変更を行うようです。運用開始自体は関西万博に合わせて2025年4月から。筆者としてはお好きにどうぞですが、改めて日本の英語名称について考えてみます。筆者個人的には非常に興味のある話ですが、読む方の多くは関心ないでしょうね…。※なお、このことは、この4月より学外へ周知を開始するようです。詳細はちゃんとしたところから正確情報得るようにお願いいたします。

定冠詞"The”を使う!(らしい)

どう変えるかというと、今の国立大学によくあるパターン (地名)+UniversityUniversisty of (地名) にひっくり返し、アタマにThe をつけるというもの。 つまり、Osaka University ➡ The University of Osaka にする模様。(業界ネタになりますが)国立大学の中で同様の標記をしている主要な大学は The University of Tokyo と  University of the Ryukyus のみ。英語名称は始めたもん勝ちの傾向が強いですが、数少ない事例の中でも琉球大学さんのように the を大学名称(地名)の前に置くのアリだということが学べます。多分琉球大学さんの場合は、沖縄のアメリカ統治時代に命名していますのでそんな時代的背景とともにアメリカ人からみてもこの名称がOKだったということ。

阪大さんの変更理由として、大阪・Osaka をもちいた類似名称との競合を避けるというものもありますが、これも納得。(地名)+University の場合、さらにそのあとにつけ足しが容易に可能。Osaka university of Economics/Engineering/Science etc、この考え方にも筆者は納得。特に小規模単科大学のように、小さく限定されたフィールドで大学をやっているところには、便利な命名と感じます。反対にUniversity of (地名) の場合は、そのあとにつけ足しの部局名称(Engineering とか)の挿入が語呂の関係で?難しくなるので、たくさんの似たような大学名称の中で紛(まぎ)れにくくするためには、University of ~にする方が優位性がありそうです。さらにそこに The を入れたら動かし難い存在に。ここまで阪大さんが英語名称にこだわるのは3年前の University of Osaka 論争?で懲りたからかもしれません。

で、大学名を地名と人名との関わり合いで考えてみた

また、地名(大阪)を後にする理由としての標記の取り扱いも取り入れて国際標準にする?というのもあります。英語文化圏の大学では、人名なら前につける、地名なら後につけるというのが慣例(らしい)。それを大阪万国の開催に合わせ2025年4月から大々的に?実施して世界的なプレゼンス向上を目指すことが狙いのようです。

その1 英語文化圏ではだいたいルールが守られている

人物名由来の大学(名前が前)

Johns Hopkins University Stanford University McGill University

地名由来の大学(地名が後)

University of Maryland University of Southern California University of Toronto

University of Calgary University of London

 National University of Singapore(英国文化圏の影響?)

その2 そうはいっても、非英語文化圏では、(地名)+University も結構ある

Chiang Mai University Bangkok University Peking University Tianjin University

National Taiwan University

さて日本 今でもよくわからない英語大学名称はたくさん

University of Osaka 論争の際にも、ハム大側の主張の中に、昔から?国立大は (地名)+Univeristy 、公立大は University of (地名) と決まっている、というのがありました。その具体例として、Kochi University VS. University of Kochi であったり、Nagasaki University VS. University of Nagasaki のように共存しているというもの。で、確かに(今のところ)そのとおりなのですが、筆者の腑に落ちない分は、なんで(ほぼ)名前が同じなのに(そもそも)今までそれでよかったのか?なんで関係する大学たちはこれいじゃいかん!と変更を考えず(平和裏に)共存してきたか?です。これは、完全にドメスティックな国内向けルールで日本の大学に関心を寄せる海外の人たちにとっては迷惑行為です。

それなりの緩いルールを作るのが一番?

筆者としても無い知恵を絞って良い案がないかいろいろ考えてみましたが、例えばアメリカのCalifornia みたいに UCナンチャラ 的に大学名称を統一し、Natioal University of ~(国立)Public University of ~(公立)とかにしてみるか、国立大なら必ずどこかに National を入れ、公立大なら必ず どこかに Public, Prefecture, City を入れるetc を国大協や公大協あたりで議論してみるも一考と思えます。なお私大さんはそれぞれでがんばりましょう。

でも、じつはどこかのまねっこ?

以上のようなことでブログを書いている最中面白いものを発見。阪大さんの今回の名称変更の中で通称名・ロゴタイトルをこれまでの OU から UOsaka(ユーオオサカ)へ変えることにもふれています。これについて筆者も、へぇ~そうなんだ程度でしたが、某大学の広報誌を眺めている同じようなことが…、こちらは2024年4月からロゴタイトルを UTokyo に改めるようです。なんか見えないところで動きがあったのかもしれません。

追伸:東京科学大学さんの英語名称(通称名)もまだ決まっていないようです。やはり(無理筋に感じる)東京理科大学との区別がうまくいかないからでしょうか…

www.u-tokyo.ac.jp

まとめ

ぜんぜんまとままりませんが、筆者も英語標記時の人名・地名の取り扱いルール?は知りませんでした。知識不足ですいません。この標記変更の流れは続くのかなあと京大や北大のホームページをみてみましたが今のところ動きはなし。ざっくり大学で働いていて普通に感じることですが、残念ながら日本国内のルール?に基づいた英語名称の大学はたくさんあります。これまで誰も何も言ってこなかったというのが原因の大部分に感じますが、グローバルとか国際化とか言うのであればしっかりした英語名称にしてみるのも良いかもしれません。

