FOU’s blog

日本の大学 今 未来

奈良県にある大学 国立大学の再編を前向きに考えてみる

奈良の国立大学再編は面白いかも

奈良先端科学技術大学院大学の先生との立ち話から

最近、某所で奈良先の先生(准教授)と10分ほど立ち話をしました。その時、奈良女さんに新設された工学部のことが話題に。

奈良先:『あれは奈良先にとっては困ったことに…』

筆:『なんで天下の奈良先さんがビビるんですか?奈良女さんの理工系なんて学生数は少ないし、やってることもリベラルアーツの延長的な存在で大したことないでしょ?』

奈良先:『いやいやそんなことはないんですよ。奈良女さんに工学部ができるとそれから先、受け皿となる大学院も拡充されるでしょうから、奈良先を志望する学生が減少するわけなんです…』

等々の(聞く人によってはたわいのない)お話をしました。で、筆者がこれは面白いなあと感じたポイント。これまでチマチマあった奈良にある文科省所掌の機関をうまくつなぎ合わせれば面白い科学反応が生じるかもしれません。

www.nara-ni.ac.jp

国立大学法人奈良国立大学機構の大学とその仲間たち

奈良国立大学機構は(東海地区や北海道地区でもやってますが)一法人二大学(奈良女・奈良教)のアンブレラ方式にして国立大学を取りまとめる組織。そもそも奈良女さんの学生数が約2000人、奈良教さんで1000名ほどなので、(なんとなく)集約化して運営した方が効率が良いような気持ちになります。でも、それだけなら、小さくまとまっただけなのであまり面白みがありません。そこで筆者は、今回の動きを奈良女さんの新設工学部を中心に取り上げてみます。もう一つの大学、奈良教さんは、師範大→奈良教と現在に至るまで歴史に忠実な教育大学ですので、具体的に大きな影響がでるのは奈良女さんという考え方で良いと思います。

奈良カレッジズ構想

この企画、まず、最初に奈良関係の人たちが(多分)考えついたのが、奈良の地の利を活かした学術・教育・研究の企画。奈良県全体、特に奈良市周辺には古都奈良ならではの奈良文化財研究所、奈良国立博物館があり(合わせて奈良高専、ちょっと地理的に少し離れているのと設置趣旨が多少異なる奈良先端科技大も一応対象)と協力関係を増すというもの。いわば奈良にある文科省系機関全てを掘り起こして二つの大学の活性化を図る試み。その中でも女子大という特殊性?を逆に活かしたリベラルアーツ的・文理融合型で工学部を作るのは(筆者個人的には)よく練られた非常に面白い試みだと感じます。※もともと文科省関係者だったこともあり書きぶりが文科省的になるところはご容赦ください。

女子だけで学ぶ理工系は面白いかも

近年、ダイバーシティSDGSという価値観が強まり、なぜ女子大として教育を行う必要があるのかについて注釈を入れないといけない時代になってきました。そんな中、工学部を女子大に新設するというとても面白い取組み。その筆者が考える面白いと考える理由の一つがコレ。だいぶん前(おそらく10年以上)、何かで見たか読んだのですが、海外の大学での研究で、自然科学系講義(例えば物理学)を行なう際、受講者を男女混合で行う場合と、男子だけ女子だけと同性のみ分けて実施した場合の、それぞれの教育効果について調査してみたというもの。その結果、男女混合での講義の際よりも、時として、女子のみで行われた講義の方が、男女混合の時と異なる独自の発想が生じやすい傾向あるとの結果が生じることもあるので、研究結果として、やってみる価値あり、との内容で結ばれていました。この試みを見ていて、筆者も同様に感じるところがありました。事例は全く異なりますが、看護学部の授業で(最近共学化が進んでいますが)女子だけ、男子だけ、混合でとバリエーションを変えて行う状況をイメージしていただければわかりやすいかもしれません(反対に余計にわからなくなった人はすいません)。ただ、漠然と何となく女性だけで行う工学部って異なる雰囲気で学べること、については、多くの人にイメージの共有がしていただけるのでは、と思います。

