FOU’s blog

日本の大学 今 未来

日大の出来事を感じながら私立大学の有り様を考えてみる 5

日本大学再生会議は(答申まで)8回やります

筆者がわざわざ中継報告しなくても良いのですが、、第6回までは論点整理等々で7回、8回(最終回)で答申の策定・提出をするようです。このあたり日本大学さんのHPに分かりやすく出ていますので関心のある方は眺めてみると良いと思います。今拝見できる一番新しい議事録が第四回ですが、折角ですので筆者目線で気になったところを考えてみたいと思います。

今後の大学内における女性人材の登用について

有識者さんたちも女性人材の登用を議論されているようなのですが、今現在の日大さんの状況があまりにひどくて手の施しようがありません。急に数値目標だけをあげてもそれに見合う女性人材が育っていない云々で行き詰まっている様子。確かに急に増やすにも人材が育っていないので、最初のうちは女性に多少配慮した登用(同じ実力の候補者が男女でいるなら女性を選ぶetc)から始め、さらに中長期的な方向性を定めるしかないと感じます。

参考になるかわかりませんが、筆者は、NAFSA 1999 Annual Conference at Denver に参加しました。その時の面白い会話がアタマに残っています。ある小さなミーティング(会議の議題・内容は忘れました)の席上で一般の出席者(男性)が、講演している人物(みんな女性)に対して『なんで大学のスタッフは女性ばかりなんですか?』と質問。確かに筆者も同感、カナダもそうですがアメリカも大学の上層部の女性比率は日本の比ではありません。で、その女性たちの答えが『私たちは差別なく平等に選考しています。その結果が女性ばかりで…』みんなクスクス笑いながらお話されていました。ですので、ジェンダーとかダイバーシティーという言葉を抜きしても、また、他国の事例をみても大学で働く女性(特に管理職員)の比率が高くなって何ら不都合が生じることはないと筆者も思います。

大学スポーツのあり方

基本的には今のあり方で良いと考えている様子。ただ、大学が行なっているスポーツ推薦やスポーツをやっている学生への奨学金のあり方については透明化等々を考えてみるようです。筆者は違うタイプの大学で働いているので、あるスポーツが得意という理由で入学を認めたり奨学金がもらえるというのは、その必要性について理解しがたい部分もありますが、関係する人たちが許容し一定のしっかりしたルールの中で行なわれるようにしてもらえれば、と思います。

答申のゆくえ

多分、答申の内容は、ガバナンス(幹部の決定方法・組織作りetc)が中心なので外部の人には面白みは少ないかもしれませんが、そこまで追っかけて行きたいと思います。

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www.nafsa.org

 

 

2021年度第12回育志賞受賞者がきまりました

育志賞はJSPSがやっているがんばっている博士(後期)課程学生への顕彰事業。ブログ、メディアで取り上げられることも少ないと思いますので、筆者の知識の中で積極的に取り上げるようにします。

日本で数少ない博士学生の顕彰事業

育志賞は、JSPSのやっている博士学生の顕彰事業。今年で12回目になります。令和4年1月20日、2021年度の受賞者の発表があり18名が選ばれています。つい最近まで、それぞれに所属する学術団体での表彰制度を除けば、日本で全てのフィールドを対象にした博士号取得のためにがんばっている学生へ顕彰する事業というものがありませんでした。JSPSは他にも、若手研究者へ向けた日本学術振興会賞、国際選考の国際生物学賞、アフリカの感染症対策をテーマとした野口英世アフリカ賞などの顕彰事業も実施しています。基本的にMEXTは、競争的資金の大半と学術研究にかかる事項は、JSPS経由で行っていることは、知っておかないといけません。なお、受賞者は賞金ももらえますが、それより引き続き特別研究員DC・PDの受給資格を得られることも魅力だと思います。

育志賞の傾向を考えてみる

今回選ばれた18人の出身大学院、東大7名を筆頭に北大、東北大、名大、京大の旧帝大勢、私大は芝浦工大東京理科大のお二人ががんばりました。今年の傾向は、東日本の大学の受賞者が多い印象。また、受賞者の中に女性が7人、また、この賞の選考委員は、9名でそのうち3名が女性。JSPSの偉い、もしくはそつのないところは、細かいところまでダイバーシティーに気を遣っているところ。このような取組みで、出産・育児で研究中断した若手研究者のための特別研究員RPDについても事業として定着してきました。このあたりは、これからの日大さんも参考にすべきポイントです。