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最近鳥取県の高校生たちが気になる

親族関係で中国地方の鳥取県を中心に書いてはいますが、全国規模で考えてみたいお話

山陰はたいへん

筆者の亡母の田舎は鳥取県倉吉市というところ。大阪からだとスーパーはくとというディーゼル特急に乗っていきます。所要時間約3時間くらい。鳥取県は東から砂丘のある鳥取市エリア、真ん中あたりに玉造温泉とかがある倉吉市エリア、一番西に境港市米子市があります。これで人口は60万人足らず、過疎化も進んでいます。JR山陰本線のダイヤを見てもらえればわかりますが、走る列車は一時間数本、その中に指定座席のある特急列車が混じりますので、実際住んでいる人の足と使える列車はさらに減少。そのため、駅を拠点に何かがあるわけでもなく、倉吉駅駅ナカにおいしいトレンディーなスイーツを売っているお店もわけでもなく、駅前タクシー乗り場にはいつもタクシーさんが満ちているわけでもなく(電話してきてもらうのが賢明)、夜景がきれいな高層ビルもありません。

そんなところにある倉吉市は、特産品として二十世紀梨とスイカのような農業生産品が有名、最近ではお茶の間の通販番組で有名になった皮革会社の本社があったりします。

www.barcos.jp

で、そんな鳥取県にある大学は、鳥取大学鳥取環境大学(公立)、私立大学としては小規模な鳥取看護大学鳥取短期大学というのが倉吉市にあるくらい。倉吉に住んでいる高校生は、4年制大学へ行くとすれば、県内なら鳥取市を中心にある鳥取大学など非常に限られた選択肢しかありません。ちなみに倉吉から関西へ行くためにはディーゼル特急で3時間、鳥取空港から飛行機で羽田まで1時間少々、そのため首都圏の大学での学びも選択肢に入るかもしれません。

そんな鳥取県で東の端(鳥取市)から西の端(米子市)まで列車に乗ってみる

鳥取米子駅間:営業キロ92.7km 普通で2時間少々で1690円 

鳥取の山陰線は単線で電化されていませんので電車じゃなくて(ディーゼル)列車。その地域の足となる列車はワンマン化され無人駅が多数。こんな状況を危惧する人もいますがコスト面を考えるとなんともこれが限界…。

これを似たような路線で比べてみると

東京~小田原間 営業キロ83.9km 1時間15分くらいで1500円くらい 

大阪~姫路間 営業キロ:87.9km 1時間くらいで1520円(新快速は早い)

※JR各社は日本各地どこでも営業キロだけなら(あたりまえですが)お値段はだいたい同じ。それ以外の部分で大きな差がでちゃうということです。

そんな距離の中、鳥取県にある主たる大学のある場所は、鳥取市域の鳥取大学鳥取環境大学米子市市域の鳥取大学医学部のみ。この90キロの区間列車に乗っていて他の大学に出会うことはありません。首都圏でも関西圏でもそうですが1時間電車に乗っていればいくつの大学と出会うことができるのか…。

山陽道も明るい話は…

私立大学を中心に考えれば山陽道も良い話は聞きません。3つの県とも、それなりの規模の国立大学と公立大学がありますが、それ以外の大学、特に私大の元気は感じられません。知られた大学なら、岡山県の岡山理科大さん、広島県なら広島修道大さん、山口県は?。それ以外は厳しい状況。そんな有様ですので、恒常的な入学者不足による短期大の募集停止などが今後も増えていくことが予想されます。

その他の地方もいっしょ

この話題は亡母の故郷を思い出しつつ書いていますが、その他の場所も同じ。四国もそうだし、九州も同様。もちろん東北、北海道も。特に地方の大学に関しては、少子高齢化による人口減少の影響が目に見えて顕著。関西以西で県内の高校生の受験対象にはなっても首都圏・関西圏からの学生を集客できるレベルの高い私立大学を見つけることは困難になってきました。

教育格差が気になる ー東京では募集定員や入学定員厳格化の緩和ー

そんな地方の状況の中、ぱっとみ首都圏・東京の状況はずいぶん違います。もちろんたくさんの人が住んでいますので、初等中等教育の場なら、学びの要請があればそれに見合った学校施設を作る必要はありますが、東京都が言う23区の大学縛りをやめろという主張は筆者の心には響きません。

そんな環境に影響されてか首都圏に住んでいる受験者を持つ人たちもなんだか甘い贅沢志向になってしまい、偏差値が高くて、誰もが名前を知っていて、企業受けがよくて、入学後はそんなに勉強しなくても大丈夫で、キャンパスライフが楽しい大学が家の近所にあったらいいなあ、いやあるべきだ! と、考えるようになってしまいました。

そんな独特な受給バランスも影響し、一部の私大は、一度は首都圏外に新キャンパス作ってみたけど学生から通学に不便というカスタマーサービスレベルの理由で舞い戻ってきたり、立地の良いところに背の高い校舎を建ててみたりで、筆者には、あまりに自己中心的にしか映りません。

ただ、こうみていると全ての東京にある大学が恵まれているように感じますが、そんなこともなく、今東京都内にある私大のかなりの数が定員割れしている現実もあります。結局儲かる一部の私大と乗り遅れた私大の格差は放置されたまま。そういう面でも東京都の論法には?がつきます。結論としては、もう、大学を右肩上りに定員増やして新増設する時代は終わりました。

まとめ

言いたいことは、全国規模でみれば大学のユニバーサルアクセス化が進んだ一方、例えば、鳥取県を中心にで考えれば、地元にある有力大学は実質鳥取大学だけ、鳥取県倉吉市に住んでいる高校生は、数時間列車に乗るか飛行機に乗らないと学びたい大学へたどり着けません。これは大きな教育格差。それに加え、だからといってその高等教育の供給元として首都圏の大学が担う必要もありません。

