FOU’s blog

日本の大学 今 未来

ヨーロッパの大学7 UK編

 いよいよ?ヨーロッパ編の取りとなるのが英国。

Q まずクイズ   この建物はなんの施設でしょう?

所在地は、6-9 Carlton House Terrace, London SW1Y 5AG 大学の事務職員でこの写真をみて『あ~知ってる!これは○△◇の入口でしょ』と言える人物は超上級者(なんの上級かはよくわかりません)。知っているとすれば、東大、京大、早慶あたりで国際交流に精通した人なら可能性あり。日本国内でも即答できる人は(多分)100人以下の難問。答えは最後の方で。ヒント:大学ではありませんが、英国の重要な学術研究支援団体の本部です。ちなみに筆者は、ちゃんと中に入って、紅茶とクッキーいただきながらお仕事をしました。

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普通にすすめられる留学先

筆者はカナダ党なので、長期の留学先はカナダを一番にすすめますが、イギリスも決して悪くはありません。 特にロンドンエリアには良い大学が集中していますし、イギリス全国的にも大学としての質的な保証はされていますので留学してみてハズレな大学は少ないと思います。また、世界的にそれぞれの大学の評価が定まっていますので、留学をした学生のキャリアパスとしても将来的にも役立ちそうです。それに地勢的に公共交通機関のみで通学することが可能なエリアが多いことも魅力だと思います。治安も通常の警戒心でやっていけます。あとはコスト面。

イギリスやオーストラリア、ニュージーランドあたりの英語圏もそうですが、留学生の受入れには積極的な一方で、その授業料はしっかりいただきます。日本みたいに、外国からの留学生は(多分・きっと)お金に恵まれていないだろうからと(勝手に邪推して)出身国の所得が分からないまま、授業料を減免や返還義務のない奨学金をプレゼントしたりということはありません。また、奇特な受入れ教員が留学生のためにカンパを求めて基金作りをするようなお話も聞いたことがありません。粛々と支払いできないのなら「今回は残念でしたね。また機会があれば是非あいましょう」とお別れになります。このあたりは日本の留学生政策もクールに改め、求める留学生も諸外国の(ある程度)裕福な学生層を対象にする必要があると思います。

カナダ党の筆者も困る?ところは留学生対象の授業料の跳ね上がり。20年くらい前までなら他の欧米諸国と比べても、またカナダ国内との水準と比べてもまあ納得がいく金額だったのですが、最近はどんどん高くなります。その理由は一部の国(はっきり言えば中国のことですが…)の留学生が大挙やってきて中国専科となってしまうためその歯止めを兼ねてが大きな理由、これは日本においてもそうですし、欧米の大学も同様。それぞれの大学としても留学生を受け入れる際、一定の国ごとの定員・学生とかの設定によりバラエティ豊かにしないと、何のために、そして誰のために大学があるのかわかりません。

「どの分野も強い」という強み

例えば今回の新型コロナウイルスワクチン開発でもイギリス系製薬企業とオックスフォード大学との共同研究が進み量産化までこぎつけました。医学・医療の分野の優位性ははやり少し前まで世界中に多くの植民地を抱え様々な地で生じる疾病対策のノウハウがあるものと言えます。このあたりは金融・経済学のフィールドにも強みを持つのと同様。また、どの大学も大学としての教育提供の質的保証も感じられますので比較的安心して留学できます。あとは筆者のように「(国・地域選びで)どこが好き」的な自身の嗜好によるえり好みで最終決定をすれば良いと思います。あとは写真で。

 【写真1】Heathrow Express と Oyster Card

Heathrow Expressはその名のとおりHeathrow空港のいくつかのターミナルから London Paddington 駅を結ぶ電車。停車駅が少ないのであっという間に空港駅~Paddington 駅 に到着します。利用するときは、往復切符がお得。なお、時間的に余裕があるなら同じ路線の在来線を使えばもっと普通に乗れます。イメージ的には(関西圏外の人にはとてもわかりにくいですが)南海電車なら特急ラピートで行くか空港急行で行くか。JRなら特急はるかで行くか関空快速で行くかの違いみたいな感じです。(成田空港の場合、東京方面からJRを用いるならNEX以外の手段が見つからないところが困りものです)

Oyster CardPASMOICOCA的なプリペイド式カード。ロンドンの地下鉄はチケットの販売機自体が少ないのと、人がたくさんいる中、駅周辺で財布だして現金を見せるリスクも回避できるのでこちらもおすすめです。