※念のため、この内容を書くため、このエヴィデンスをいろいろググって探したのですが見つかりません。こんな感じの生物学的実験的なアプローチで、性の相違の不思議についての興味深い事例として紹介されていました。機会があれば別の場でお話できればと思います。

薬学部より面白そう

(予備校の出す偏差値信奉者でない筆者ですが)だいたい奈良女さんへ入学するレベルの学生は京大、阪大、神大のやや下あたりの学力。そして理系が得意な女子高生のイメージになります。そうすると私大を含めて考えると受け皿となり競合する可能性がある学部は、薬学部や理学部が中心となることが予想されます。自然科学系の理学部は奈良女さんにもありますので、それを目指してみるのも可。また、現在の日本の社会的情勢から(資格をとったら一生食っていけそうな)薬学部を目指す女子高生もそれなりにいるかもしれません。そこからは最終的に受験する人の判断になりますが、筆者の考え方は、例えば、家族で医療関係の仕事をしていたり、本人自身が薬学・薬剤師に関心を寄せているのであれば、それはそれでOKですが、そんな感じで特に薬学に思いを抱く受験生とは別に、将来の選択肢を広く持っている女子高生には、筆者はこの新工学部をおすすめしたく思います。

fou.hatenadiary.jp

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その理由として、現状の薬学部のしんどさ。最低6年在学して、特に私大に入ると薬剤師受験予備校的な無味乾燥な学生生活を行い続けることを思えば、まず、学部で4年学び、やる気があれば博士前期(修士)、場合によったら博士後期まで(薬学部と比べれば)自分のペースでさらに学べ、研究できる選択肢を持てるところに魅力に感じます。

さらに現在のリケジョに対する認識の変化も後押しします。ダイバーシティーや少子高齢化男女共同参画SDGSなど様々要因から女性人材獲得の考え方が現実に理解、普及、浸透し始め、企業にも女性の理系高度人材の獲得を行なう考え方が高まってきました。また、女性が働きやすい職場づくりも(過去と比べれば)進んできています。そのような状況ですので、ちょっと前までの女子大理系って~的な(評価が下がるような)心配は必要ないと感じます。

最後に、注意事項があるとすれば、この工学部の魅力とともに少し注意しないといけないポイントは規模。旧帝大の工学部のようにフルラインアップで何でも学べる工学部ではありません。この工学部の設置趣旨に賛同して受験するのも一つの考え方としてありますが、基本的にはこれから自分がやりたいこと、そして自分の将来を考えてみて自分の学びに適合した分野・領域があるかを見極めたうえで選択する方が良いと思います。

予告:次の和歌山県編では薬学部の魅力をお伝えします。二律背反&節操がなくてすいません。和歌山には和歌山の事情があるということでご容赦を。

www.gender.go.jp

https://www.nara-edu.ac.jp/ADMIN/KYOUMU/2018_kaikensiryou.pdf

法人の布陣が興味深い

筆者の(なんちゃっての)玄人(くろうと)目線でもこの再編は興味深く感じます。この人事、誰が決めたのか?、この奈良での取組みを行なっている機構の幹部の人選が並のものではありません。※論評は筆者独自の知識と認識とご理解ください。

理事長:榊裕之さん(東大生産研・名誉教授)は、半導体・応用物理の分野で著名な研究者。

理事(総務・財務担当):榎本剛さんは、文科省キャリアで役員出向で奈良へ、多分2年程度このポジションに就きます。文科省では科学技術畑、学振でもキャリアあり、文化庁でも審議官のポジションにいた人。そのため、大学の活性化には適任、文化庁系の博物館などとも話をつけやすい。お仕事もとても良くされる方ですので事務サイドからのサポートの面でもとても頼りになります。

理事(教育・研究担当・※非常勤):西村いくこさんは、甲南大学退職後もそのまま学長直属特別客員教授。同時に少し前まで学振学術システム研究センター副所長のされていた方。日本の外部資金・科研費関係の取り扱いについてはエキスパート。理系の学部の活性化にはうってつけ。