それを思うと、昔の人は偉くて、県に一つは国立大学、主要地域ごとに拠点大学として帝国大学を置いたことはとても賢明な高等教育施策だったと感じます。

関西圏で主要私大といわれる関関同立は、関大は大阪、関学は兵庫、同立は京都と距離的にはそれほど密集しているわけでもありません。それなりに地域性を備えつつ大学がありますが東京の場合、ひしめき合いがひどすぎます。日本人の目には日常と映ってしまいますが、海外の視線なら奇異に同じような大学が乱立しているようにしか見えません。

で、結びにもなりませんが、そんな状況について解決策があろうはずもなく…ですが、今後も都市部と地方の大学格差も拡がるばかりとなるのは避けがたい事実ですので、大学に関係する方は問題意識をもちつつウオッチしていく必要があると感じます。

www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp

 

 

 

【無理】大阪公立大学は国際化するのかしないのか一応念のため考えてみる ー多分しませんー

あれは府知事や市長が大学がこんな感じになったらいいなあ♡の妄想を言語化したにすぎません。こんなんで大学が変わるのなら日本中の大学がもっと良くなっています。キャンパスでみんなで英語でお話できたらいいですね。

ことの発端 -2024.2.9第13回副首都推進本部(大阪府市)会議ー

この会見の場で、大阪公立大学の第1期中期目標期間(2019~2024年度)に続く第2期中期目標期間(2025~2030年度)の概要説明があり、そのポンチ絵資料ととも、府知事・市長から大学の国際化や秋入学について行われた会見内容を、一部のメディアが脚色をつけて盛り上げている状況。メディアによっては『秋入学一部実施』ということを全面的に実施するかのような誇張していたりで(レベルの低い)混乱が増幅しています。筆者もこの府知事の発言はテレビ等でみましたが、政治・政略的な観測気球や花火の類(たぐい)というより自分の思い描く大学像を(良くも悪くも)自然とお話したように感じます。それは、実際のポンチ絵をみればわかりますが、それほど過激なことは書かれておらず、府知事さんの発言とは確かに齟齬が、そのあたりも踏まえて筆者の国際関係の評価は以下。(ポンチ絵のマル数字に沿って書いています。)

①外国人研究者・学生の増加

総花的でどこででも用いられる表現。重要なのはどのように国際化の進展を図るのかです。

②受け入れ・支援体制の整備

この大学は、今のところやっていない気がします。ほぼゼロからの出発。だからこれからどうずるか?。この4月から新設部署をつくるようですが、留学生や外国人研究者を支援するっていっても手間暇がかかり対応できる人材育成も必要。まずはボトムアップが必要。

③海外の大学・機関等との国際ネットワーク・海外への情報発信の強化

このお話もすでにどこの大学でもやっています。この大学のウィークポイントとして学部と見比べ大学院が充実していないので、研究レベルでの交流基盤が見劣ります。このことでも大きな努力が必要。※関連して英語大学名称についても最後部分で触れます。

④日本人研究者・学生の海外留学・派遣の促進

金目のお話は、自己資金が潤沢にある大学でもないので、MEXT、JSPS、JASSO あたりの科研費のような外部資金に依存することになるんだと思います。ただ、このことについても、大学院が充実していないので、海外との人的交流の方法もボトムアップから始める必要がありそうです。

⑤THE世界大学ランキングの向上

なにをどうやって向上したいのかよくわかりませんが、英語論文の作成・引用数や外国人教員・研究者・留学生数のような国際交流実績を地道に伸ばしていくこと。なんとなくニワトリ&タマゴ論に行きつきそうですが、相当な時間と努力が必要です。急には無理。

で、分かりやすい単純計算をすると

関学(王子キャンパス)の時も書きましたが、留学生がたくさんの新設学部を作るとして仮に1学年100人の留学生を招くとします。その100人をどこでリクルートするのか?。来日したとして留学生のための宿泊施設はあるのか?。専従で英語で専門科目の授業ができる教員が何人いるのか?等々突っ込みどころがたくさん。2027年度あたりからの始める意向のようですが時間的もかなり厳しく感じます。

国力が落ちつつある日本において、留学生の獲得は簡単なものではなくなりました。口を開けて待っていたら優秀な留学生がやってくるわけでもありませんので、その獲得にも相当な努力が必要。先行している大学では、海外でのエリート層の受験生を獲得するため、海外での広報活動の充実と現地での受験機会を提供を行うなどしていますが、そのノウハウを今から獲得する必要があります。

そんな状況ですので、学部レベルでたくさんの留学生が毎年来てくれることを期待するのは絶望的。まずは近隣の大学でがんばっている神大さんの国際人間科学部兵庫県立大さんの国際商経学部などを参考にして身の丈にあった国際交流施策を行うことが良いように感じます。特に兵庫県立大学さん国際商経学部はよく練られたコースを作っていて留学生のための寮も新設、それで募集人員が30名。多分この程度の人数確保が精一杯だと思います。ですので、関学さんのお話もそうですが、キャンパスに留学生がたくさんいる活気あふれたイメージは日本人独特の希望と妄想の類です。

秋入学の考え方

まず大学院から始めて、学部にも拡大するようです。で、筆者の評価はコメントはこんなんしてもいみありませんです。また、大学院(旧府大工学研究科?)において英語授業のみで修了(卒業)できるコースも作りたいようですが、こちらもノウハウなしの突然開始ですから担当する先生たちが疲れるだけで可哀そうです。