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www.heathrowexpress.com

oyster.tfl.gov.uk

【写真2】イギリスにいるとこの横断歩道の表示と地下鉄に乗った際の mind the gap が耳に残ります

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【写真2】  Tower Bridge

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【写真3】Palace of Westminster

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【写真4】月並みですがFish & Chips どこのお店でも悪くないお味ですが、あれもこれもいろんな種類を買うととてつもない量になるので注意が必要。このお店(Micky's Fish & Chips)はPaddington 駅からすぐにあります。

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【写真5】Fish & Chips 2

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【追加写真1】パブで食べたらこんな感じ

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【写真6】ロンドンでフレンチ1 ハロッズの近くのホテルレストラン。なお、最近オーナーさんが代わったようで(お店はありますが)ブリティッシュスタイルになっているようです。

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www.therestaurantatthecapitallondon.com

【写真7】ロンドンでフレンチ2  MaryleboneConran Shopの2階にあるレストラン。スタッフのおもてなしがとても洗練されています。また、筆者個人的にもこの店の味つけが気に入っています。写真は見てのとおりの牛フィレ肉のロッシーニスタイル。Oxford Streetあたりでのお散歩・お買い物にあわせて楽しいお食事を。

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www.orrery-restaurant.co.uk

【写真8】Hyde Parkを歩くカモ

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【追加写真2】University College London の Blomsbury Campus 

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【追加写真2】University College London の Blomsbury Campus 

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 Aそれでは正解発表

 答えは、The Royal Society でした。日本語では複数の呼称が用いられますが主として王立協会と訳されています。The Royal Societyはイギリス最古の学術研究の啓蒙・顕彰・支援を行う団体。日本的に言えばJSPSがそれにあたります。ただ、イギリスの場合、The Royal Societyは広めに自然科学系分野全般を担当、広義の人文社会科学系分野ならBritish Academy、それ以外にEconomic and Social Research CouncilESRC・経済・社会科学系分野)、Engineering and Physical Sciences Research Council (EPSRC・工学・物理系分野)、UK Research and InnovationUKRI・先端研究分野)のような機関が該当するフィールドの支援を行っているのが他の国の制度と異なっているところ。なお、大学の国際分野をやっている事務職員で教員にこんなことをスラスラ説明できると尊敬されるか気味悪がれます。royalsociety.org

www.thebritishacademy.ac.uk

esrc.ukri.org

 

epsrc.ukri.org

www.ukri.org

 

大学入試の問題点を考えてみる(新企画予告)

最近の本ブログへのアクセス状況を眺めていますと(少ないながらも)日本国内の大学比較や受験動向に関心を持っている方がそれなりにいらっしゃることを感じています。

筆者個人的には本ブログを読んでいただける方は、大学を卒業したくらい以上の年齢層で、大学・高等教育に関係した仕事に就いている、所謂同業他社の方を中心とした内輪話をイメージしていて、入試のお話は優先事項ではありませんでした、でも、折角なんで、思うことを書いてみようかと。そのため、新たな読者層の掘り起こしをも、と、考えてみましたが(普通に大学受験云々を書いても詮無いので)これまでの視点は崩さないまま日本の大学入試の改善を提案していけたらと考えています。ですので(多分)高校生の方にはちょっとむずかしめかもしれませんが文章自体は平易なつもりですのでがんばってついてきてください。

今のところアタマに浮かんでるトピックは、初等中等教育時の英語教育のあり方と大学入試、そもそもの受験生が行うべき志望大学の決定方法について(これがメイン)、 そして、予備校というものの存在意義・提供する大学偏差値との付き合い方etcを考えています。

 

と、勢いのまま予告してしまいましたが、同時並行で 海外の大学事情 を、これから イギリス⇨アジアに戻って⇨タイ⇨中国まで進める予定ですので、しばらくはこちらを眺めてお待ちください。

 

