FOU’s blog

日本の大学 今 未来

甲南大学 荒勝文策先生の系譜を感じてみる 中

では関西私立大学での甲南大学の立ち位置を筆者の視点で評価してみます

今の甲南大学 関関同立産近甲龍

関西圏での大学受験業界では、一般的に関関同立と呼ぶ4大学とその一つ下位にある産近甲龍と呼ぶ4大学があって~というカテゴリー分けが通説化されていて、高校生もその家族も高校の進路指導の先生も含め『そんなもんなんだ』と理解しています。しかしながら、筆者のような私立大学以外の高等教育(その中でも大学院教育・国際交流・研究支援あたり)で飯を食ってきた者にとってはどちらも大して差がない存在にしかみえません。一例をあげれば研究力、外部資金となる科研費の中でも、もっとも基本的な基盤研究の受託件数、JSPS特別研究員や同外国人特別研究員の採択数なんて、京大阪大はもとより神戸大学にもその数値は遠く及びません。

それでも、そんな筆者にランク付けしろとどうしてもという言うのであれば、関関同立なら同志社(まあまあ)→関学・関大(同じ)→立命(いくな)、産近甲龍なら甲南→京産龍谷(同じ)→近大(いきたけりゃどうぞ)の感じ。その理由はそもそもの話に立ちかえり、ちゃんと大学が学生に教育を提供できていて、先生がちゃんと研究して成果を出しているかがポイントに考えるから。まずでは教育環境について、研究環境についてはで書いてみたいと思います。

 【写真】2枚とも正門周辺、コロナ対策で一方通行の制限を行っていました。学生も不要不急の登学の制限があるようでまばら。

f:id:FOU:20201124234642j:plain

f:id:FOU:20201124234916j:plain

甲南大を推す理由 少人数制

関関同立の学部毎の学生数は大体3000人規模、甲南大は1500人台。なお、首都圏に行くとさらに巨大な学部もあったりします。そんな大学では講義室もバカでかく300人あるいは500人以上収容できる講義室がたくさんあることをHPで(自慢げに)見せてくれたりしています。規模の大きな大学なら人気ある科目(いわゆる楽勝科目)の履修登録者数が1000人超えでも(全員出席しないことを見越して)300人部屋を割り当てるような愚鈍なご都合主義をやっていたりします。演習と語学系科目を除けばほぼ全ての科目をこの調子でやって卒業させてしまう日本の私立大学の異常性については多くの人たちに気づいてもらいたいところです。

海外に目を転じれば、北米の大学でも大教室はもちろんあります。筆者自身も大学に階段教室はあってもよいものだと思います。アメリカの場合、結構意外になりますが、高等教育の主体となる州立大学の方が公的な社会的要請もあって学生の受入れは多め。反対に私立大学の方が(高い授業料を学生に求めている責任もあり)入学者の絞り込み行っています。いずれにしても日本の私立大学のようなことはやっていません。カナダについても高等教育はほぼ全てが州の仕事ですから公教育的な歯止めがきいて学生の受入れが極端に多くなることはありません。

参考:アメリカUCBerkeleyの場合https://admissions.berkeley.edu/student-profile

日本の(私立)大学に話を戻すと、なんでこんなことになってしまったのか?その理由の一つは、1960年代から1980年代まで続く極端な大学の入学定員の拡大を主として私立大学が請け負ってきたこと。その負となる出来事が、日大紛争から始まる学生運動の要因の一つとなりました。戦後の高度経済成長期の日本社会の縮図で興味深いことが多いのですが、どんどん脱線しますので、機会があれば別のところで。以下、参考となりそうな資料をいくつか。

文部科学省HP : (リンクなし) トップ > 白書・統計・出版物 > 統計情報 > 文部科学統計要覧・文部統計要覧 > 文部科学統計要覧(平成30年版)>11 大学内(excel)→過年度は5年刻みですが状況はよく分かります。

資料7 高校教育及び大学教育との接続の現状(3/5) (mext.go.jp)pdf file

高学歴社会の大学―エリートからマスへ (UP選書)

おさらいとなりますが、高等教育をやっていて、学生数が多い授業から生じる弊害は山ほどあります。その一番は座学となって一方通行の授業となること。場合によっては、教える側も学ぶ側も一度も目を合わせず言葉を交わさず、それでいて定期試験をやれば単位が転がり込んでくるような高等教育をやっているのはG7諸国では日本だけ。真面目に大学で勉強をしたい人には偏差値の高低に関わらずこの日本独特の授業スタイルはオススメできません。蛇足ですが、首都圏にある日本ではトップクラスの私立大学の(アメリカ留学経験のある)総長は『世界でトップクラス』の大学を目指すことを標榜していますが、そのためには、数が力ではなく、入学定員の適正化がその近道になると感じとってもらいたく思います。

そんな日本の私立大学の中で、甲南大学各学部の入学者数はそれぞれ400名未満に調整されています。これまで定員の増加をしてこなかったことはオトナの諸般の事情もあったことも想像できますが、結果としてミディアムサイズの総合大学としての個性を出すことができ他の大学との差別化を図ることができていると思います。

 

 

fou.hatenadiary.jp