もちろん入学・受験機会の多様化・複数化を目的として秋(入試)入学を行うこと自体は悪いことではないし、他の大学でもすでに行われていますが、この大学ではその需要も必要性も見出せません。こんなんして結局入学者ゼロの大学院がたくさん出たらとても恥ずかしいです。

英語公用語

筆者としては論評する気力も失せてしまう話。キャンパス内や社内での多言語化は必要があれば(McGill Univ.(英・仏)とか)行えばよいのでしょうが、ホンネではみんな?としか…。偉い人が思いつき発言したらみんな困ります。『府知事あなたは疲れていいるのよ…』by X Files

👇以下は参考情報をいくつか

他の場所でも取り上げていますが、このプログラムは日本人にとっても留学生にとっても魅力的です。筆者のおススメ。

www.u-hyogo.ac.jp

神大の人社系学部・研究科で行うプログラム。こちらも良いと思います。

www.fgh.kobe-u.ac.jp

関学さんの新キャンパスのお話。こちらは行く末が心配

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今回の公大国際化話の発端

www.pref.osaka.lg.jp

むすび

ほんとに国際化したいのかの本気度が不明 ーせやから4年前に言いましたやん!ー

今回の『新たな取り組み』内には、戦略的な情報発信・「サイエンス」「ネイチャー」等への研究論文の掲載と、その積極的な情報発信 の必要性についても書かれています。要は国際化の推進をいろいろ行いTHEのようなところでのランクアップを目標にしています。

筆者の違和感は ちょっと前まで University of Osaka で英語大学名称を推進したこの大学に Science誌 Nature誌 への投稿件数を増やすことを目標値として掲げられてしまうとただただ驚き戸惑ってしまいます。まずは、海外で知られていないこの大学と英語名称(Osaka Metropolitan University) の認知度・普及に努めることを優先しましょう。4年前のことはみんな忘れても忘れないからなぁ!

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【写真30枚】フランス料理でも食べながら日本の大学の国際化を考えてみる

高等教育に関する目線をいれつつグルメブログにもまけないようしっかり書きます。

の周辺のフレンチレストラン事情

普通にグーグルマップを使って自宅周辺にどれくらいフランス料理を標榜するお店があるか調べてみました。その結果、半径500mの圏内に少なくとも20軒のお店があることを確認。多分、神戸でフランス料理のお店を出すというのはそれなりにステイタスのあることなのかもしれません。神戸の場合は、北野ホテルさんやポートピアホテルさん、グラシアニさんのようなディナーなら数万円するところから、お手頃価格なものまで様々なお店があります。

イタリアンの場合、パスタとピザがしっかりしていればそれなりにカッコはつきますが、フレンチの場合はさらにアラカルトよりも(フル)コースで料理で提供する必要があるため、さらにプラスアルファの技量が必要。それでもこんなに増えたフレンチレストラン。その理由について、筆者の推測では、その多くは、作り手側の増加の影響だと感じます。最近では、日本国内の調理師学校でも、西洋料理というカテゴリーではなく専門的なフレンチの技術を学べるところが増えてきました。また、本場?フランスでの研修も身近なものなっていて、超有名なレストランの厨房見学なんかもあるようです。

渋谷さんの La Bécasse をどう考えるか?

そんな昨今のフレンチの業界ですが、筆者が古くから時々お食事をさせていただく渋谷さんの La Bécasse について考えてみます。

渋谷さんは、高校を卒業してすぐ渡仏(1980年)。それから約10年の間フランスのポール・ボキューズジョエル・ロブションアラン・シャペルのような超著名なシェフのいるレストランで修行し最後はいっしょにお仕事して一目置かれる存在にまでに。フランス滞在時は、(確か)Figaro誌 の表紙(1980年代)を飾りすごい日本人シェフがパリにいるということで話題になっています。で、当時、フランスにおいて Michelin のような星の評価を取らなかった理由は多分ご自身でお店を持たなかったから。そして1990年代に入って大阪四ツ橋La Bécasse を開店。お店は、四ツ橋淀屋橋淀屋橋駅西側)→淀屋橋(本町寄り)と移転して現在を迎えています。以上のような流れなので、フランス料理に関する修業はフランスでのみ、高校を卒業してすぐ日本国内においては調理に関する勉強・修業は一切しないまま大阪でフレンチレストランを開業しています。

で、渋谷さんの(筆者からみた)評価ですが、2000年代~2010年代中頃までは関西でもさほど知られた存在でもなく、特に Michelin1 を獲得する前までは、辛口のグルメ関係のブログが評価が一部にありました、が、最近はだいたい高い評価に変わったようです。それでも多分、今でも東京の人には誰?の存在だと思います。このあたり、当初からお店を東京で開業していたらその評価はもっと高まっていたかもしれません。

渋谷さんの経営方針はずっと小さな一店舗のみでの営業でメディア露出も少ないので、大阪でもあの人は誰?ですが、最近は(何かに吹っ切れたみたいで?)某テレビ番組(バラエティ系)にも不定期に登場(ミルクボーイと共演しています)。それをみていると、あの日本料理の絶対権威とされる京都菊乃井(Michelin3)の店主村田吉弘氏が渋谷さんを評して『あの人はちゃう!あの人はすごい!』と真顔で言ってたことが印象に残っています(見ていて笑っちゃいました)。筆者個人的には村田さんのコメントがすべて、渋谷さんはわかる人にはわかる存在だということだと思います。