↓新企画1です20211127追記

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ヨーロッパの大学6 ドイツ編2

ドイツのその2はお出かけ情報。以下帰国までに時間のある方にはお役に立てるかもしれません。写真たくさんでご案内します。

 ダッハウ強制収容所跡 Konzentrationslager Dachau

ミュンヘン郊外にあるナチス政権時の強制収容所跡。多くの強制(根絶)収容所はポーランドなどの東側地域に設置されていましたので、旧西ドイツ地域で収容所跡地の見学ができる貴重な場所と言えます。この収容所はナチス政権発足時に既に作られた施設で当初はユダヤ人を対象とするのではなく、政治犯のようなナチス政権に不都合な人物を送り込む場所だったようです。ただ、戦争期に入ると戦争捕虜、ユダヤ人等種々雑多な人たちが送り込まれ亡くなることになります。現在の収容所跡地は、戦争犯罪を記憶する博物館として整備され当時の負の歴史を知ることが可能。学生など若い人を連れて行けば良い学びの場となると思います。

ミュンヘンからなら、近郊線のSバーン2号線 Dachau駅下車。あとは726番のバスでKZ-Gedenkstätte駅で下車します。バスの運転手さんも英語が通じにくい人が多いのはやはりドイツ。(収容所跡に行くのに似つかわしくありませんが)周辺は綺麗な住宅街となっていますので、行き帰りかどちらか歩いてみると周辺の今と過去を知ることができると思います。あとはミュンヘン周辺の写真を幾つか。 

www.kz-gedenkstaette-dachau.de

【写真1】SバーンDachau駅前のバス乗り場(ここはさすがに英独併記)

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【写真2】Dachau市街の案内

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【写真3】Dachauの街中を歩いていると要所に案内板があります1

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【写真4】Dachauの街中を歩いていると要所に案内板があります2

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【写真5】収容所入口

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【写真6】展示施設1

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【写真7】展示施設2

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【写真8】展示施設3

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【写真9】展示施設4

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【写真10】慰霊碑

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【写真11】こちらはミュンヘン市街マリエン広場の時計台

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フランクフルトぶらり歩き

フランクフルト空港を使って日本へ帰るときなどの時間を有効活用。ちょっと地下鉄に乗ればフランクフルトのダウンタウンへ到着できます。商業都市なので見ごたえのある観光スポットは少ないのですが筆者はMain Tower がお勧め。北米のように高層ビルがたくさん林立しているのではなく周辺の中世(っぽい)の街並みとのコントラストが新鮮です。

www.maintower.de

【写真12】フランクフルト市街(後ろの白赤の棒のたっているのがマインタワー)

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【写真13】周辺のとあるレストランにてランチ(starterのsoup)

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【写真14】マインタワーからの景色1

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【写真15】マインタワーからの景色2

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【写真16】マインタワーからの景色3

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【写真17】マインタワーからの景色4

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【写真18】マインタワーからの景色5

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ヨーロッパの大学6 ドイツ編1

ヨーロッパへ行くときは航空会社のマイレージの関係(というかそのレベルで)でフランクフルトからいろんな国へ。その割にドイツは通り過ぎるだけ。筆者個人的な『ドイツの大学はもう一つぱっとしない』理由を含めて考えてみます。特に悪意はないのですが。仕事関係で訪問したことがある場所は、Bonn のAvH と Bonn University くらいですので主として高等教育・研究のお話をしてみます。あとはその2で引き続き写真多めで見所案内をします。

ドイツでの気づき

日本と関わりがあるドイツの教育研究、筆者のイメージでは自然科学系の分野が中心。斎藤幸平さんの登場で人文社会科学系の分野での関心が高まり、学びたい・研究したいという人が増える可能性もあります。でも筆者個人的には(彼個人の特殊性が大きすぎ)ドイツ語文化圏の狭さからもあまり変わらないような気がします。

①ドイツ語は難しい・思ったより英語が通じない

複数回ドイツでタクシーに乗っていますがドライバーさん英語がダメ。筆者のイメージでは日本やフランス以上に英語が通じません。ドイツの初等中等教育の質が低いとも思えないので結構不思議。話は飛躍しますが、昔昔筆者は東ドイツという国があったころベルリン(西ドイツ→東ドイツ(ベルリン)→チェコスロバキアハンガリーオーストリア)へ行ったことがあります。その時の東ベルリンでのったタクシードライバーさんは、片言で『どこから来たんだい?コリア?ベトナム?』と東側らしい聞き方をしたのを覚えています。(さらに蛇足ですが)それから電車やバスでプラハブダペストに行きましたが、ホテル以外では英語は絶望的。さらに街中の掲示物(英語でもなくドイツ語でもなく)が何と書かれているかが分からないというレベルでかなり苦戦。バックパッカーの難所となりました。時には流れましたが、この地で医学を学びたい人はそんな心づもりも必要です。(ちなみに筆者の大学時代の第二外国語はドイツ語です。)