この賞の、それぞれの大学長から推薦できる枠は、人社系、理工系、生物系からそれぞれ1名、その他に分野を問わず1名の計4名までなっています。でも、東大の受賞者は7名。その理由は、学術団体長推薦からのもの。結局18人中7名が東大所属となりました。ホンネで言えばJSPS(MEXT)も、いつも東大ばっかりと言われたくないのでいろいろ工夫をして門戸を拡げているのですが、結局この有様。

その18人の中で筆者が気になった人は京都大学の中西さん。中西さんは、京都大学大学院医学研究科・マギル大学ゲノム医学国際連携専攻の在籍している方。筆者はこのプログラムを(筆者のマギルつながりで)時々HPで眺めていましたが、多分、大学間からだけでなく様々なところからの肝いりで進められたプログラムではないかと感じています。でないと、なかなかここまでうまく進みません。中西さんはもちろん優秀な方だと思いますので引き続き良い成果を出していただきたいと感じます。日本でのマギルの知名度は少し低めですが、カナダでは東海岸ではU. of Toronto の医学部と双璧。THEでの評価でも日本の大学よりかなり上に位置しています。事務的に感じることは、HP内に載っている設置計画履行状況報告書。多くの部分は教員主導で作成していると思いますが、このプログラムをMEXTに提出し事業継続するための作業が出来る事務職員がそろっているのは、関西圏では、京大・阪大、もう一つあげるとすれば神戸大あたりまで(筆者の推測)。他の大学では、プログラム型の大型科研同様、大学内にMEXTとの協議して書類作り等が出来るレベルの人材が(残念ながら)存在しません。特に国際関連のプログラムはハードルがさらに上がるので、事務では無理で言い出しっぺの先生にお任せするするしかありません。このあたり、筆者が大学での国際系の事務職員が育ってもらいたいところ。育つと大学の国際化がどんどん進みます。

その他

育志賞は、申請時博士課程在籍学生のための賞ですが、日本学術振興会賞は若手研究者向けの賞。以前お話したように、大阪市大より斎藤幸平さん以前に受賞しています。年末年始のNHKBS1を眺めているとよく登場されていました。

www.mcgill.ca

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共通テストのカンニング(不正行為)について多方面に考えてみる

大学入試では思ってるよりカンニングしている人を捕まえるのは難しいんです。

共通テストを実施する際の難しさ

当たり前の話ですが、共通テストは直接自分の大学とは関係のない、大学入試センターから割り当てられた受験生に二日間試験を受けてもらわないといけません。特に英語の試験の時は、音声キットを渡したり、大きな音が外部から聞こえないようにしたりと大変です。それに試験は、北海道から沖縄まで同時刻実施が原則ですから、雪が降ったり電車の遅延があったりすると試験場本部の人たちはみんなドキドキしてしまいます。自分の大学で行なう試験なら、自分の大学の責任で開始時間を遅らせたり出来るのですが、共通テストの場合はいちいち大学入試センターに報告して指示をもらわないといけないのでとても気を遣います。

試験室内

あまり入試に関わったことのない人たち(その人たちの方が圧倒的に多いでしょうが)にすれば、試験監督をやっている人はなんで見つけることが出来なかったの?と思うかもしれません。でも、それはいろいろあって難しい、その理由として、渡された試験監督者向けのマニュアルに沿ってお仕事を進めなければなりませんから。

①100%の確証が無いと不正行為を認定して対応することができません。何か怪しげな紙を持っていたりヘンな行為をしていたりしているとまず監督者が行なうことは、受験生の席周りの巡回の数を増やすくらいしか手立てはありません。