そんな渋谷さんのお店に、筆者は四ツ橋にお店があったころから定期的に行かせていただいていました。なお、ここのお店、筆者としてのお料理の評価は控えておきます。この手のお店は食べる人の嗜好に合うか合わないかの部分も大きいものがあると思います。なので、多分、印象的には万人受けする類のものではないとの認識をもたれつつ、ご関心があればご自身でお確かめください。

グランメゾンとは ーこのレベルになると当然なのかもー

そんなグランメゾン的な表現をするフレンチレストランは何が違うのかいうのか筆者が感じるものは以下。ホテルのレストランで一回きりのお食事の場合はなかなか気づきませんが、何度も行くとわかってきます。

・何人かで食事をした際、食べる人のお腹に合わせて、同じお皿でもその人に応じて(二度目には)おいしく食べられるボリュームに自然とポーション調整してくれます。

・ある時、たまたま何かの理由でお料理を少しだけ残したところ、帰る時、渋谷さんから『あの料理、お気に召しませんでしたか?』とのお伺い。と、いうことで、厨房に戻ったお皿もちゃんとチェックされています。(まずいから残したわけではありませんでしたが…食べている側も残す時もシェフからはチェックを受けているという意識は大切かもしれません。)

・筆者が、ドーバー産ブルーオマールが入ったとのことでそれをランチで食べれるか相談して、〇○○○円でいけます?と聞いたら『無理です!』と言われた。(値踏みして聞く方も聞く方ですが…最終的にはおいしく頂戴できました。一応そんなことを言える関係。)

これらを読むと筆者がグルメ通の美食家と誤解されるかもしれませんが、こんなお店に行くのは年に1回程度のつかず離れずのペースで訪問。これが細く長く30年近く続いている感じ。そして、最近感じることは、La Bécasse さんは、東京を中心とした最近のフレンチレストランのお値段と比べるとかなりお手頃価格でお食事できます。特にコロナ禍以降、東京のフレンチレストラン(寿司屋も)はお値段異常に高すぎ。別の視点で言えば東京には味や値段云々と同様高くてもその店に食べに行くことにステイタスをもつ人が多いということかもしれません。

で、そんな渋谷さんのすごいところは、Michelin の格付けだけでなく、Relais & ChâteauxLes Grandes Tables Du Monde という二つの格付け組織でも評価され加入していること。なお、Michelin は、巷の認知度があがりだいたいみなさんわかりそうなのでそれ以外の二つがどんなところかのご紹介をしてみます。

Relais & Châteaux

こちらは、フランスに本拠があるおいしいレストランとくつろげる宿泊施設の認定組織。レストランはフランス料理だけでなく日本料理のようなその国のもので評価、同時にこの組織の目線で滞在することに価値のあるホテル(日本なら旅館)についても評価するのが Michelin とは違うところ。

 日本では、宿泊施設+レストランあわせて20施設くらいあります。フレンチレストランのカテゴリーでいうと三國清三さんと同様1990年代初めころから資格を有していて日本における先駆け的存在。なお、Michelin の星とどっちが上かというような比較評価する類のものでもありませんが、希少性から言えばこちらの方が上かもしれません。どちらもフランス目線で質の高いホテルであったりレストランの評価を受けている証明にはなります。なお、日本におけるフランス料理界の第一人者三國清三さんとは、2年ほどフランスでの滞在時期がかぶっている期間があり、特に Relais & Châteaux 関係で昔からつながりがあります。

www.relaischateaux.com

Les Grandes Tables Du Monde

渋谷さんの加入しているもう一つの協会がこちら。設置趣旨・目的は、Relais & Châteaux と同様と考えて良いと思います。ただし、評価はレストランのみ。日本には、この協会から認定を受けているお店が5店あるようですが、加入しているお店のお名前を見てみると、Tour D'argent Tokyo、Restaurant de Joël Robuchon Tokyo のような超一流のお店ばかり。渋谷さんの場合は、これら Michelin、 Relais & Châteaux、 Les Grandes Tables Du Monde の二つの協会による審査がないと加入できないところから評価されていますので、これだけでも一目置いてよい存在の人といえます。

※La Bécasse さんにはできれば近々行きたく思っていますので改めてご案内するようにします。

lesgrandestablesdumonde.com

フレンチを中心にお店の紹介

ここからいくつかのお店を紹介してから最後にまとめていきます。なおブログで使用している写真は全て筆者本人が撮影したものです。

その1 La Bécasse@Osaka 渋谷さんのお店

【写真1】La Bécasse 大阪メトロ御堂筋線淀屋橋駅を南方面の出口を出て徒歩5分程度。御堂筋を南に向かい平野町3を東に入るとすぐ。小さめのビルの1階の奥まったところに入口があります。ランチタイムに行くとお客さんが他にいないこともよくあり、それでもやっていけるところが素人的に不思議。座席はこのお花を中心にこれだけ。Bernard Buffet のポルシェの絵は代々のお店からそのまま引き継がれてきています。なお、この本町界隈のスープの冷めない距離に、最近 Michelin2 を獲得してがんばっている高田裕介さんの La Cime があります。

【写真2】La Bécasse 店内 カトラリーのおき方はふつう。ナプキンホルダーはどこかのイベントの際使ったものが気に入りそれからずっと使い続けているそう。で、このお店はランチでもディナーでも紙のメニューはありません。完全にお任せで何皿でてくるのかもその日よって異なります。