キセル乗車の取り締まりを楽しむ

ドイツというより、広くヨーロッパに言えることですが駅構内から電車に乗るまでのところに改札機を設置していないのが日常。(ドイツネタの最中ですが、フランスの方がわかりやすいので)例えばパリの地下鉄はチケットを通す改札がありますが、SNCF(フランス国鉄)には無いのが普通。乗る人は駅の各所にあるレンジ色の刻印機で日にちと乗った場所をカチッと特定(validation)する必要があります。validationしないで電車に乗って車掌さんに切符を見せても違法乗車になってしまいます。昔と比べればチケットの電子化が進み、車内外検札の必要性は薄れているのかもしれませんがまだまだ健在です。

ハイデルベルグのバス

かなり昔の話。大学の卒業旅行でバックパッカーをしていて泊まったユースホステルを朝出発して路線バスに乗り込もうとすると2名のコート姿の男性が乗車、身分証を見せながら(当たり前ですが)ドイツ語でチケットの確認をしてまわりました。この時はキセルの乗客はいなかったみたいでチェックが終わると次のバスを待っていたご様子。このようにヨーロッパの場合、電車だけでなくバスやトラムなどもチェックがあることはおぼえておくほうが良いと思います。

別の話題になりますが、泊まったユースホステルは深夜になるとバスタオルを巻いた若い欧米系女性たちが大声はりあげながら廊下を走り回っている風紀の悪い?場所だったことを記憶しています。今よりマイノリティーだったアジア人にはついていけない情景でした。

ボン近郊のDB

10数年くらい前のお話。お仕事関係者数名でボン近郊の在来線に乗っていると突然男性2人組が乗客に話しかけだし切符のチェックが始まります。停車間隔の短い路線でも車両を限定して行なっているようです。

フランクフルトの地下鉄

これは5年くらい前のお話。フランクフルト空港からの乗り継ぎで一泊することになり空港からダウンタウンへ地下鉄で向かうときのお話。車両に乗り込むと耳にピアス、派手なフットボール(サッカー)チームのTシャツ姿のいかつい系オッサン2人が矢庭(やにわ)にIDカードを首にかけて(多分ドイツ語で)『今から切符をチェックします!』言いながら切符確認を行ないます。これくらいのコスチュームまでして変装する必要があるのか日本人的視点では謎ですが。この時、筆者がチケットを提示しようとすると(多分ドイツ語で)『君は不要!』と手で制止、多分明らかに外国人に見えたので(仮に捕まえてもあとの手続きが面倒くさいので)確認対象から外したのではないかと思います。

こんな出来事をドイツに1週間も滞在していればお目にかかることができます。そんなこんなのドイツですが、既にお話しましたとおり、他のヨーロッパの多くの大学同様、日本でいえば国立大学のみが存在するような高等教育環境なので、大学間の大きな差異は生じない仕組みとなっています。そして学生が払う授業料はお安め。その中で、教育研究を充実させる仕組みとして、様々な競争的な外部資金を提供することにより頑張った大学・研究施設にインセンティブを与えるようにしています。このあたりは、日本のMEXT、JSPSやJSTなどが行う様々なプログラムと類似性が感じられます。以下がそのファンディングエージェンシーの代表的な機関とその概要。本部は現在でもベルリンではなくボンに置かれています。

AvH アレクサンダー・フォン・フンボルト財団

DAADドイツ学術交流会

DFGドイツ研究振興協会

資金提供の基本方針は大学・研究機関のボトムアップによる基礎研究支援なので日本でいえばJSPSJSTあたりをイメージすれば良いと思います。審査はピアレヴュー中心予算規模も同じくらい。21世紀初頭から日本の『21世紀COEプログラム』的なExcellence Initiativeプログラムを行なってがんばっている大学への研究資金投下を行なっています。ほぼ全ての高等教育機関が国立なので、どうしても予算配分は平等性が必要となるので、良くやっている機関への追加的な給付も何かしらの公的な審査が行なわれます。