②仮に本気で不正行為で取り締まるとすれば、そのあとの混乱を無いようにするためには監督者2名以上の目視があり確定的なエヴィデンスがないとやったやってないの不毛な議論に陥る可能性があります。また、大学は、警察ではありませんから、今回のようなスマホのような証拠品があったにしても、あくまで任意提出ですので、それ以降の手続きを行なうにしても手間暇がかかります。

で、この判断を行なうのが一年に数回しか試験監督をしない大学教員で、(場合によっては)試験監督のアルバイト学生になります。そんな状況なので一般の人が思うほど大学には試験監督のプロはいないといえます。

また、不正行為を取り締まった際の周辺の受験生に与える影響を考慮する必要があります。特に共通テストの場合、全国同時刻実施ですので、受験を停止した受験生への対応とともに、その試験室の試験時間の延長等について即座に大学入試センターへ対応の伺いをたてる必要があるのでこれまた時間を要します。

で、結局筆者が言えることは、試験は受験生の性善説に依存して行なっているので悪意をもった受験生のカンニングを強く抑止することはできません。それが現実だと思います。

まとまらないまとめ

筆者が当初心配したのは、なんで試験問題が漏れたのか?私大も参加するようになり多くの会場で試験をするようになってから、それに応じて事前に非常に多くの試験会場に向けて試験問題が運ばれます。運ばれた試験会場では、試験問題を試験当日まで厳重に管理するのですが、その段階で何らかの事情で漏れてしまうと大変です。でも、さすがに悪巧みを考える人がいても(すぐバレるリスクがどうみても高いので)今のところ抑止が効いているんだと思います。

今回のカンニングのやり方は、不正行為者がスマホの動画撮影機能で試験問題データを知人の協力者へ送り、協力者は動画をうまく調整してきれいな静止画像に整え、それを東大の学生さんへ送って正解を考えてもらい、それをもう一度協力者が受信して、不正行為者へ伝えるというもの。ピンポイントで1問だけ解きたいという場合は効果があるかもしれませんが、たくさんのページがあって設問の多い共通テストにはあまり効率的ともいえません。もちろん効率云々以前にやってはいけないことです。こんなことで時間を費やすのなら英単語の一つでも覚えるようにしましょう。

 

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日本の大学の教員の資質について考えてみる1 特に般教(ぱんきょ~)の先生

前の就職に関するお話を書いたことで久しぶりに恩師のことを思い出しました。事務系職員のお仕事探しも大変ですが教員の業界も同様です。

恩師の怒り

筆者の(一応)恩師は法学部の先生。学部長や学長補佐、就職部長などのお仕事もやっていました。分野的には経済法(独禁とか)で、経済法は、法学の分野では、一番法曹や公務員試験に縁遠い分野。なお、筆者は、しれっと恩師と書いていますが何かしおらしい振る舞いをしてきた訳でもない不忠者です。すいません。で、筆者が私大に就職後、何かの機会にお会いすることがあってその時のお言葉。(その時の会話はこんな調子・関西弁は多少誇張し過ぎているかもしれません)

共通教育科目の教える先生の資質・あり方が気になる

恩:『お前んとこの大学にAという教員おるやろ?』

筆:『はい、法学教えているA助教授のことですか?』

恩:『そや、あいつ一体なにやっとんや?』

筆:『一般教養で法学とかを……』

恩:『そやろ、このまえあいつと話することがあったんや。なんであんなんが助教授やっとんや?』

筆:『それは私に言われても…』

恩:『わしなんか修論修士論文)出すときも博論(博士論文)出すときもクソミソに叩かれて叩かれてようやく取れたんやぞ!それがやなあ、あいつはなんなんや!』

こんな感じで、恩師のお怒りの原因は、A助教授の素行がお気に召さなかったということ。A助教授は、どっかの大学で法学修士を取って、運良く現在のポジションをゲットし、今では事実上(よく言えば)教育者ではあるが、研究者は放棄してしていて、(まだそこそこ若いのに)学会活動(講演とか発表とか)はしなくて、数年に一度、自分の大学の(誰も読まない)紀要に数ページの投稿?をしている程度。これで今のポジションは一生涯安泰。基本的に教養科目の人文社会科学系分野の授業を数コマするだけで何もしなくてOK、さらに所謂(助)教授室も持っています。方や恩師、学位を取るのに苦労はするは、働き出したら学部の授業、大学院の授業と指導、学内委員、学外では学会の委員などなど息つく間もないほどやっている自分との対比でご立腹されたご様子。