【写真3】ここからしばらくお料理いろいろ

【写真4】お料理いろいろ ランチでも10皿近くでてきます。これは定番の鮎のリエット

【写真5】お料理いろいろ ただのアスパラだと思っているとフランス産だったりします

【写真6】お料理いろいろ

【写真7】お料理いろいろ

【写真8】お料理いろいろ 最近オーストラリアでも良質なトリュフがとれることを学びました。

【写真9】La Bécasse 入口に置かれた Relais & Châteaux(渋谷さんのお名前つき・なぜか英語表記) と Les Grandes Tables Du Monde の銘板

その2 Passage 53@ Paris 佐藤さんのお店

佐藤伸一さんのお店。Paris で Michelin2を獲得して Relais & Châteaux にも加盟。渋谷さんその他のお店とお皿の出し方とか比べてみるといろいろ学べます。Paris 中心で活動していますが、時々日本でのグルメイベントも行っています。お店の予約は日本出国前に開設していたHPからでしたが結構簡単。

【写真10】Passage 53  Passage des Panoramas のアーケードの中にありました(過去形)※ 場所的には Galeries Lafayette Paris Haussman や Opéra Palais Garnier に歩いていける距離。

【写真11】 Passage des Panoramas の中にはレストランや様々なお店があります

【写真12】Passage 53  レストラン発見 名前の由来は『区画53』 にレストランがあるという意。でもその場所に店名表示はなし、ただ、ドアの右下に Relais & Châteaux の銘板のみ(この位置におくのはわかりにくくするためのお店のいたずら?)。ご覧のとおりで、ロケーションと店構えだけなら Michelin2 のお店とは気づきません。

【写真13】Passage 53  店内の様子。いたって普通で日本でもありそうな雰囲気 この横に傾斜が急で狭い螺旋階段があって2階へ上るとお手洗いと厨房があります。

【写真14】Passage 53  こからお料理いろいろ カトラリーは全てをテーブル右おきでこれが印象的。なお menu にオプションでおすすめのキャビアetcとかが書いてあったらお値段に注意しましょう

【写真15】Passage 53 お料理いろいろ

【写真16】Passage 53  お料理いろいろ

【写真18】Passage 53  おわり これでこの時のランチの価格は 70€ くらい。そこに税サ・チップが加わります。(近年フランスでは会計にチップは上乗せして提示してくるのですがサービスのレベルが違うので払っておいた方が良い雰囲気)

【写真19】Passage 53 2階の厨房 オーナーシェフの佐藤伸一さん 今現在は、パリ16区にある Blanc というレストランを経営しています。見てのとおり有名店になるとそこで働きたいという人が増えてくるようです。※この時写真撮影・ブログ掲載許可を得ています。(単純に『どうぞ』でした)

↓新しい店はかなりお値段お高めに設定されています。

blanc-paris.com

その3 L'AS@Tokyo  金子さんのお店

L'AS(ラス) Bib Gourmand by Michelin: (good quality, good value cooking) のお店 こちらの店主は La Bécasse での修行経験のある兼子大輔さん。同様にソムリエの方も La Bécasse つながりのある方でした。行った理由は、渋谷さんに東京でおススメのフレンチレストランを聞いたらこちらをご推薦だあったので。もう一軒のお店は三田のコート・ドール(ここの店主は渋谷さんのフランス時代からの知り合い)。L'AS はかなりお値段お安めでお料理を出すのを特色としています。そのため、ランチ・ディナーとも選択肢少なめにして、お皿も同時刻一斉スタートするように進めます。昨今東京のフレンチレストランは超高級志向ですがそれに一線を画したところに好感を感じます。

【写真20】L'AS  行った時は表参道から歩きました。場所的には南青山の閑静な住宅街の中。

【写真22】L'AS  

【写真23】L'AS  このお店名物の Starter

【写真24】お料理いろいろ

【写真25】お料理いろいろ

las-minamiaoyama.com

日本の状況 -Tokyo Wall 東京とそれ以外 東京あつまりすぎー

これはフランスでいう『パリとそれ以外』の表現のマネっ子。一極集中という言葉も古臭く感じますがすべてに一極集中しすぎ。

今のハイエンドなレストランは、都心三区(港区・中央区千代田区)+渋谷区の一等地にレストランはなきゃダメだの雰囲気。山手線沿線でいえば、池袋や上野、新宿あたりでも格下の扱い。もちろん大阪のような地方は完全に格下扱い。そんなことするからテナント料や人件費が加わり高コスト化しますが、消費する側も銀座のような然るべき場所にお店があって食事を楽しみたい人たちですので今のところうまくいっているんだと思います。食に関してはバブル時代を彷彿とさせているかもしれません。これからも良い景気循環が続きますように。

どうも首都圏の人たちは 京都を除く地方への respect が低くなりがち(週末に京都へ行って京料理を食べるのはトレンディだが、大阪に行ってお好み焼きを食べるイメージは思いつかない)。これは大学も同じで、首都圏に住む受験生の選択肢に京都の大学(京大、同志社大あたりまで)はあっても大阪や九州の大学へ行くことは受験生本人、家族、友人のイメージとして都落ちとなりますのであり得ない選択となります。

筆者も首都圏にそれなりの数の大学はあっても良いと思いますが、それにも一癖あって、山の手線のリングから少しでも離れると受験生が遠のく傾向も顕著。筆者が感じるものは、結局、家の近所に大学があってそれなりに偏差値が高くて社会的評価のある大学のもとで楽して学ばせたい受験者側のニーズと好立地を活かし学生を少しでも多く受け入れて儲けたい一部の大学の利害が一致しているから今のような教育バブルが生じているのだと感じます。