日本との関連は、AvHDAADは日本にも事務所があったりで知られた存在なのですが、現在の日独交流というカテゴリー自体がなんとなくマイナーなので(個人的には)盛り上がらない気がします。なお、AvHDAADともこの事業に関わった学生、研究者との同窓会活動が盛ん、ドイツとの研究交流のパイプとして機能しています。(どこで得た情報か覚えていませんが)現在のドイツが国際的なパイプを大切にしている理由の一つに、優れたユダヤ系研究者の流失など、海外の機関と連携を求めず、孤立化した、過去の大戦の反省があったと言われています。ただ、日独間の交流は(筆者個人的には)地味な印象。また、工学系ではTU9という上位の大学の連合体を作り国際化への取り組みを行っています。 

www.humboldt-foundation.de

www.daad.de

 

 

www.tu9.de

 

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大阪市立大学 超新星の行方

最近の国内大学事情でもう一つ気になっていること。それはこの人物の将来。どう考えても彼と今の大学はミスマッチに思えてしまいます。また、彼のような人物の登場は(年をとった者からすると)歴史の繰り返しを感じます。

彼は大阪公立大学へのリトマス試験紙

まず筆者の言い訳から。結構長く大学などの高等教育と研究に関係してきました。その多くは自然科学系の機関・研究者の人たちが大半。筆者自身は法学部卒ですが、社会科学系のフィールドのトレンディーな流れは正直よく分かっていません。その中でも日本の大学でやっている経済学のイメージは、ノーベル賞受賞の中で一番遠い分野、今でも日本では古風なマル経をやっている人が結構いる、など。そして関西圏の者からすると大阪市大経済学部・研究科も昔の三商の頃の輝きは何処へ、という感じ。そこに彼の登場。

斎藤幸平さん。現在、大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。彼の人新世の「資本論 は異例のベストセラーとなっています。筆者個人的には社会科学系の分野で学振賞に選ばれたことに注目。学振の選考ですから、日本の有力研究者たちのピアレヴューを受け、その評価を得ていることは大きいと思います。で、筆者の謎は、なんでこの人物が大阪市立大学にいるの?に尽きます。斎藤さんは、高校(東京の東京タワーのご近所にある名門校のようです)卒業後、東京大学理科二類に半年だけ在学し、その後アメリリベラルアーツ系私立大の最高峰ウェズリアン大学に入学・卒業、さらにその後は、ベルリン自由大学で修士フンボルト大学で博士、そのあとはアメリカに戻りUCサンタバーバラで博士研究員(JSPS海特事業)、そして日本に帰国して現職となっています。

彼のこれまでの経歴・業績について、一番分かりやすく、公平に説明しているものは、日本学術振興会の行なっている第17回(令和2(2020)年度)日本学術振興会賞 受賞者一覧(JSPS・HP)から入ってもらうと良いと思います。また、国際的な評価として日本人として、初めてドイッチャー記念賞(Isaac and Tamara Deutscher Memorial Prize) しています。ここでは彼の研究の深い部分まで踏み込みませんが、旧態依然としたマルクス研究ではなく、近未来に直面する環境問題、ポストコロナの新時代を読み解くため、マルクス晩年の彼の思考を掘り下げてアプローチしているところに(筆者個人的には)意義があり、若い人たちを含めた多くの人たちが感心を寄せているのだと思います。

1980年代の思い出と今

1980年代初頭、日本はどんどん景気が良くなってバブル期前夜。そんな時、大学教育・研究の閉塞感(を感じる人たち)からニューアカデミズムというフィールドの考え方を求める人たちが現れます。その中に浅田彰さんという人物がいました。当時京大をM修了したばかりでそのまま助手に。彼の場合は、(筆者はよくわかりませんが)フランス哲学からのアプローチから構造と力逃走論のような論文ではなくエッセーに近い(読む人が読めば平易な)出版物が評判となりました。筆者が記憶しているのは、当時、朝日新聞から出ていた朝日ジャーナルという週刊誌上で(ポスト)構造主義だのスキゾキッズだのの言葉をキーワードとともに誌面を賑わせていたこと。朝日ジャーナル朝日新聞社系の出版物の中でももっともリベラル色が強く、関連してくる登場人物も筑紫哲也(編集長)さん、本多勝一さん、上野千鶴子さんのような感じの人たちで、そんな人たちの考え方が好きな人が購読する雑誌。既に大昔に廃刊されていますが、今風に言うとAERAをもっと濃くしたイメージだと思っていただければよいと思います。そこでもてはやされていたのが浅田さん。当時の世相として次にやってくる知のリーダーの一人として評価され同様の雑誌やNHK的な番組にもひっぱりだことなりました。それからの浅田さん、最終的に、学術・研究者の道ではなく評論家としての立場を選び、博士学位を取らず准教授のまま京大を去ります。