大学設置基準上、一定数の常勤教員を配置する必要性があるので、般教とはいえフルタイムの教員を何人かは揃える必要があります。そこでこの助教授は(運良く?)ポジションを得ることが出来たようです。他にも筆者のいた私大では、英語とドイツ語を教える先生を常勤で雇用していました。あと、もう一人社会学を教えていた常勤教員がいた気もします。言語系の先生は、入試問題を作る際に何かと重宝しますが、法学の先生はあまりその他の使い道はなさげです。この事を反対に言うと、大学側のニーズは(残念ながら)この程度、なので、大学院出て博士号も取ってるのに非常勤講師を幾つもやりつつ常勤教員のポジションを探している人の苦労話をテレビなどで見ることがありますが、(これだけ大学はあるのに)大学側の需要はそれほど多くは無いというのが現実と言えます。筆者個人的には、専門的な能力をお持ちの方は、働く選択肢を高等教育の場だけではなく、自分が活きる場を他にも探すことも重要だと思います。

人社系・自然科学系の教員の資質は恩師が昔々コメントした状況がいまでも継続しています。総合大学であれば専門の先生が持ち回りで般教の科目を引き受けていますが、それでも般教のプロパー的な教員は語学系を中心にまだまだいらっしゃいます。その大学での語学習得について、筆者が見ている限り、(筆者は何度も書いていますが)現在でも大学で2言語を学ぶ目的もはっきりしていません。読むこと書くことに重点を置くのであれば日本人の教員でも出来そうですが、(ホントは)特に話せる会話能力に重点を置くのであれば、20人以下のクラス編成とその言語のファーストランゲージの教員が望ましいに決まっています。語学の学びなんですから、それなりの目的と教育効果がないとやるだけムダです。現在の専門教育(2年次以降の学部授業を担う)以外の基礎科目を担う教員については、なんとなく授業とともに(大学院を修了した人たちのための)雇用の確保もあるようにも感じます。

まとめ

このお話の論点、恩師の考え方と仕事の少ない?助教授のあり方については、双方に言い分があります。特に助教授側は、自分の研究や存在が(自分で選んだ道とは言え)同じ大学の中でも低い(と感じられる)ポジションであることも理由ではあると感じます。

このことは、長年行なわれている日本の大学の仕組みですぐに大きく変わることは難しいですが、中長期的な視野で教員組織のあり方・カリキュラムを考えることが必要と感じます。

 

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日大の出来事を感じながら私立大学の有り様を考えてみる 4

日本大学再生会議は(ほぼ)毎週やります

大変失礼しました。再生会議はがんばって毎週やるみたいです。お忙しい外部有識者さんのことですから、一週間に一回のペースで2時間に及ぶ対面会議をすることは大変だと思います。日大さんの将来へのためみんなで頑張ってほしいものです。

現段階では、これまでの日大さんのガバナンスの状況を中心に何が良くなかったのかを委員みんなで洗い出して、今後どうやって大学の経営・管理部門の幹部の選任を如何に透明性を持って選べるか、その組織作りが出来るか、を考えていこうとしています。今のところは各委員の発言を集約し論点整理をしている段階。この議論は、他の同様な問題を抱える大学の参考事例になるかもしれません。

筆者個人的には、日大さんの体育会系団体のガバナンスと資金面でのあり方についても検討課題にしても良いのかな、と感じます。

 

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日大の出来事を感じながら私立大学の有り様を考えてみる3

日大さんのことは大切なので方向性が定まるまで引き続きフォローしていきたいと思います。

私立大学等経常費補助金(約90億円)が不交付

日本私立学校振興・共済事業団は、1月26日、2021年度分の補助金の不交付を決定しました。日大さんは、同時にHPに、日本大学再生会議と第三者委員会を設けてこれからのことを考えます、授業料は(今のところ)上げないようしますetcと書いています。普通に考えて90億円って大学経営上大きなお金です。授業料に転嫁しないといっていますが、補助金の不交付は、2021年度以降も継続する仕組みになっていますので、新たな自主財源がないと遠からずお金が無くなってしまいそうです。