番外編 カナダも少し

1年いたのでカナダの食情報も。

アメリカと比べればかなり地味。ただ、最近、カナダ版の Michelin ガイドができるように食文化の傾向も変わってきています。特にトロントのような大都市圏では高級店が増え、その中でもお寿司を中心とした日本料理のお店が結構評判。Multiculturalism を強引に重ね合わせるのもアレですが、アメリカと比べると食の多様性は少し異なるのかもしれません。

ちなみにケベックはフランス語圏だからフランス料理がおいしいというのは間違い。歴史を紐解けば、1763年のパリ条約(七年戦争の紛争処理)で、ケベックはイギリス領となりました。それを契機に、ヌーヴェルフランスにいたフランスの貴族や行政官はフランスにもどってしまい、とり残されたのはフランスに帰るあての無い貧農階層。そんな人たちがイギリス植民地下でイエズス会による中世的な統治が永く続いたのでおのずと素朴な料理になってしまいます。それでも言語の共通性から、フランス語圏との交流は活発ですので、フランス料理系のお店もそれなりにあります。

なお、カナダで本当においしいものを食べて泊まりたいなら、都市部よりリゾート地域におススメできます。カナダ東部であれば、ケベック周辺の Eastern Townships や Laurentians 、最近サミットが行われた Fairmont Le Manoir Richelieu のあるあたりは魅力的でアメリカの富裕層も含めてやってきますが、日本から行くとしたら2週間はあった方が良い場所です。

全然違う話ですがカナダの食の謎。カルガリーのスーパーに買い物に行った際見かけた光景で、ガロン売り(4liter)の牛乳やオレンジジュースを何本もカートにのせている人は普通、ドでかい肉のカタマリを買うのも普通、アタマをひねったのがマーガリンをバケツサイズ(4pound以上?)を普通に購入している姿。トランス脂肪酸の使用制限もあって、パンにぬるにしろ料理に使うにしろなぜこんな巨大サイズが必要なのか?。日本人には想像できませんが、売るほうも需要があるから作っているんだろうし…。海外にはまだまだ未知のことがあります。異文化体験はこんなレベルから必要とも言えますのでいろいろ出かけて見て感じるもんです。

あとはいくつかおいしかったお店紹介

www.easterntownships.org

www.laurentides.com

www.fairmont.com

KEG@Toronto 

【写真26】KEG@Toronto トロントのKEGさんはユニオン駅の近くにあります。KEGさんはカナダでは有名なステーキ店。主要都市にお店があります。高級志向ですが入りやすい雰囲気のお店なのでカナダへ行った際はどうぞ

【写真27】KEG@Toronto イスに座るとこんな感じ。ステーキレストランであるにもかかわらず肝心のお肉の写真を撮り忘れました。すいません。なお、カナダのおいしい牛肉の産地は Alberta

【写真28】KEG@Toronto 北米的な大雑把な lobster の出し方、boil したてなので熱いです。ガーリックバターソースで。お味は普通においしいです。生物学的な構造上 lobster のハサミは左右で大きさが異なります。二人で一匹をシェアする際etcは覚えておく方が無難。

カルガリーのお店

このお店、名前を忘れたんですが、その当時、シェフが日本人だと話題になっていたので訪問した記憶があります。ただし、かなり昔の話なので今お店自体どうなっているかわかりません。

【写真29】生牡蠣 北米流は、これはニューヨーク沖、これはニューファンドランド沖で採れたもの的な食べ比べを楽しむことが多いと感じます。ただし当然その違いはわかりません。

【写真30】このお店の lobster は sauté して提供。付け出しが(多分)新聞紙にくるまったフライドポテト。出し方はやはり北米流?

www.fairmont.com

おわりに ーすそ野は拡がるー

渋谷さんがフランスにいた時代と比べると、料理を志す人が日本国内でフランス料理の基礎を学べる機会は格段に増加しています。調理師学校などではツアーでお金さえ払えば、何日間かフランスの有名どころの星付きレストランの厨房に入れてもらえる見学会的なツアーがあったりもします。物見遊山的ですが日本で籠るよりは何かを見出せる良い機会もしれません。このあたりも大学での学びと同じ。

今さらですが海外で学ぶと楽しい

渋谷さんは、高校を出てすぐフランスへ。フランス語の勉強もパリが始まり。佐藤さんもほぼ同様。三國さんも中卒で料理界に入り、在外公館の料理人を経てパリで活躍。皆さん言語能力の獲得という面では、体系的なフランス語の学びはしないまま現場でそのまま働いています。普通に考えてフランス語による調理方法であったりワインの知識を得ることはとても大変なことだと思うのですが、(全員ではないにしろ)一定の努力でなんとかなるもののようです。

これを(強引にそして楽観的に)大学に当てはめてみると、そんなに語学力の心配をしなくても志(こころざし)と海外文化への耐性があれば海外での学びについていける証左。物差しとして1990年代からの韓国の英語圏大学への留学状況と見比べても日本人も(行く気がないだけで)十分海外で学ぶことは可能と感じます。

まとめ

そもそもまとまる話でもありませんが、ざっくりいえばどこの分野でも海外へは行くひとは行くということでしょうか。大学で働いている筆者でも、それほど日本の大学に魅力は感じません。高校生たちの大学選びの選択肢の中に海外の大学を入れないことはそろそろ終わらせて良い時期。海外に関して高いハードル感を持たず、どこでもがんばればなんとかなる気持ちが大切です。

最後まで眺めていただきお疲れ様でした

 