 そんな時代から40年、斎藤さんの登場。浅田さんとの違いは、既に斎藤さんは30歳半ばで、博士学位は取得済、海外での研究者としての評価も高いものがありますが、日本国内のメディアのもてはやし方とその空気は(筆者には)浅田さんの時と類似性を感じます。筆者くらいの年になると、そんなみんなが忘れかけた過去を思い出しながら彼のこれからが気になるところ。(あとはご自身の問題ですので)どのような道を選ぶにしても日本の知のレベルを引き上げてくれることに期待したいところです。

www.deutscherprize.org.uk

ここで筆者の素朴な疑問。なんで彼は大阪市立大学というかなりローカルでぱっとしない大学(と筆者は思う)を選んだのか?。まず、アメリカの大学に入学しているので日本の大学とは直接的な縁故はありません。華々しい彼のこれまでのキャリアを見ると、また、今後のことを考えるともっと(大阪市大という地味大学より)彼にふさわしい大学はあるような気がしてなりません。また、受入れる側の大学としても、今の彼ならもっと良い待遇で受入れてくれるところが数多(あまた)ありそうです。

と、最初はそう思って文章を書き出したのですが、途中で書く手が止まってしまいました。思ったほど彼にふさわしそうな大学が思い浮かびません。早慶っていう感じでもないし、いろいろ消去法で残ったいくつかの中で、それでもふさわしいそうな(と筆者が思う)大学を予想してみると、東なら○東工大(社会科学系)、西なら◎京大、大穴で▲阪大あたり。東大は一度退学しているので外しました。東工大は意外に人社系は個性的な教員がそろっています。京大は彼の研究の発展に一番あってあっていそう。阪大は近代経済学のメッカ、真逆にも映りますが彼の研究は古いマル経ではありませんので彼の居場所が(筆者個人的には)あるように感じます。特に異なる知見で今後の資本主義の有り様を論じている安田洋祐さんがいますので彼にとっても良い刺激になると思います。それ以外なら今のままで良いのではというのが結論。

そもそも筆者が大阪市大を彼に勧めない最大の理由は、この大学の研究基盤の脆弱さとミスマッチ。研究力の強さを示す科研費の受託状況は(彼を除けば)高いとは言えず、大学院も全く充実していません。また、研究内容も所謂トラディショナルな方のマル経的視線の研究者が主体。今の彼はマルクス研究を中心としていますがそのアプローチはアメリカからであったりドイツからのもので、日本古来のマルクス(主義)研究からは一線を画してします。

そうは言いつつ、彼がこのまま大阪市立大学に留まることのメリットも考えみました。その(筆者個人的に)参考となる人物が、同じ研究科の朴一(ぱくいる)教授。関西エリアにお住まいの方ならご存じの方も多いはず。平日の夕方や週末の情報・バラエティ系番組の(お笑い系)ご意見番として活躍しています。例えば、コロナ関連のテレビ番組で、どこかの私立大学のよく分からない役職のついた研究者に評論家としてのコメンテーターを依存してTV番組を組み立てる民放の姿勢はどうかとして、自己実現・自身の意見の表明のため、メディアに登場する大学教授は結構います。特に私立大学のように広告塔としての役割を託されて大学本体から是認もしくは要請されてテレビに出るというのは分かりやすいのですが、朴さんの場合は(多分)そうではなく、ご自身の意志で、そしてご自身のペースでテレビに出ていらっしゃるご様子。また、大学と所属する研究科も特に職務専念義務など公的所属機関の割に自由というか、他の先生たちが(他人には)無関心という『社風』は、メディアへの露出度が高い彼にとってはすごしやすい大学かもしれません。 

www.wesleyan.edu

www.fu-berlin.de

www.ucsb.edu

 こちらは朴一先生の本

 

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甲南大学 COVID-19ワクチン職域接種に取り組みます