同時にHPには、第1回日本大学再生会議の議事録(要旨)ものっていました。この会議は、2021年の末に設置されて1月に第1回会合が行なわれ、所謂誰が見ても(まあ)納得がいく外部有識者さんが顔を揃えています。3月末には答申を出すことが決まっているようです。筆者として気になるところは、とても偉い有識者さんが集まっているので、会議のスケジューリングがかなり厳しく、答申出すまでに会議は多くても数回が限界。答申の方向性は、(多分)決まっているので全員集まるというのは、外部向けのセレモニー的部分もありそうなので、それほど気にするも必要ないのかもしれません。手前味噌的ですが、議事録を眺めていると、筆者も問題視していた女性人材の活躍や学閥問題も出席者から指摘があったようです。このあとは3月の答申を楽しみに待つことになります。

今後の気になるところ

今回の日大さんの改革への動きは、今始まったばかりとはいえ、一応、取り組み、進め方はマニュアルどおりで及第点?とも言えます。

ただ、気になる部分もあります。多くの人は忘れがちになっていますが、2017年頃、医学部入試の実施方法について(日大さんだけではありませんが)大きな社会問題となりました。そして、大学基準協会さんが実施している機関別認証評価について、2020年2月に2017(平成 29)年度大学評価結果(判定)が変更され【否】となってしまいました。その理由としては、①受験者の属性による不公平な取り扱い、②学生の受け入れに係るガバナンス、③入試に係る内部質保証、あたりが指摘のポイント。例えば、女性受験生の不平等な取り扱い、医学部卒業生の子弟の優先的取扱いなど、大学入試の出願書類には書かれていない部分で受験生に対して何も告知なく不公平・不平等な大学入試を行っていたことが後刻判明したので、大学基準協会さんとしても遡及変更することになりました。このことは、他の医学部にも同様の事例が多く発生し、社会的制裁を加えられています。日大さんの場合、今回の事件も大学内のガバナンスであったり風通しの悪さが起因している部分など、医学部入試の際の状況と大きく変わらない体質として見られることになります。そのためには、短い時間ですが、現執行部の人たちは、一生懸命頑張って目に見えて日大は変わった!と思われる取り組みを行なう必要があると感じます。

大学基準協会さん 機関別認証評価→日本大学 を探せば評価結果を見ることができます。

www.juaa.or.jp

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歯学部と歯科医のメンタリティーをいろいろ考えてみる

もう数十年前のことになりましが、筆者は歯学部を卒業したての人と仲良しな時がありました。

※(筆者としては)書いている話は間違ってはいませんが、場所や日時が特定されるとややこしいので基本的には全て仲良しの歯医者さんから聞いた話にぼかしてしておきます。それに前世紀のお話。この彼は30歳前に歯学部に再入学した変わり種の人。昔はやんちゃだった皆さんもとっくに社会的責任が求められる年代になってしまいました。

口の中だけというコンプレックス

そもそも歯学部と医学部の違いを患者さん的な立場で言うと、歯医者さんは口の中だけ医療行為が出来る人たち。ですから、歯医者さんは熱いコーヒーを飲んで舌を火傷してしまったら(特に口腔外科を標榜している)歯医者さんは治療をしてくれます。でも、熱いコーヒーが手にもかかって水ぶくれになっていたとしても、歯医者さんは『こちらは外科か皮膚科に行ってください』になります。反対に(医学部を出た)お医者さんは、(専門領域の違いはありますが)手の水ぶくれも、口の中の舌もどちらも治療ができます。そこが(わかりやすい)歯医者さんとお医者さんの違い。