【大学院】大学院での論文指導が本当にできているのかホントに悩んでみる

最近の日本の大学教授たちってちゃんとやれているのかホント気になります。事務でこんな問題意識をもちこんなことを書いてくれる奇特な人も少ないですからまずは読んでみることです。

日本の論文指導の気になるところ

ここで悩むというか問題意識を感じるのは大学院での論文指導、研究指導のお話。多分旧帝大のような国立大や早慶レベルでは、数はこなしていますがそれでも実際のところどうなっているかは不明。もちろん教員側からすると、(人によっては)自信満々で大丈夫という人も多くいると思いますがそこが落とし穴。基本的にみんな教えるのが下手です。

①多くの私大では、論文指導・審査の件数自体が少なすぎ

そもそも大学院があって学生がいての論文指導と審査。基本的に一つの論文審査は主査1名、副査2~3名で審査体制(最近では指導体制という言葉もあわせて用います)を作って論文の完成まで面倒をみるのですが、その中でもがんばらないといけないのは主査の先生。主査になるためには、論文指導の経験年数、研究業績・活動歴、査読付論文数etcのような(実際はかなりあいまいな)要件に基づき大学内で会議を開いて研究指導教員になれます。大きくはマル合資格と呼ばれるMの学位審査(主査)できるもの、Dマル合資格という博士論文の主査になれるもの。で、もちろん当然Dマル合資格の方が要件が厳しくなります。ですので、Dマル合の要件を満たしている先生は大学内では重宝されます。このあたりは大学受験生は知らない大人の世界のお話。

で、このあたりまでのことは、MEXTetcでも基礎的な情報として書かれていますが筆者の問題意識は以下。

ご承知のとおり、日本の人社系大学院ってその大半が定員充足していません。その定員自体も10名~20名(修士・博士前期課程)とかのレべル、博士後期課程になると入学して数名。一つの大学院の教授職が20名いたとして主査になること自体まれ、こんなのですから特に博士後期課程でDマル合資格を持っている先生がいたとしても、実際の博士論文の指導の実務経験自体全く足りません。こんな状況ですので、指導も審査も(例えば)『私が早稲田で学位を取った時はこんなやり方で~』とか『京大で審査したときにはこんなやり方だった…』のような回顧基調なお話に依存をしつつお話が進んでいきます。で、サポートする副査の先生たちレベルも同様かそれ以下、最終関門の教授会でも同様に低調。この流れで日本では大学院の学位授与は行われます。結局みんなよくわかっていないのが実情。FDなんかではハラスメント対策のお勉強はしても論文指導方法のあり方みたいなお勉強会は話題になりにくいものと感じます。差しさわりの無い言葉を使うとすると日本の大学院ではみんな手探り状態で論文指導を行っている状態

②否定するのは楽、日本的な指導ではなくて選択肢の提供が必要

分かりやすい事例で考えてみます。

特に私大の場合、学部授業ではたくさんの学生に対して、教壇から一方的に話して授業を進めることばかりやっていますので、大学院のような極めて少人数での専門的な領域でどのように論文を書くかというようなことへの授業は苦手、普通に考えてコミュ力的なトレーニングが不足しがち。ですので、学生への論文指導の方法にも差が出てきます。良くない例は、書いてる論文について、単に『第〇章出来が悪いから作り直し、テーマを〇△に差し替えて』『全体的に良くないから~』等々。しっかりした先生なら『このあたりは先行論文で良いものがあるので読んでみたら?海外の文献で良いものがあるのでチェックしてみたら?』『書いてる方向性は良いが〇章部分は異なる視点から見てみるのも良いかも』のように個別具体的に院生と論文作成を進めることができる技量が必要となります。学んでいる学生側(比較できる指導の経験値が少ないため)は気づかなかったり言ってもムダと諦めたりでしょうがこれではいつまでたっても技量の向上は見込めません。

以上のお話については、過去に海外で修士をとった人の状況や博士後期課程の修了生からのコメントをもとにして書きました。海外(カナダ)の大学院は(少なくとも)日本以上にしっかりした論文指導をやっています。

③医学系研究科やその他の大学院も大丈夫?

特に私大医学部では配属先の医局・研究室のような組織においては絶対服従のタテ社会が構築されています。そんな中でそれぞれの業界(例えば消化器内科とか)では有名でお忙しい先生に博士論文の審査(ごとき)をお願いするなんてとんでもなく滅相もないことですのでそれなりのヤマブキイロを上納し失礼の無いようお願いするのが当然のお話(首都圏の私大医学部が顕著)。そんな環境の中でまともで建設的な論文審査なんてできません。

自然科学系の研究科でも、(例えば)学生が一生懸命がんばって論文書いても気がつけば筆頭著者から外れていたりすることはよくある話。権威主義歴な体制が残る法学研究科あたりも、(例えば)民事訴訟の権威(らしい)の先生に、学生が民事訴訟の新しい解釈の論文書いても(指導や審査以前に)見下されてしまいがち。だからそれもあって法学研究科には学生が集まらないんです。

結論してみると

ということでどこも全滅。ちゃんとできていません。もちろんどこのフィールドでも、どのように指導して審査すべきかしっかりしたポリシーを持っている先生たちはいるのですが、全体として数で負けています。

実際筆者が教員の会話を聞いていても『またこいつテキトーなこと言ってる!』的なことは毎度のお話。非常に未熟で勉強不足。

筆者には、文科省がいくら頑張っても大学院の出願者が増えないのはこんなところにも理由があると感じます。新制度やプログラムによる大学院教育の充実施策も重要ですがそもそもの部分のボトムアップはとても必要。教えるのが下手では救いようがありません。