海外連載中ですが、ちょっと国内で気になったことをいくつか。少し寄り道します。

甲南大学が中心となって

全国の大学で行なわれ始めた大学による職域接種、関西・兵庫県神戸市界隈では甲南大学のグループ(3大学)神戸大学のグループ(3大学)で始まろうとしています。甲南大学のグループは、阪急岡本駅が最寄り駅になる甲南大学甲南女子大学神戸薬科大学が連合してお互いに協力しあいながら接種を開始します。甲南大学は、接種を行なう施設提供、甲南女子大学看護学部を中心としたサポート、神戸薬科大学は薬剤師の立場からの支援。さらにラッキーだったのは心強い医療支援。近くにある甲南医療センターさんも医師・看護師の派遣協力をしてくれるようです。筆者は医学部を有しないこの3大学でここまでうまく進んだ理由は古くからの平生先生つながりがあったことだと感じます。

甲南大学創設者である平生釟三郎先生。平生さんは広田弘毅内閣の文部大臣。政界人でもあり経済人でもあり、自宅のあった甲南大学周辺でも大きな影響力を有していました。甲南女子大学も平生さんに近い人物による創設。そして甲南医療センター(旧甲南病院)もまた平生先生の創設。現在は、神戸東エリアでの神戸大学医学部附属病院との基幹・連携病院として地域医療に貢献しています。というような大正期からの地元つながりを有効に活かすことが出来たことが大きいと思います。

関西は同調圧力がいろいろ強め.。そして大学としての課題

この項で大学の職域接種の話を入れてみようとした頃は、阪神地区で職域接種への参加で話題になっていたのは、大阪大学、近大あたりだったのが、今や主だった大学が何らかの形で参画の意志を示しています。例えば京産大龍谷大も職域接種を行なう意志を示していますが、接種会場のようなハコモノは準備できても打ち手の医療関係者との調整は大変だと感じます。多分これは、ほんの数週間のうちに官邸→厚労省文科省へ『ワクチンは用意するからどんどんやれ』的な方向性と圧が示され、それがどんどん大学にまで降りてきた感じ。確かに大学生の中には市町村の接種会場へ(深い意図もなく)行きたがらないメンタリティを持つ者もいると思いますので、大学でまとめて接種する方が有効な手段だとも感じます。そんな面でもこの職域接種は、近隣の地方公共団体への業務負担の軽減につながればと感じます。

反対に気になるが所謂『同調圧力』。そもそもどこの大学でも職域接種をドタバタしながら急に始めていること自体『同調圧力』の最たるものですが、ここでは学内の雰囲気のお話。大学を外側から見ている人からすると、日頃からダイバーシティに取組み、大学とSDGsに積極的に参加してカラフルピンバッチを襟に付け、SOGIへの対応にももちろん注意を払っている、というのは間違った認識ではないのですが、そうでもない人たちも結構います。筆者のこれまでの大学(職員)生活の中でも、(理工系なら)『この研究室で安全に研究するなら接種するのは当たり前』とか(医療系なら)『医療人であるならば接種を拒むという選択肢はあり得ない』など平然といってのける(もしくは態度で示す)人たちが一定数いるのが今の日本の大学です。(筆者個人的には)理解力が低くて何も決められないぐーたら学生にはワクチン接種はしてもらいたい一方、ちゃんとしたワクチン接種に対する考えを持っている、人には言えない身体的事情がある等々の学生に学内で不利益が生じないようにしないといけません、が、(筆者的には)少し心配しています。

最後に、この項では甲南大学を中心に書きましたが、お隣の神戸大学さんも非常によくやっています。神戸市の大規模接種会場(ノエビアスタジアム)への応援も行なっている中、今回の大学での職域接種への対応も。全国的にはあまり目立たない、知られていないことかもしれませんが、偏差値云々だけの評価でなく、地域への社会的貢献を黙々と行なう大学へはもっと大きな評価してあげて欲しいものです。

 

話はガラッと変わって阪急岡本駅探検。 別の項でフロイン堂さんという老舗のパン屋さんを紹介しましたが、そのご近所にあるチョコレート菓子のお店。何年か前の紅白歌合戦の際、国民的人気アイドルグループがこのお菓子を出場者への楽屋見舞いとして提供したことで人気に火がつきました。以降、今でもお店は賑わいを見せています。

【写真】Louis Blanc (ルイスブラン)

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louisblanc-shop.com

 