仲良しだったアタマの良い卒業したての歯科医師の彼との会話で今でも記憶に残っているものがあります。彼が某病院で急患対応の夜の当直(バイト)をしていた際、アタマの悪い医学部出身の医師(もちろん医師免許はあり)と当直が一緒となったとのこと。その二人で、深夜、急患が運ばれてきて対応、アタマの悪い医師が、容体を見て診断を下し処置を進めるのですが、どうもおかしい。アタマの良い歯科医師が一つ二つ治療方針について質問をすると(最初のうちは)何を歯科医師ごときが!的な態度で相手にしていなかったのですが、次第にしどろもどろになり結局治療のやり直しになったとのこと。※こんなノリで医者が急患の対応をしていること(もある)については、それはそれで議論が必要かもしれませんがこの場ではその評価は避けます。とりあえずアタマの良い歯科医師さん的にはどうだ医者にかったぞっ!と勝利の余韻に浸ることが出来たそうな。

特に彼の専門領域は、口腔外科の中でも、全麻下で顎関節症や下顎前突症の手術をたくさん手がけていたので、患者の全身症状の把握は通常の外科医と変わらないレベルだったと思います。また、通常の口の中の治療でも、高血圧や心疾患をもった患者がいるわけなんで全身症状のチェックができないと危険です。そこで彼とお話をしてて感じたことは、(まだ若いこともありストレートに)彼が医者に勝ててうれしい!の気持ちが満ちていたということ。この言葉の評価にもいろいろありますが、筆者的には歯医者は医者に対してのコンプレックスがあることを反対に感じてしまいます。

歯医者さんをナメてはいけない

コロナワクチン接種の際も、厚労省が人が足りないので歯科医にも協力してもらおうという声が出たら、医師会側から(あいつら大丈夫かよ的な上から目線で)不要論が出て、メディアからも歯科医も接種へ!的なちょっと懐疑的な目でとりあげられていました。ただ、それには、一部の歯医者さんで良く行なわれる自由診療で歯を白くする、歯並びキレイにする歯列矯正をする、インプラントで歯を復活させる的な診療に特化している所謂富裕者向けのサービスを行なっていることも原因のように筆者は感じます。

なお、普通の街中の歯医者さんでも所謂親知らず(智歯・第三大臼歯)などの埋伏歯の抜歯が必要な際は、自分が卒業した大学の病院や口腔外科をやっている総合病院に紹介状を書いて自分ではやらない人が多くいます。(歯医者ではない)筆者が思うその理由は、臨床上の経験が少ない(最近抜いていない)、診療時間に(これは外科手術ですから)抜歯して、患者さんが帰宅後抜歯後出血や予想外の事が起こった時(診療時間が終わっていると)対応できない、(外科手術なので)抜歯後ままあるそこそこの出血や顔面が大きく腫れるようなことが起こると知識の乏しい患者にヤブ歯医者扱いされることも懸念材料になるのかもしれません。

特に各地の歯学部附属病院では口腔内領域での悪性腫瘍の治療、口唇口蓋裂の長期的な治療、顎骨周りの骨折治療など普通の人たちがイメージするお医者さんの仕事をやっている歯医者さんもいます。ですので、歯学部附属病院では入院も手術もやってますし、患者さんも(重篤な全身症状がでたら転院することもありますが)死亡退院することもあります。

※筆者が謎に思っていることがあります。某有名タレントさんの舌がんの件。(筆者はもちろん歯科医ではありませんが)舌がんは病変が目に見えるところに出来るのと、患者さんの舌の違和感があるので(多分タレントさんなら定期的に歯科治療はしてるでしょうから)普通の歯科診療時に普通の歯医者さんなら、病変を確認し病理検査をすれば、早期に発見できた気がしてなりません。残念ですが様々な不幸が重なって進行が進んでしまったことが悔やまれます。一般論として特に口腔内の悪性腫瘍はタバコやアルコールに起因する(直接影響を受ける部位でもある)ものが多いので気をつけましょう。

レベル差を懸念

東日本では、東京医科歯科大、北大、東北大、西日本なら、阪大、九大、広大、岡大、徳島大あたりの国立と旧制の歯科医専を起源とする大学あたりは研究も臨床もそれなりに大丈夫だと思いますが、それ以外の歯学部とそこで学ぶ学生は格別のがんばりが必要になります。歯学部設置の地域偏在性や(都市部は充足しているように感じますが)実際歯科医は日本全国で足りているのかいないのかなどなど身近な問題として考える時期ではないかと感じます。