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工学部客員教授石黒 浩さん(阪大基礎工栄誉教授):大学に関わらない人でもマツコロイドの設計などで知られる知能ロボットの権威。本務先は阪大ですが、週に一回でも大学に来てくれるだけで学生のモチベーションがあがると思います。

以上のような方々の顔ぶれだけを見るにつけても、単に小規模文系大学の統合を行うというイメージではありません。上からの改革となりますが、文科省が今後の国立大学の行く末を見据えた気合の入った再編を行うことが期待できます。なお、筆者私的に申し上げても(双方の個人情報を露出しないようにするためあまり書きませんが)この中のお二人については(仕事で)と東京や大阪で何度もお話した方。そのためもあって期待度は大です。

まとめ

いつものまとまらないまとめですが、この新設の女性専用工学部、大学全体の総定員の縛りがあって50名ほどの募集、ですが、関西圏のみならず、全国的に女性受験者の方やその家族の方には覚えておいていただいて良い学部たと思います。将来的にはお茶さんも同様な試みをされるようですが、東京と異なり、心地の良い地域性があるというところで差別化が出来るのが奈良女さんの強みだとも思います。合わせて、奈良カレッジズ構想により文系学部についても、博物館や研究所との交流が深まることは、教育研究の掘り起こしによる発展が期待できます。筆者の結論としては、今回の奈良女さんと奈良教さんを中心とした組織的統合は他の同じような悩みをかかえる地方国立大学へのモデルケースになるのではと思いました。

古都奈良を楽しむ

奈良女さん、奈良教さんがあるあたりを中心に観光案内。阪神間から奈良(市)へ公共交通機関で行くには近鉄奈良線かJR大和路線を使うのが普通。大阪平野奈良盆地の間には生駒山地和泉山脈と呼ばれる山々が連なっています。一番よく分かるの空から。羽田から伊丹行きの飛行機にのると伊勢湾から紀伊山地にはいり、奈良盆地の上を飛行。そして高度を下げつつ生駒山頂をかすめて大阪平野に入っていきます。その山々を通り抜けるため、地上からだと山脈の標高の低い部分や大阪湾へ流れる大和川に沿って電車が走っています。筆者の場合、近鉄を使って奈良に行くことが多いので近鉄ルートでご説明を。

【写真1】奈良公園1 近鉄奈良駅を降りてそのまま県庁などがある大宮通りを若草山のある東に歩いていくと奈良公園エリアに入ります。シカは駅近くの興福寺や県庁周辺にもいますが園内に入るともっとたくさんに。奈良女さんも県庁の近くにキャンパスがありますので普通に構内にシカがやってきます。

【写真2】奈良公園2 まずは東大寺、誰も知っている若草山春日大社もすぐ近く。奈良国立博物館もご近所

【写真3】奈良公園3 冬毛のシカ

【写真4】奈良ホテル1 奈良公園にほど近いところにあります。木造の洋館スタイルで歴史を感じさせます。

【写真5】奈良ホテル2 ホテル内もクラシック

【写真6】奈良ホテル3 施設内の様子1

【写真7】奈良ホテル4 施設内の様子2 良い雰囲気のレストランでお食事できます

【写真8】明日香村1 こちらは初秋の明日香村。場所は奈良市より南の方向。桜の美しい吉野山へ向かう近鉄吉野線沿線になります。最寄駅の飛鳥駅周辺にはレンタサイクルやさんがありますのでのんびりと走り回って散策すればHappyな気持ちになります。写真はのどかの光景を中心にしましたが、周辺には高松塚古墳、橘寺、飛鳥寺、奈良文化財研究所飛鳥資料館等々いろいろ楽しめる場所が盛りだくさん。

【写真9】明日香村2 彼岸花と田園風景に癒やされます。新緑のころもキレイです

【写真10】明日香村3 亀石 チャリで走っていると、こんな感じの古代石造物を点々と見ることができます。

【写真11】明日香村4 石舞台古墳 とおくから

【写真12】明日香村5 石舞台古墳 近くから

【写真13】明日香村6 川原寺跡はお食事処になっています