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ヨーロッパの大学5 フランス編

筆者がフランス が思い浮かべるものってCERN と CNRS あたり。そのあたりをメインに詮ないので?ぶらり多くは歩き的に書きます。写真多めです

フランスで学ぶ・研究する時の(恥ずかしくて口に出せない)そもそもの課題

フランスの大学・研究機関は所謂パリとそれ以外に区別されます。地方には大学街として知られたAix-en-ProvenceStrasbourg。また、最近先端研究で有名になったCERNEUが作った素粒子原子核理研究の巨大施設)は、フランス・スイスの国境をはさんだ地に作られ運用されてます。理学・工学系の研究を先生たちは是非行ってみたい場所の一つになっています。なお、フランスの場合、自然科学系の共同研究をしたい時、とてもお世話になるのがCNRSです。

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www.cnrs.fr

行って感じること、フランスに来てくれた日本人(学生・研究者)には英語で接してくれるのですが、なんとなく外様扱いになってしまいます。フランス語を話せない理由の大部分は日本の初等中等教育の産物。日本人で過去に家族の在外勤務などがあったりした理由でフランス語を流ちょうに話せる人は(なぜか特に)うらやましくなってしまいます。また、日本人には気づきにくいですが、仏語圏の連帯感は大きなもの。今更ですが、北米ならケベックルイジアナ、カリブ諸国、アジアならベトナム、アフリカ諸国や中東のフランコフォンの文化圏。課題もたくさんありますが英米を中心としたアングロフォンの文化圏とは異なる面白さが感じてみるのも良いかもしれません。

南フランスをぶらり歩きしてみる 

 写真は南フランスを中心に。かなり旅行ガイド化してしまいました。

 Aix-Marseille Université (AMU) エクス=マルセイユ大学

プロヴァンスにある総合大学。南フランスでは、、というか、(3大学が統合されて)仏語圏最大規模の学生数をかかえています。名前のとおりエクスアンプロバンスマルセイユを中心にキャンパスがひろがります。McGill University (カナダ)にいた時もこの大学に関わり合いの先生が複数いました。このような学生・教員の動きは日本の大学で勤めていても感じることはできません。

www.univ-amu.fr

www.mcgill.ca

【写真1】 エクス=アン=プロバンスにある人社系学部の入口

f:id:FOU:20210509214314j:plain【写真2】掲示板の雰囲気は万国共通

f:id:FOU:20210509225412j:plain【写真3】 エクス=アン=プロバンス中心部1 名前に由来するように多くの場所に泉・噴水があります。

f:id:FOU:20210509225523j:plain【写真4】 エクス=アン=プロバンス中心部2 

f:id:FOU:20210513220443j:plain【写真5】Marseilleマルセイユ エクス=アン=プロバンスから電車で30分くらい。バスも出ています。写真は旧港の横にある丘の上に立つNotre-Dame de la Gardeノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院から。海の向こうの島がイフ島・Château d'If 

f:id:FOU:20210513220206j:plain【写真6】旧港からイフ島へ行く遊覧船。あっという間に到着します。

f:id:FOU:20210513225043j:plain【写真6】イフ島の船着き場。上っていくと Château d'Ifイフ城があります。

f:id:FOU:20210513225118j:plain【写真7】今度はイフ島からマルセイユ市街。丘の上の尖ったのがノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院

f:id:FOU:20210513225159j:plain【写真7】マルセイユのレストラン。旧港周辺にもたくさんレストランがありますが海岸沿いは高級なお店が多くなります。このお店はブイヤベースで有名。

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www.hotel-restaurant-le-rhul.com

 

www.marseille.fr

【写真8】Niceニース ここからは地中海沿いに東へ。もうちょっと行けばイタリアになるところにニースがあります。この写真はニースから路線バスでいける鷹の巣村のÈzeエズ。バスを降りたらどんどん上の方に進んでいきます。

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【写真8】エズ村の一番上に植物園があります。多くの人がこのポイントで写真を撮るのでみんな同じような感じになりますが確かにベストのポジション。お土産には道路沿いにある香水工場で近郊で採れたハーブを用いた商品がおすすめになります。

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【写真9】(多分)Saint-Paul-de-Vence サン=ポール=ド=ヴァンス 。こちらは同じくニースから路線バスで行きましたが地名が定かではありません。街の広場の小さなレストランでランチ。写真は、starter の Foie gras の terrine(これも多分)。フランスではどこで食べても外れがありません。

f:id:FOU:20210513235428j:plain【写真10】レストランのある広場。予算と時間があれば街中ではなくこんな村のAubergeオーベルジュに泊まってのんびりできればと感じてしまいます。

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usines-parfum.fragonard.com

musees-nationaux-alpesmaritimes.fr